ナタリー PowerPush - キリンジ
堀込兄弟 17年目の転機
「おしゃれ」に価値があった時代とは異なる「洗練」
──今回のツアー(2013年2月10日~「KIRINJI TOUR 2013」)ではけっこう初期の曲も演奏されていて、MCでは初期の曲に対して「若さを感じる」っておっしゃってましたよね。それは少し意外で。キリンジはどちらかと言うと初期の頃からある意味、老成感のある音楽というか、ベテランのような音楽を作る人たちだなと思っていたんですよ。
高樹 単純に若いときに作った音楽だから(笑)。実感として。
泰行 歌詞なんかはやっぱり若いなと思いますね。客観的に見て「こいつ世の中のことが嫌いでしょうがないんだな」というか(笑)。
──初期の頃からある程度完成されていたイメージがあるし、17年という長い歴史を考えると、ほかのアーティストよりは大きなブレや根本の変化は少ないように見えるんですけど。
高樹 うーん、どうですかね。でも例えば「野良の虹」とか「風を撃て」とかやってると、こういうビートにこういうメロディ、ハーモニーってすごく当時っぽいなって感じますね、僕は。今はああいう16ビートのソウル調ってあんまやんないですけど、それはもう古臭くなったからだと思うんですよね。仮に今ああいうメロディの曲を書いても、きっとああいうビートにはならないですね。コード進行なんかもね、「この進行気に入ってたんだなあ」とか(笑)。「ここでもまた出てくるわ」みたいなのが、ひさびさにやってみるとけっこうあるんですよ。それがなんか、未熟っちゅうか若いっちゅうか。
──ちょっと陳腐な言い方をすると「キリンジはデビュー当時から洗練されていた」というイメージがあるんですよ。
高樹 なんだろ、ひとことで「おしゃれな音楽ですよね」みたいな言われ方は最近あんまりしないと思うんですよ。「夏の光」とか「TREKKING SONG」を聴いて「おしゃれ」という印象を持つ人はあまりいないと思うんですけど、「双子座グラフィティ」とかは「おしゃれな感じ」と思われるかもしれない。その「おしゃれな感じ」とされるような洗練はダサいんじゃないの、みたいな感じが今はありますよね。
泰行 たぶん当時の時代感というのがね。おしゃれ……僕らがおしゃれだったとはぜんぜん思わないですけど(笑)、世の中全般として「おしゃれ」であることに価値があった時代と、それが当たり前になっている今とではだいぶ違いますよね。どこを洗練させるかという、洗練の向かい方そのものが異なると思うんですよね。
これからのこと
──アルバムリリースとツアーをもって2人でのキリンジは終了となりますが、それぞれ今後のことについてはどの程度まで考えてあるんですか?
高樹 いや、決めてないです。
──あはははは(笑)。僕個人の印象としては、2人が離れたところでそれぞれの音楽が劇的に変化するということはないんだろうなあと思うのですが。
高樹 いやいや、僕なんてこれから白いメガネに変えようかなと思ってますから。
泰行 白いメガネ? イケてんのそれ?
高樹 白いメガネにして髪ツンツンさせて。
──あえて劇的に変えてやろうと(笑)。
泰行 ひとまずメガネから劇的に変えて。
高樹 まずメガネを捨てるってとこからライブを始めようかと。ステージに出てってまずスパーン!って。
泰行 山口百恵がマイク置いたみたいな。
高樹 毎回捨てるためのメガネ用意しようかな。
──そこまで劇的に変化するかどうかはともかく(笑)、別々になるからこそ、あえて今までとは違うアプローチを試してみたりすることもあるのかなと。とはいえ2人とも確固たる個性があるから。
泰行 音楽的なところで劇的に変わるということはお互いないんじゃないですかね。2人とも歌モノというか、メロディがはっきりした音楽をやるとは思うんですよね。
高樹 そうですね。ただ僕の場合、歌う人が変わるっていうのはけっこう大きいですよね、全体の印象としては。同じ曲でも違ったふうに聴こえるだろうから、その辺はどうしようかなと思って。
──そうか、これまでのキリンジの曲はそのまま高樹さんがキリンジとして継承するわけですよね。
高樹 いろいろアイデアはあるんですけど、まだわからないですね。
──それぞれすぐに動き出す予定ですか? それとも少し間を空けて?
高樹 泰行はハワイとか行くんでしょ?
泰行 あー、せっかくだからどっか旅行とか行こうかな。お遍路さんとかやったほうがいいのかな。
高樹 いいねえ。
泰行 でもそんなことしてるとすぐに1年2年経っちゃうからね。このツアー終わる頃には僕41(歳)ですから。すぐ42、3になっちゃう。
高樹 年齢気にしすぎなんじゃないの?
泰行 みんなこうやって4年に1枚ぐらいしか出さなくなるのかな。まあ、このタイミングだからこそ、ちょっと早めに動き出そうとは思ってます。
──離れてしまうのがさびしいと思うファンもいるかもしれないけど、単純に好きな音楽が倍に増えると考えると楽しみなんですよね。
泰行 計画的に交互に出すとかね。
高樹 俺が守ってもお前が守んないだろ(笑)。
- ニューアルバム「Ten」 / 2013年3月27日発売 / 日本コロムビア
- 「Ten」
- 「Ten」初回限定盤[CD+DVD] 3675円 / COZP-759~60
- 「Ten」通常盤[CD] 3150円 / COCP-37897
CD収録曲
- きもだめし
- ナイーヴな人々
- 夢見て眠りよ
- ビリー
- 仔狼のバラッド
- 黄金の舟
- 阿呆
- 手影絵
- dusty spring field
- あたらしい友だち(Album ver.)
初回限定盤DVD収録内容
- キリンジTV the FINAL
- 新曲ビデオクリップ
ニコニコ生放送「『ニコニコキリンジ。』~アルバム『Ten』発売記念特番~」
2013年3月27日(水)
第1部:キリンジ「アーカイブ一挙放送」11:00~20:00
第2部:KIRINJI TV増刊号「ゴメトーーク!」20:00~22:00(予定)
KIRINJI TOUR 2013
- 2013年3月30日(土)愛知県 Zepp Nagoya
OPEN 17:30 / START 18:00 - 2013年4月5日(金)大阪府 Zepp Namba
OPEN 18:00 / START 18:30 - 2013年4月7日(日)福岡県 Zepp Fukuoka
OPEN 17:30 / START 18:0 - 2013年4月11日(木)東京都 NHKホール
OPEN 17:45 / START 18:30 - 2013年4月12日(金)東京都 NHKホール
OPEN 17:45 / START 18:30
※全公演SOLD OUT
キリンジ
1996年10月に堀込泰行(Vo, G)、堀込高樹(G, Vo)の兄弟2人で結成。1997年5月にインディーズデビュー盤「キリンジ」、同年11月にマキシシングル「冬のオルカ」がリリースされると、複雑ながらポップなサウンドと独自の詞世界で大きな注目を集めた。1998年にはシングル「双子座グラフィティ」でメジャーデビュー。2005年には弟の泰行が「馬の骨」としてソロデビューを果たし、同年11月には兄の高樹もソロアルバム「Home Ground」を発表した。それぞれ他のアーティストへの楽曲提供も多く手がけており、作詞家・作曲家としても支持を集める。2012年11月に通算9枚目のアルバム「SUPER VIEW」をリリース。2013年3月27日には10枚目のアルバム「Ten」を発表し、4月12日まで行われるツアー「KIRINJI TOUR 2013」を最後に泰行がグループを脱退する。