筋肉少女帯|メンバー4人が解き明かす、11編の愛の物語

09喝采よ!喝采よ!作詞:大槻ケンヂ / 作曲:本城聡章

──これはタイトルからして昭和歌謡リスペクトですね。

大槻 ちあきなおみさんの「喝采」は名曲ですよね。

本城聡章(G)

本城 これはもうドンピシャで昭和歌謡を作ろうって感じでした。最初はジュリー(沢田研二)の「おまえがパラダイス」みたいなイメージで始めたんですけど、結果的にはジュリーだけじゃなく僕の中のいろんな昭和歌謡が混ざっちゃいましたね。

内田 ベースは「ロッカバラードならこうだろう」って、わざとベタで弾きました。昔だったら絶対しかなかったやつ。

橘高 そんな中、さっき言ったようにジュリーに引っ張られそうなところをぐっとこらえて、俺は「1人だけ勘違いしてロサンゼルスでのレコーディングに呼ばれてる」つもりで弾いたけど、どうしたって引っ張られるよね?(笑)

大槻 ジュリー・イン・ロサンゼルス。これはぜひカラオケに入ってほしいね。気持ちいいだろうなあ。

10ベニスに死す~LOVE作曲:内田雄一郎

──「Future!」の「奇術師」(作曲:橘高)、「ザ・シサ」の「セレブレーション」(作曲:本城)ときて、今作は内田さん作曲のインストです。

橘高 今回、曲出しの段階で内田くんからいい曲がいっぱい挙がったから、これをインストでやりたいって僕からリクエストしたんです。ドラマチックな映像美みたいなものがデモを聴いた段階から感じられたから、映画のサントラのような気分でギターもメロの部分を遠鳴りにしたり、ちょっとSEっぽい感じで弾いて。

内田 作り終えてから「なんか陰鬱な曲だなあ、そういや先週BOOKOFFで500円で売ってたヴィスコンティの映画のDVDを観たなあ、じゃあ『ベニスに死す』にしよう」と思ってこのタイトルになりました。

──サブタイトルに「LOVE」とありますが?

内田雄一郎(B)

大槻 この曲は僕の中でいまいちよくわからないところも正直あったんですけど、「LOVE」というタイトルにすればアルバムにも曲にも明快にテーマ性が出るから、「サブタイに付けていい?」って聞いて付けさせてもらいました。

内田 どうぞどうぞって(笑)。

大槻 映画の「ベニスに死す」も悲恋を描いているんですけれども、次の「Falling out of love」も「愛というのは結局なんなのか、それは執着心だ」という内容の曲なんです。執着こそが苦しみの根源だから、愛から逃れることは実は喜ぶべきことなんだ、という解釈があるらしくて。

11Falling out of love作詞:大槻ケンヂ / 作曲:橘高文彦

大槻 今回のアルバムは愛から逃れて自由になるということを全体として歌っているのかもしないですね。この「Falling out of love」という言葉は、さっき話したゴールデン街で飲んでいたときに、とあるエッセイストの本の中で発見したんです。相手を好きになった期間はとても苦しかったけど、離れてしまえばその苦しみが自分からなくなっていることに気付いた。そんなときに「Falling out of love」という言葉をある哲学者の本で読んで、なるほど、“愛から解放される自由”というのは人間を変えるんだなって。

──この曲の歌詞にはアルバム全体のエッセンスが散りばめられてますね。

大槻 そうそう。最後はちょっとアルバムの振り返りにしたんだよね。「喝采よ!喝采よ!」のロックスターも出てくるし、「妄想防衛軍」の軍人も出てくるし。「ゆらめく陽炎」という歌詞で終わって、再び1曲目「愛は陽炎」の「一番好きな人とは結ばれないのさ」って歌に戻るのがすごく合うんですよ。ずっとリピートできる。

橘高 我々はアナログの頃から、盤をひっくり返してA面に戻したり、好きなCDをリピートして聴いた世代だから、やっぱりアルバムというのも大事にしたいので、また1曲目に戻ってループして聴いてほしいですね。

大槻 この曲、長いんですけど、橘高くんがしゃべりの部分に合わせてくれたんだよね。

橘高 大槻ケンヂにはシャウターという部分とストーリーテラーという部分があるんだけど、オケミスを始めてから筋少ではあんまりやってなかったストーリーテラー的なことを今回やってほしくて。SE的な部分で語りを入れて、ラウドな演奏部分は歌いあげてもらったらメリハリがついていいなと思いました。イントロのフレーズがずっとループしてるのが、自分でも説明つかないコード進行になってて。歌詞が乗っても気持ち悪さをそのまま引っ張っているので、とても素敵な流れになったなと思ってます。

──全11曲の制作過程を垣間見ることができて非常に面白かったです。皆さん自身もいいアルバムができたなと実感されているのではないでしょうか。

大槻 筋肉少女帯はアルバムごとに雰囲気がかなり違いますけど、個人的に今回のアルバムは歌詞の面においてウェットな感じがありますね。僕の中では昭和歌謡の中でも“お別れもの”というニュアンスに全体を通してできたと思うので、特別な1枚になった気がします。異色っていうのかな。

筋肉少女帯

公演情報

筋肉少女帯「LOVE」リリースツアー(※終了分は割愛)
  • 2019年11月10日(日)愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
  • 2019年11月16日(土)大阪府 BIGCAT
  • 2019年11月22日(金)東京都 LIQUIDROOM
  • 2019年11月27日(水)東京都 Veats shibuya
さようなら12月23日の筋肉少女帯!
  • 2019年12月23日(月)東京都 LIQUIDROOM

イベント情報

筋肉少女帯展!~メジャーデビュー31年目突入&ニューアルバム「LOVE」発売記念~
  • 2019年11月12日(火)~11月18日(月) 大阪府 墓場の画廊WEST ※入場無料
筋肉少女帯(キンニクショウジョタイ)
筋肉少女帯
1982年に中学の同級生だった大槻ケンヂ(Vo)と内田雄一郎(B)によって結成。インディーズでの活動を経て、1988年にアルバム「仏陀L」にてメジャーデビューを果たす。1989年に橘高文彦(G)と本城聡章(G)が加入し、「日本印度化計画」「これでいいのだ」「踊るダメ人間」などの名曲を発表。特に「元祖高木ブー伝説」はチャートトップ10入りを記録し、大きな話題に。大槻による不条理&幻想的な詩世界とテクニカルなメタルサウンドが好評を博すものの、1998年7月のライブをもって活動を“凍結”。各メンバーのソロ活動を経て、2006年末に大槻・内田・橘高・本城の4人で活動再開を果たす。2007年9月には約10年ぶりのオリジナルアルバム「新人」をリリース。東京・日本武道館公演や「FUJI ROCK FESTIVAL」「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」といった大型イベントへの出演など、精力的なライブ活動を展開する。再結成10周年である2016年10月にはベストアルバム「再結成10周年パーフェクトベスト+2」、メジャーデビュー30周年である2018年10月にはそれを記念したオリジナルアルバム「ザ・シサ」を発表。2019年10月には20枚目のオリジナルアルバム「LOVE」をリリースした。