ナタリー PowerPush - 清竜人

無骨なポップ職人の緻密な“仕事”

清竜人とフュージョン

清竜人

──曲はどのあたりまで作ってからバンドメンバーに渡すんですか?

今回は自分で作り込んだプリプロ音源とほとんど変わらないですね。生音に差し替えたいフレーズだけ弾いてもらってるみたいな。

──そうなると、どこまで作り込んでどこをゴールにするかの判断は、自分との戦いですよね(笑)。

入り込みすぎると際限なくなっちゃうんで、あまり時間をかけないようにサラッと作るようには心がけましたね。

──サウンドは多岐におよんでいて、「I Don't Understand」のような2分程度のパンクナンバーもあって驚きましたが、今回特に驚いたし意外だったのが、フュージョンの要素が多く感じられることです。「UNDER」はモロにフュージョンの影響が見えるし、「Zipangu」にもギターのフレーズなどにフュージョンっぽい要素が入ってますよね。

あー、そうですね。あんまり意識して出したわけじゃないんですけど、一番古くから聴いてきたのがその辺のジャンルなので。

──過去の作品ではルーツがはっきりと透けて見えないところがあったんですが、フュージョンというのは意外でした。

幼少の頃からライブに行くとなるとフュージョンを観に行くことが多かったんです。だから自然と出るものはあると思いますね。

──ジャンルというくくりで言うと「MUSIC」以上にバリエーションに富んだアルバムになりましたよね。

とはいえある程度統一感を持たせたかったので、メロディラインや質感は10曲全部同じ血が通った形にはしたいと思ってました。

これまでやってきたことを総括した「Zipangu」

──1曲目の「Zipangu」は前作「KIYOSHI RYUJIN」のツアー最終日、アルバムに関する情報が発表された段階ですぐに試聴音源がアップされた曲で(参照:清竜人6thアルバム&ツアー決定、新曲「Zipangu」公開)、今作の中でも重要な位置を占める曲なのではないかと思うのですが。

清竜人

はい。「Zipangu」はこのアルバムを作り始めて最初に書いた曲で。ここから「あ、今自分がやりたい音楽はこれだな」というのが明確に表現できたので、自分の中でもアルバムのリード曲的な位置付けになっています。

──この曲は新しい要素ももちろんあるんですけど、清さんが今までやってきたさまざまな要素が凝縮された1曲だなと感じたんですよ。

それはありますね。今回はこれまでやってきたことをある意味で総括するような気持ちがあって、それが新しいものになればいい作品ができあがるんじゃないかなと思っていたんです。ちょっと後ろを振り返りつつ新しいものを作るという意識はありました。そういう思いで作った1曲目がこの「Zipangu」で。

──「Zipangu」をはじめストリングスを入れている曲では、茅原実里さんや水樹奈々さんの作品でも知られる“大先生”こと室屋光一郎(Crustacea)さんが参加されています。室屋さんも一筋縄ではいかないプレイを得意とする方なので、清さんとの相性はバッチリかと思うのですが(笑)、ストリングスアレンジではどのようなやりとりを?

僕はストリングスの編曲家がするようなアレンジメントをしていないので、実際に演奏するのはたぶん大変だったと思うんですけど、柔軟に対応してくださったのはすごくうれしかったですね。

今までになかったものができた達成感

──全体の印象としてもう1つ、重厚に積み上げられたコーラスワークが多用されていて、これは「MUSIC」以降の清竜人作品の特徴になりつつあるのかなと感じました。

清竜人

コーラスに関しては、聴感上わかりにくいですけど、デビューシングルの「Morning Sun」(2009年3月発売)にもけっこうすごい量入ってるんですよ。それからはアレンジメントとしてコーラスを際立たせたものはあまりなかったですけど、やっぱり「MUSIC」でいろんなクリエイターと関わらせていただいて刺激を受けたところは大きいかもしれないですね。

──ハモの乗せ方は独学で?

はい。だからけっこう適当に乗せてますよ。音同士がぶつかんなきゃいいやってぐらいで(笑)。コーラスアレンジは苦手なんで苦労しましたけど、今回はたくさん入れましたね。

──ほかに難しかったポイント、苦戦した曲はありますか?

なんだろうな……今回はホント特に時間がかかったり苦戦したところはないですね。いざスタートを切ったらゴールまで立ち止まらずに行けたというか。ミックスはかなり細かいところまでこだわったので、そこで苦戦したのはあったかなあ。「Championship」のトラックダウンはなかなか収まりどころが見つかんなくて、結局20パターンぐらい試して。

──清さん自身の中で、特に新しい1歩を踏み出せた曲、会心の出来と言える曲を1曲挙げるとするとどれですか?

うーん、やっぱり「Zipangu」ですかね。「Zipangu」は過去の作品も含めて、今まで作った曲の中でも特に気に入っていて。リズムがコロコロ変わる曲って、ちゃんとまとまってないとダサくなると思うんですけど、メロディが小節をまたぐタイミングだとか、そういう細かいところが自然にうまくできたなって自分で聴いてても思うので。今までになかったものができたという達成感がありますね。

ニューアルバム「WORK」/ 2013年10月23日発売 / 2800円 / EMI Records Japan / TYCT-60003
収録曲
  1. Zipangu
  2. Katie
  3. All My Life
  4. LOVE & PEACE
  5. UNDER
  6. The Movement
  7. Microphone is…
  8. Championship
  9. Disclosure
  10. I Don't Understand
清 竜人 "WORK" TOUR
  • 2013年12月2日(月)大阪府 大阪BIG CAT
  • 2013年12月4日(水)愛知県 名古屋BOTTOM LINE
  • 2013年12月6日(金)東京都 SHIBUYA-AX

OPEN 18:00 / START 19:00
チケット前売価格:5000円(税込)
チケット一般発売:10月26日(土)10:00~

※開場・開演時刻、チケット前売価格、発売日ともに全公演共通となります。

清竜人(きよしりゅうじん)
清竜人

1989年生まれ、大阪府出身の男性シンガーソングライター。15歳でギターを手にし、作曲を始める。16歳のときには早くも自主制作盤を発表。そのクオリティの高さが音楽関係者の間で話題となる。2006年には「TEENS ROCK IN HITACHINAKA 2006」でグランプリを受賞し、「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2006」に出演を果たす。映画「僕の彼女はサイボーグ」への挿入歌提供を経て、2009年3月にシングル「Morning Sun」でメジャーデビュー。同月発売の1stアルバム「PHILOSOPHY」では、自身の持つ音楽性の幅広さを証明した。その後もシングル、アルバムを精力的にリリースし、2012年5月には曲ごとに異なるアレンジャーとエンジニアを招いた4thアルバム「MUSIC」、2013年2月には自宅録音による弾き語り楽曲のみを収めた5thアルバム「KIYOSHI RYUJIN」をツアーとの連動作品として発表した。同年10月には6thアルバム「WORK」がリリース。12月には東名阪3都市で「清 竜人 "WORK" TOUR」を行う。