音楽ナタリー Power Push - 清木場俊介

“唄い屋”の原点回帰作「REBORN」

今の自分にはまだ早いけど……

──アルバムの中盤には大人っぽい雰囲気のラブソングが並んでいますね。

そう、今回はミドルテンポの曲が多いんです。4曲目の「風のように」、5曲目の「あの海へ」、6曲目の「お前しか愛せない」あたりがそうなんですけど、ミドルテンポのラブソングを歌ってみたくて。「Shining」(2015年リリースの配信シングル)くらいから、大人な感じの曲を増やしているんですよ。もともとミドルテンポの曲が好きだし、「40歳になったときにどうあるべきか」というイメージを含めて、これから3~4年かけてなじませていこうかなと。正直言って、今の自分にはまだ早いと思うんです。でも、今からライブで歌って体に入れ込めば、40代になった頃には余裕を持った歌い方ができるようになるはずなので。さらに45歳、50歳になったら、もっと味が出るだろうし。

──5年、10年先をイメージしながら曲を作ってるんですね。歌詞の内容も、年齢によって変化してますか?

清木場俊介

そうですね。以前はドロドロした恋愛をテーマにすることが多かったんですけど、今それを歌うとあまりにも生々しいので(笑)。かと言って「お前が好きだ」だけでは子供っぽいですから。今は「風のように」みたいな歌詞が一番書きやすいんですよ。ツーリングがテーマなんですけど、「お前をうしろに乗せて旅したい」って言うだけというか。そういうストーリーを作って、さらっとアコギ1本で歌ったりするのが好きなんですよね。

──フォーキーな「悲しいコトがあれば」も印象的でした。「傷まみれの心を抱き締めて がむしゃらに唄うだけさ。」という歌詞も、清木場さんの姿勢そのものだな、と。

この歌詞は去年のライブハウスツアー中にできたんですよ。電車で移動してるときの田舎の風景とか、ライブの雰囲気を思い出しながら書いて。とにかく強烈な歌詞にしたかった。「死んだら焼き尽くされて」とか、普通は言わないじゃないですか。ホントに伝えたいのはそこじゃなくて、「死んだら焼かれるけど、生き様は必ず残る」ということなんですけどね。自分がまっすぐに生きていれば、必ず何かを残せるはずだっていう。

──10年以上、必死で歌い続けてきたからこそ生まれた歌詞かもしれないですね。

うん。歌を続けてきたことがよかったのか悪かったのかはわからないけど、ずっとやってなかったら、こういう歌詞は出てこなかったので。卑怯なこと、人に頭を下げるようなことをしたくない、いつも堂々としていたいっていう。それをしっかり持っていれば、どう生きればいいかは自ずと見えてくると思うんですよね。

おやじもおかんも何も言ってこない

──その話は「手繰り寄せて」という曲にもつながってますね。「例え何かに怯えようとも 魂までは奪われはしないさ…。」という歌詞もあって。

この曲を歌ってるとき、号泣しそうになったんですよ。何が理由でこの歌詞を書いたのか覚えてないんですけど……たぶん誰かに向けて書いたのかな? それを染谷俊さんに渡して、曲を付けてもらって。これもすぐに「レコ—ディングして、アルバムに入れよう」と思ったんですよね。

──川根来音さん、西広ショータさん、そして染谷俊さん。信頼できる作曲家との関係性も清木場さんの音楽に欠かせない要素ですよね。

そうですね。僕がどんな曲を欲しがっているのか、すぐにわかってくれるので。皆さん仕事が早いし、「これはダメ」っていうのもパッと言えるんです。「せっかく書いてもらったんだけど……」みたいに時間をかけて話すのも大変じゃないですか。そうじゃなくて、ダメならダメって言える関係ができてるんですよね。その代わり、歌詞がいまいちだったら、なかなか曲が上がってこなかったりするんですよ。そこは対等なんですよね。

──「母ちゃんの幸せじゃけぇ」は西広さんの作曲です。清木場さんのお母さんを主人公にした歌ですね。

歌詞をショータに送ったら、すぐに曲を付けて返してくれて。「曲を作りながら、感動して泣いた」って言ってたんですけど、僕も歌いながら何度も泣きそうになりましたね。おかんのことと山口のことは、いつか歌ってみたいと思ってたんですよ。10年以上経って、やっとおかんのことを歌にできたなって。今までは僕がおかんに対して思うことを歌おうとしてたんですけど、それを逆にしてみたんです。おかんから教えてもらったことを、おかんの口調で歌えばいいんだと気付いて。

──お母さんには聴いてもらったんですか?

おやじにCDを渡したんですけど、2人共何も言ってきませんね(笑)。おかんはよく鼻歌を歌ってるんですけど、最近はずっと「友へ」なんですよ。たぶん気に入ってるんでしょうね(笑)。

ステージに立った瞬間に「やっててよかった」って思える

──原点回帰的な曲もあり、新しいトライもあり。このアルバムが完成したことで、歌手としての未来が開けた感覚もあるんじゃないですか?

うん、いろんなことが一気にクリアになったので。アルバムのタイトル通り、生まれ変わったような気持ちで前に進める気がしてますね。問題は山積みなんですよ、相変わらず。でも、生き方がクリアで、自分の軸がブレなければ、できないことはなにもないと思ってるので。もう何があっても動じないと思いますね。

──歌の表現に関しても、さらに一歩進めた手応えがある?

清木場俊介

味ですよね、大切なのは。ただうまいだけでは飽きられるだろうし。「こういうふうに歌おう」って意識しているわけではないんですけど、曲の中に自分の人生が出てくるんですよ。だから、毎年少しずつ変わってるとは思いますけどね。「REBORN」の曲は、40代の扉を開けてくれると思っていて。いい時期に入っていけるんじゃないですか? これから。

──30代を必死で走ってきて、いろんなものを乗り越えて。それが40代の充実につながると。

若いときは「20代をどれだけががんばったかで30代が決まる」って言われて、そのあとは「30代で苦労すれば、40代がラクになる」って言われて。ずっとがんばってるんですけど、一向にラクにならないんですよ(笑)。40代になったら「いやいや、男は50代からだ」って言われて、気付いたら年寄りになってるんだろうけど。そう考えると“ここまで”っていうゴールは決めておいたほうがいいと思うんです。だって、68歳くらいで1人の時間ができても、体力がなくて遊べないでしょ(笑)。1人で釣りに行こうと思ったら、もうちょっと若くないと。

──でも、先輩のソロシンガーはみんなステージに上がり続けているじゃないですか。矢沢永吉さんも井上陽水さんも。

やめられないんだろうな、というのはわかりますね。ステージで光を浴びるのはすごい経験だし、努力が一瞬で報われる瞬間なんですよね。曲を作って、練習して、リハーサルして……いろいろ大変なこともあるけど、ステージに立った瞬間に「やっててよかった」って思える。そういうパワーがあるんですよね、あの場所には。

ニューアルバム「REBORN」2017年3月29日発売 / SPEEDSTAR RECORDS
初回限定盤 [CD+DVD] 4104円 / VIZL-1135
通常盤 [CD] 3132円 / VICL-64763
CD収録曲
  1. FREE MAN
  2. TO LIVE OR DIE
  3. Baby I love you
  4. 風のように
  5. あの海へ
  6. お前しか愛せない
  7. 僕の傍にいた君は…君の傍にいた僕じゃない
  8. 友へ
  9. 悲しいコトがあれば
  10. Like my sense
  11. SIGN of IMPACT
  12. 手繰り寄せて
  13. 母ちゃんの幸せじゃけぇ
初回限定盤DVD収録内容
  • 友へ ~MUSIC VIDEO~
  • 六花 ~MUSIC VIDEO~
  • 友へ -making movie-
ライブBlu-ray / DVD 「WHITE ROCK III」2017年3月29日発売 / SPEEDSTAR RECORDS
Blu-ray Disc 7560円 / VIXL-187
DVD 6480円 / VIBL-839
収録内容
  1. INTRODUCTION ~ハイドロップス アンド ハイタイムス
  2. 夜に消えても…。
  3. 君を探してる
  4. 空に月と貴方と私
  5. 君に出逢って
  6. ここに居る事を…
  7. 羽1/2
  8. 愛のかたち~ありがとう ~例えば…ボクが。~有り余る愛
  9. Rainy Days feat. 清木場俊介
  10. With You ~10年、20年経っても~ feat. 清木場俊介
  11. 愛 NEED YOUR LOVE
  12. あのさ~
  13. 強くならないで…
  14. 最後の夜
  15. Memory
  16. 愛してたはずなのに
  17. 12月の風
  18. 幸せな日々を君と
  19. うつろいゆく世界で
  20. JET
特典映像
  • Documentary of WHITE ROCK III
清木場俊介(キヨキバシュンスケ)
清木場俊介

1980年生まれ、山口出身の男性シンガー。地元テレビ局のボーカルオーディションに優勝し上京し、2001年9月にEXILEのボーカル・SHUNとしてデビューする。2005年1月にシングル「いつか…」でソロデビューし、翌2006年3月にソロアーティストとしての道を追求するためにEXILEを脱退する。また2008年に所属レーベルおよび事務所を離れ、新チーム・JETを設立。2009年1月にSPEEDSTAR RECORDSへの移籍を発表し、同年7月にアルバム「Rockin' the Door」をリリースした。2014年にはソロデビュー10年目の節目を迎え、初のベストアルバム「唄い屋・BEST Vol.1」、オリジナルアルバム「MY SOUNDS」、シングル「幸せな日々を君と」「ROCK★STAR」など作品を多数リリース。2017年3月に10作目のオリジナルアルバム「REBORN」を発表した。