音楽ナタリー PowerPush - Kidori Kidori

コンセプトは“サウダージ” 初の日本語詞アルバム

景色にあったジャンルを取り入れる

──「なんだかもう」は脱力感のあるコーラスから始まります。

マッシュ(Vo, G)

イントロのコーラスは「嫌」にも「yeah」にも聞こえるのがいいかなって思ってます。「なんだかもう」は3拍子を四つ打ちっぽくしたくて作った実験要素のある曲です。「日本人は3拍子好きじゃない」ってなんかの本で読んだんで、「人はこれで踊るのか」っていう実験。ライブではしっかりみんな踊ってくれるし、シンガロングの部分は歌ってくれるし、楽しくて、ユーモラスで、いい曲ができたなあと思っています(笑)。

──続けて「住めば都」は“Kidori荘”での生活ぶりが浮かぶ内容です。

住んでる住宅街がまるで迷路みたいだなってことを歌いつつ、故郷は恋しいけど、今は楽しくやっていますよっていう気持ちを込めてます。

──タイトル曲「!」のイントロには趣あるガットギターのフレーズが入っていますね。

キューバ国内で流行したフィーリンっていうキューバ流のボサノバみたいなジャンルのフレーズから影響を受けてます。ガットギターの響きって悲しい感じがするんですよね。

──雨の風情を醸し出す感じになっていますね。

雨が余計に郷愁を感じさせるっていうのはありますね。この曲の歌詞では決意というか、「今の我々」を表現しているんです。「!」を雨だれって読むのも面白いし、アレンジもいろいろ考えたし。

──試行錯誤の末、どのようなアレンジになりましたか。

川元直樹(Dr, Cho)

この曲のビートはニューオリンズの伝統的フォークソングの「Iko Iko」(アイコ・アイコ)のビートが基になってます。そこにああいう感じのKidori Kidoriらしいギターのイントロを乗せるのが面白くて。ニューオリンズって田舎のほうに行くと湿地とかもあるので、ニューオリンズものを聴くと土臭いイメージが浮かぶんです。ビート自体にすごい田舎っぽさがある感じ。そのビートに無機質な都会の雨をイメージしたギターのイントロを付けたアレンジになってます。田舎のことが頭にありながらも都会で生きている自分の心情を歌う曲です。

──「!」で降っていた雨が、次の「傘を閉じれば」で止むんですね。

ですね。この曲は疾走感もあるし、ギターのフレーズも含めて晴れの日っぽいアレンジにして、雨が止んで傘を閉じるときのさわやかな感じを出したかったんです。夏の到来を感じさせる様子を匂いの描写と音で表現したことで、雨上がりにふさわしい曲になりました。

変な勘ぐりはいらないよ

──英語で歌っていたときはストレートな表現を避けたいという思惑があったと以前のインタビューで話してました。(参照:Kidori Kidori「El Blanco 2」インタビュー)日本語だと考えがまた変わってくるんでしょうか?

煙幕が得意って話してたときですね(笑)。曲の意味を聴く人にあれこれ考えてほしかったんですよね。僕らの英語曲だと風景の描写っていうのがないんですけど、日本語の曲だとそれが歌詞に入ってる。英語のときは事柄だけだったというか。今回は風景、匂いからより心情が読み取れると思います。

──アルバムの最後に「アフターパーティ」が収録されています。歌詞の最後が「おしまいだ、さよなら」なんてちょっと心配になるようなフレーズだと思ったんですが。

Kidori Kidori

いろいろ意味深な感じでまた煙幕を使っちゃってますけど、それぞれが思うように受け止めてもらえたらいいんです。でも決してネガティブなことではないし、これからもっともっとバンド活動して、僕個人としては音楽を作るという行為を未来永劫続けていきたいので、変な勘ぐりはいらないですよっていうことだけは伝えておきます(笑)。

──最後に東名阪ツアー「Kidori Kidoriと雨やどりワンマンツアー」への意気込みを聞かせてください。

歌詞とメロディを特に大切にして作った自信作なので、“ちゃんと聴けるKidori Kidori”を体感してもらえたらうれしいです。ライブではもちろん昔の激しい曲も演奏するので、新旧混ぜたセットリストで楽しんでもらえたらいいなと思います。

ニューアルバム「! [雨だれ]」 / 2015年6月3日発売 / 2592円 / HIP LAND MUSIC / Polka Dot records / RDCA-1040
ニューアルバム「! [雨だれ]」
収録曲
  1. ホームパーティ
  2. テキーラと熱帯夜
  3. あなぼこ
  4. コラソン
  5. Tristeza
  6. なんだかもう
  7. 住めば都
  8. !
  9. 傘を閉じれば
  10. アフターパーティ
Kidori Kidori「! [雨だれ]」インストアイベント
2015年6月4日(木)
大阪府 タワーレコード梅田NU茶屋町店
2015年6月11日(木)
東京都 タワーレコード新宿店
2015年6月14日(日)
神奈川県 タワーレコード横浜ビブレ店
2015年7月10日(金)
大阪府 タワーレコードなんば店
Kidori Kidoriと雨やどりワンマンツアー
2015年6月20日(土)
大阪府 Shangri-La
2015年6月21日(日)
愛知県 池下CLUB UPSET
2015年6月28日(日)
東京都 UNIT
Kidori Kidori(キドリキドリ)

Kidori Kidori

大阪・堺で結成され、2008年より本格的に活動を開始。バンド名は村上春樹の小説「ねじまき鳥クロニクル」に由来する。UKロック、パンク、ハードコア、ジャズ、ファンク、プログレ、テクノ、J-POP、ワールドミュージックなど、幅広いジャンルの音楽を帰国子女のマッシュ(Vo, G)の感性で昇華したサウンドが特長。2011年7月に初の全国流通盤「El Primero」を、2012年8月に「La Primera」を自主レーベル・Polka Dot recordsよりリリースした。2014年3月にンヌゥ(B, Cho)が脱退し、バンドはマッシュ、川元直樹(Dr, Cho)の2人にサポートメンバーを加えて活動することを表明。同時期に拠点を大阪から東京に移し、8月13日に新体制第1弾となるミニアルバム「El Blanco 2」をリリースした。同月「SUMMER SONIC 2015」などに出演し、その後も多数のフェスやイベントに参加。2015年2月に日本語詞3曲、洋楽カバー3曲のCD「El Urbano」を発表し、東京・新代田FEVERで自主企画「1989」を開催した。6月にバンド初の全曲日本語詞のアルバム「! [雨だれ]」をリリース。同月に東名阪ツアー「Kidori Kidoriと雨やどりワンマンツアー」を行う。