音楽ナタリー Power Push - 筋肉少女帯
もはや“再結成バンド”ではない 昭和からタイムトリップしてきた男たちが描く原風景
「混ぜるな危険」はコンペに持っていくのに勇気がいる曲
──そして「混ぜるな危険」は本城さんの作曲。これもヘヴィメタル、ハードロックが軸になっていますが、全体的にノスタルジックなムードがあって、すごく個性的な楽曲に仕上がっています。
本城 「うしおととら」のオープニングテーマなんですけど、僕は最近のアニメをそんなに観ていないので、子供のときに観ていた昭和40年代、50年代のアニメソングのイメージで何曲か書いたんです。特に「混ぜるな危険」は、自分の中で「これが昭和のアニメだ!」という手応えを感じていて。思いのほかハマったというか、アニメを観ている方にも楽しんでもらえてるみたいでうれしいですね。
大槻 逆に僕は最近のアニソンに関わることが多いんですよ。今のアニソンにはいろいろな系列があって、僕が特撮でNARASAKIくんとやっているのは、先鋭的で尖ってる感じなんです。そういうことをやってるからこそ、おいちゃん(本城)が昭和なアニソンを表現したこの曲はすごいと思いますね。今の人のアニソン観とは全然違うし、コンペに持っていくのに勇気がいる(笑)。
本城 そうなんだ(笑)。10年経っても20年経っても、僕の中のアニメソングはこういう感じだと思うけどね。
大槻 いいと思うよ。それも1つのスタイルだよね。
本城 オーケンの歌詞が和風のテイストだったから、間奏のパートはそのあたりも踏まえていて。そこも最近の筋肉少女帯とはちょっと違う雰囲気ですよね。どちらかというと「月光蟲」あたりに近いというか、かなり実験的なこともやっていて。「これも筋少だよな」という感じで取り組んでましたけどね。
橘高 「月光蟲」「レティクル座妄想」のような自分たちの内側に向かっていく部分も出てるよね、今回は。ちなみに(橘高が作曲した)「おわかりいただけただろうか」も、「うしおととら」の主題歌の候補として最後まで残った曲の1つなんだけど、これは俺なりの“妖怪メタル”なんだよね。Aメロに逆回転の音が入ってたり、怖い音もいっぱい入っていて。もともと俺は「サスペリア」とか「エクソシスト」みたいな恐怖映画音楽が大好きなんだけど、ああいう映画の音楽って、じつはプログレバンドがやってることもあるんです。プログレ自体はそんなに通ってないけど、恐怖メタルの様式美が自分の中にあって、そこが筋少とリンクしたと思ってるんですよね。
「大人の男性が少女に未来を託す」歌詞を書くようになって
──「枕投げ営業」の歌詞も驚きました。枕営業をしている女の子が、“先生”に「枕投げをしよう」と持ち掛けられるっていう。
本城 うん、僕もビックリしました(笑)。
大槻 これが(アルバムの制作の中で)最初にできたんですよ。その前から「枕投げ営業」という言葉は浮かんでたんだけど、おいちゃんのデモを聴いたときに「この曲に合いそうだな」と思って。この曲はぜひ、新進気鋭のアイドルに歌ってほしいですね!
一同 ハハハハハ(笑)。
大槻 再結成してから、「大人と少女」というか、「大人の男性が少女に未来を託す」というような歌詞をよく書くようになって。「枕投げ営業」もそのシリーズですね。
──「大人と少女」のイメージは、アイドルの現場なども含まれているんですか?
大槻 あー、どうですかね。この前、青森で「夏の魔物」に出たときも、アイドルちゃんたちがたくさんいたし。ただ、「枕投げ営業」の歌詞は、アイドルと限定してないんですよ。いろんな職種に想定可能。そこがわからないのが、またいいのかなって。この曲に出てくる“先生”もアラフィフなんですけど、この人みたいに我々も、ある日ポックリ逝っちゃうかもしれないし(笑)。そこは妙なリアリティがあるんじゃないかな。
18歳の頃に書いて、昔からみんなにネタにされてた曲
──本城さんが作詞作曲を手がけ、ボーカルも取っている「LIVE HOUSE」もこのアルバムのポイントだと思います。どうしてこんなにピュアな曲を書こうと思ったんですか?
本城 これはオーケンがやろうって言い出したんだけど、もともとは18歳の頃に書いた、32年くらい前の曲なんですよ。
内田 いや、もっと前でしょ。16、17歳くらいじゃない?
本城 (笑)。だいたい32~3年前の曲なんですけど、オーケンとか内田くんも知っていて、昔から僕のいないところでネタにしていて……。
大槻 いるところでもネタにしてたよ(笑)。
本城 そんな状態だから「絶対に歌わないぞ!」って封印してたんですけど、2年くらい前に高校の先輩であるケラリーノ・サンドロヴィッチさんがひさびさにライブをやるときに呼ばれまして、何を思ったのかケラさんが「『LIVE HOUSE』をやろう」って言い出したんです。そこで30年ぶりに封印を解いて歌ったら、なんだかどうでもよくなって、ことあるごとに歌ってたんですよ。まさか筋肉少女帯のアルバムに収録していただけるとは思ってなかったですけどね。
大槻 大人になって聴いてみたら、なんていい曲だろうと思って。この曲が持ってるピュアさがすごくいいなと思ったし、「今こそ、これをやるべきだ」って。歌って、ホントに生き物ですよね。まさか30年経ってから響くようになるとは。
本城 ありがとうございます(笑)。もともとは吉祥寺の小さなライブハウスを舞台にした歌だったんですけど、超エンタメハードロックバンドである筋肉少女帯がやると、東京ドームみたいな雰囲気になっちゃって。「ステージの上から、公衆電話で話している女の子を見ている」という設定だったんですけどね(笑)。
大槻 今、ライブハウスに公衆電話はないけどね。
本城 それも含めて、昭和50年代らしさがあるのかも。
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- ニューアルバム「おまけのいちにち(闘いの日々)」2015年10月7日発売 / 徳間ジャパンコミュニケーションズ
- 「おまけのいちにち(闘いの日々)」
- 初回限定盤[CD3枚組+DVD] 5443円 / TKCA-74266
- 通常盤[CD] 3240円 / TKCA-74270
CD収録曲
- 大都会のテーマ(TVサイズ)
- レジテロの夢
- 混ぜるな危険
- 球体関節人形の夜
- 枕投げ営業
- LIVE HOUSE
- 別の星の物語り
- 私だけの十字架
- 大都会のテーマ
- 時は来た
- おわかりいただけただろうか
- S5040
- 夕焼け原風景
初回限定盤DVD収録内容
2015年4月26日「春だ出撃だ筋肉少女帯!!」EX THEATER ROPPONGI公演
- 君よ!俺で変われ!
- 少年、グリグリメガネを拾う
- 僕の歌を総て君にやる
- 未使用引換券(Vo.本城 Ver.)
- 爆殺少女人形舞一号
- 暴いておやりよドルバッキー(Single Ver.)
- 機械
- 中学生からやり直せ!
- 釈迦
- 中2病の神ドロシー
※初回限定盤にはアルバム全曲のインストバージョンが収録されたボーナスCDと、「おわかりいただけただろうか(Vo.橘高 Ver.)」「LIVE HOUSE(Vo.本城 Ver.)」「別の星の物語り(Vo.内田 Ver.)」をそれぞれ収録したCD3種類のうち1枚をランダムで封入。
筋肉少女帯(キンニクショウジョタイ)
1982年に中学の同級生だった大槻ケンヂ(Vo)と内田雄一郎(B)によって結成。インディーズでの活動を経て、1988年にアルバム「仏陀L」にてメジャーデビューを果たす。1989年に橘高文彦(G)と本城聡章(G)が加入し、「日本印度化計画」「これでいいのだ」「踊るダメ人間」などの名曲を発表。特に「元祖高木ブー伝説」はチャートトップ10入りを記録し、大きな話題に。大槻による不条理&幻想的な詩世界とテクニカルなメタルサウンドが好評を博すものの、1998年7月のライブをもって活動を“凍結”。各メンバーのソロ活動を経て、2006年末に大槻・内田・橘高・本城の4人で活動再開を果たす。2007年9月には約10年ぶりのオリジナルアルバム「新人」をリリース。東京・日本武道館公演の開催や「FUJI ROCK FESTIVAL」「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」といった大型イベントへの出演など、精力的なライブ活動を展開する。2013年にはメジャーデビュー25周年を記念したセルフカバーベストアルバム「公式セルフカバーベスト 4半世紀」、2014年には4年4カ月ぶりのオリジナルアルバム「THE SHOW MUST GO ON」をリリース。2015年5月には人間椅子とコラボバンド「筋肉少女帯人間椅子」としてのシングル「地獄のアロハ」、10月にはテレビアニメ「うしおととら」のオープニングテーマ「混ぜるな危険」を含むアルバム「おまけのいちにち(闘いの日々)」を発表した。