筋肉少女帯&三柴理デビュー35周年記念!大槻ケンヂ×内田雄一郎×三柴理ロング鼎談 (3/3)

オーケンが考える「この歌詞はうまくいったベストテン」

──筋肉少女帯の「一瞬!」というタイトルは、どういうイメージで付けたんでしょうか。

大槻 今回「筋肉少女帯メジャーデビュー35周年オールタイムベスト」とサブタイトルが長いので、できれば漢字1文字か2文字でパッと言えるタイトルにしようと思ったんです。いろいろ考えた中で、35年をひと言で言うと「永遠のようでもあり、一瞬のようでもあったけど、どちらかというと一瞬のようだったな」と思って「一瞬!」にしました。僕は今回「一瞬!」を作って、なんとなく筋少もある程度区切りがついた気がするんですよね。筋少35年の歴史は、エディのいた時代から、横関さん、橘高くん&おいちゃんと変わっていって、再結成があって、“全方位型エンタテインメント・ゴージャス・ハード・ポップロック”になっていったと思うんですね。その流れの集大成として、この「一瞬!」ができた気がするんです。だから、もし次のアルバムを作るとするならば、全方位型エンタテインメント・ゴージャス・ハード・ポップロック路線を続けるか、まったく違う路線にチェンジするか、ターニングポイントになると思うんです。そういう意味でもひと区切りつけられてよかったかなと思ってますよね。

筋肉少女帯「一瞬!」ジャケット

筋肉少女帯「一瞬!」ジャケット

内田 それも「Period」だね。

大槻 うん、ある意味ね。

──新録の「サンフランシスコ(2023ver.)」は、1988年発表の「仏陀L」、1998年発表の「SAN FRANCISCO」に続いて3度目のレコーディングになります。

内田 「サンフランシスコ」は、橘高くんが筋少に入ったときからずっとやりたかったと言ってました。「エディとソロバトルをやりたい!」とも言っていたけどそのあと辞めちゃったので、34年ぶりに野望が達成できたんじゃないでしょうか。今回はライブのテンポの流れを生かして、今の筋少の感じを再現してみました。

──新曲「50を過ぎたらバンドはアイドル」も素晴らしいです。まさに真理だと思いました。

大槻 ですよね? そもそもロックは若い人たちの音楽という大前提があったから、時が経って50過ぎたバンドが派手な格好してエレキやドラムをドンジャカやるようになると、どんどんファンタジックになっていくんです。そうすると若い頃のエナジーとか明日への活力を与える偶像として存在していくと思うんですね。それって非常にアイドルに近いなあと思って。

──大槻さんは「ザ・シサ」のインタビューで「僕が筋肉少女帯の次のアルバムでチャレンジしたいもののひとつに四十代以上の女性の恋愛の歌がある」とおっしゃっていましたね(参照:筋肉少女帯「ザ・シサ」インタビュー)。

大槻 ともに年を重ねてきた方々に対応するものを作っていきたいと思ってるんですよね。女性に限らず。弘兼憲史さんのマンガ「黄昏流星群」的な方向に行くかもしれないんですけど。そこはあんまりロックで歌ってる人いないと思うから、歌いたいんだよなあ。

──次なるステージが楽しみですし、何より35周年オールタイムベストにして、ここ10年内の楽曲がこれだけ入っていることも現在のバンドの充実ぶりを物語っていますね。

大槻 最初は自分の歌詞で気に入っている曲だけ入れようかとも思ったんです。例えば、“これはうまくいったベストテン”に入る1曲が「枕投げ営業」って曲なんですけど(笑)、これは本当に詞と曲がマッチしてオチまで完璧だと思ったものの、「再結成10周年パーフェクトベスト+2」に入ってたので外しました。「なぜ人を殺しちゃいけないのだろうか?」も入れたかったんですけど、この頃の歌詞は技法的に「うまいこと言うね」って唸らせようとして作ってるんです。それは別に悪いことじゃないんだけど、今見るとちょっと技術的すぎるなと思えるので。

──なるほど、そういう視点でのセレクションでもあるんですね。

大槻 今回の収録曲でいうと「サイコキラーズ・ラブ」は「うまいね、オーケン」って言われようと書いていた時代の曲なんだけど、80年代の産業ロックの香りすらあるパワーフレーズなど、おいちゃん×オーケンでないとできない世界観がありますね。同様に橘高×オーケンの作詞作曲も、たぶんほかの人が書いたらこうはならないだろうなっていう曲が多いです。特に「衝撃のアウトサイダー・アート」は橘高×オーケン曲の中でもお互いのやらんとすることが一番クロスした曲だと思います。言ってしまえば「桑名正博さんとか西城秀樹さんが歌われるような歌謡ヘビメタポップを筋肉少女帯でやる」という部分では一番うまくいったんじゃないかな。

左から三柴理、内田雄一郎。1988年のライブ写真。

左から三柴理、内田雄一郎。1988年のライブ写真。

完全再現ライブをやったら、自信を持って僕は死にます

──改めてファンの方に注目してもらいたい楽曲はありますか?

大槻 個人的に評価してほしいのは「週替わりの奇跡の神話」ですね。あれは「うしおととら」という、週刊少年誌に連載されているマンガを原作にしたアニメのテーマ曲で、週替わりに奇跡の神話が生まれる週刊マンガのものすごさを歌詞にしたんです。これは自分ですごいなと思ってます。あと、「Guru最終形」はとてもいい曲だって言ってもらえることが多いんですけど、これは「とにかくリスナーをうっとりさせるということに特化した歌詞を意図的に書こう」と思って作った曲なんです。だから、うっとりしてください(笑)。それからバンド自身やコアなファン層が思うベストとはまた違う、外側の層があることも今回選曲していく中でわかってきて。例えば「踊る赤ちゃん人間」なんて、いい曲ではあるもののライブではそんなにやらないんですけど、「N・H・Kにようこそ!」というアニメのエンディングテーマとしてアニメ好きの層には知られていて意外とサブスクの再生回数が一番多いんです。じゃあ、入れようかということで今回収録しています。

──三柴さんは「一瞬!」を聴いて、どのような感想を持たれましたか?

三柴 僕は1回辞めて復活後の筋少に再びサポートとして入ってるんですけど、改めてずいぶん音楽性が広いバンドだなと思いました。大槻さんの詞の世界をさらに堪能するためには、パッケージを手に入れて歌詞カード見ながら聴いたほうが面白いですね。最近、自分の頭で考える人が少なくなっているような気がするので、歌詞を咀嚼して大槻さんがどういうこと言いたいのかを考えながらぜひとも聴いてほしいです。僕は「月とテブクロ」という曲が好きで、自分だったらどうやってピアノを弾くだろうなと考えながら聴いてるんですけど、そういうトレーニングもできるんじゃないかな。あと、新録で「高円寺心中」を弾けたのもよかったです。先日の「UFOと恋人」再現ライブでもこのバージョン風に弾いたんですけど、オーケンのポエトリーリーディングとピアノをどう合わせていくかっていう駆け引きを楽しんでできました。

内田 「UFOと恋人」は悪ふざけが過ぎるアルバムでしたけど、ここから何やってもいい感じがグッと出てきた感じがありますね。今回の「一瞬!」でいうと「ドンマイ酒場」とか。

大槻 「ドンマイ酒場」は素晴らしいよね! これはよく言うんだけど、内田くんの語りが一番いいんだよ。

内田 ハハハ。

大槻 「UFOと恋人」の「バラード禅問答」も内田くんの語りがいい。ナレーターとしてのよさがあるね。ウッチーのポエトリーリーディングアルバムを作るといいんじゃない?

内田 ああー、やろうか。

大槻 あと、筋少で小芝居が一番うまい! 小芝居を褒められてもしょうがないけど(笑)。

内田 空バカの「孤島の檻」はうまくいったけど、「バカボンのススメ」の「紅茶キノコおごるからさあ」は才能ないなと思った。15歳のときに。

大槻 自分の芝居にダメ出し(笑)。いや、あれもよかったよ。

──そろそろお時間ということで、最後に大槻さん、ひと言お願いいたします。

大槻 筋肉少女帯のライブは毎回全身全霊、命がけでやらないとできないんです。その生きるか死ぬかの瀬戸際の感覚が今回のアルバムには詰まってると思いますね。もしもこの「一瞬!」完全再現ライブをやったら、自信を持って僕は死にます(笑)。それくらいヤバいです!

公演情報

筋肉少女帯メジャーデビュー35周年記念ライブ「#筋少の日」

  • 2023年6月21日(水)東京都 LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)

三柴理メジャーデビュー35周年記念コンサート

  • 2023年7月14日(金)東京都 カワイ表参道コンサートサロン パウゼ(※ソールドアウト)

三柴理 LA PASSION LIVE

  • 2023年10月1日(日)東京都 Live Music JIROKICHI
筋肉少女帯

プロフィール

筋肉少女帯(キンニクショウジョタイ)

1982年に中学の同級生だった大槻ケンヂ(Vo)と内田雄一郎(B)によって結成。ナゴムレコードでのインディーズ活動を経て、1988年にアルバム「仏陀L」にてメジャーデビューを果たす。1989年に橘高文彦(G)と本城聡章(G)が加入し、「日本印度化計画」「これでいいのだ」「踊るダメ人間」などの名曲を発表。特に「元祖高木ブー伝説」はチャートトップ10入りを記録し、大きな話題に。大槻による不条理&幻想的な詩世界とテクニカルなメタルサウンドが好評を博すものの、1998年7月のライブをもって活動を“凍結”。各メンバーのソロ活動を経て、2006年末に大槻・内田・橘高・本城の4人で活動再開を果たす。2007年9月には約10年ぶりのオリジナルアルバム「新人」をリリース。東京・日本武道館公演や「FUJI ROCK FESTIVAL」「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」といった大型イベントへの出演など、精力的なライブ活動を展開する。2015年5月には人間椅子とコラボバンド「筋肉少女帯人間椅子」でシングル「地獄のアロハ」を発表。2023年6月にメジャーデビュー35周年を記念したオールタイムベストアルバム「一瞬!」をリリースした。

三柴理(ミシバサトシ)

1965年東京生まれ。4歳からピアノを始め、ピアノを安川豊子、作曲を柏木由紀に師事する。国立音楽大学在学中の1983年に新東京正義乃士を結成し、1988年に筋肉少女帯のピアニスト三柴江戸蔵としてメジャーデビュー。1989年に脱退したあとは、ソロ活動と並行してさまざまなアーティストのサウンドプロデュースを手がけ、1996年に初のソロアルバム「ピアノのなせる業と神髄」を発表した。2000年からは特撮のメンバーとしても活動し、2006年に復活した筋肉少女帯ではピアノ&キーボードで現在までサポートメンバーとして参加。2023年6月にメジャーデビュー35周年記念ベストアルバム「LA PASSION」をリリースした。映画・アニメーションなどの音楽制作を続けてきたユニット・THE金鶴での活動は2024年で40周年を迎える。