音楽ナタリー Power Push - Kidori Kidori

メンバー脱退を経ても前を向くアウトサイダーな2人

Kidori Kidoriが3rdミニアルバム「OUTSIDE」を10月5日にリリースした。マッシュが「制作期間に自分の中でロックへの回帰があった」と語った本作は、豊富な音楽知識と個性的なアイデア、みずみずしい衝動が共存する充実の仕上がりとなった。

音楽ナタリーでは、マッシュ(Vo, G)と川元直樹(Dr)にインタビュー。「OUTSIDE」の制作、ベーシスト汐碇真也の脱退後のバンドの状況、10月22日に千葉・千葉LOOKにてスタートする全国ワンマンライブの展望などについて聞いた。

取材・文 / 森朋之 撮影 / moco.(kilioffice)

部屋から聴こえる音楽でマッシュのモードがわかる

Kidori Kidori

──2015年6月にリリースされた3rdフルアルバム「! [雨だれ]」は、「サウダージ(郷愁)」をコンセプトに制作された全曲日本語詞による作品でした(参照:Kidori Kidori「! [雨だれ]」特集)。まずは、その後のKidori Kidoriの音楽的なモードについて聞かせてもらえますか?

マッシュ(Vo, G) 「! [雨だれ]」を作ってた頃によく聴いていたのは、ドクター・ジョンやThe Metersといったアメリカのニューオリンズの音楽だったんですね。それがひと段落して、次は俺の中のロック回帰みたいなものが始まって。The Smith、The Stone Rosesなどをよく聴いてましたね、なぜか。

──そういうマッシュさんの音楽的なブームって、川元さんとも共有してるんですか?

マッシュ いえ、まったく。

川元直樹(Dr) (笑)。共同生活しているから、マッシュの部屋から聴こえてくる音楽で「最近、こんな感じなんやな」ってわかるっていう。

マッシュ 川元はもっとゴリッとした音楽が好きですからね。それがバンドのいいところだと思ってるんですよ。音楽の趣味が合う人とやるのもいいんですけど、それよりも人間として合うほうが大事なので。

川元 もちろん制作に入るときは大体のコンセプトも伝えてくれるし、そこで共有はできているんですけどね。あとはマッシュが作ったデモに合わせて、自分なりにアプローチしていくので。マッシュ、一時期移動の車の中でもThe Stone Rosesばっかりかけてたな。

マッシュ うん(笑)。ギターの音色とかが自分の欲求に合ってたんやろうな。

マッシュはちょっとツンとしているだけ

──新作の1曲目に収録されている「アウトサイダー」は、まさに1980年代後半のUKインディーロックのテイストが感じられる楽曲ですね。

マッシュ そうですね。「アウトサイダー」はキラキラした感じのサウンドなんですけど、そこにけっこう尖った言葉を乗せていて、そのバランスが気に入ってるんです。トゲみたいなものもあるよね?

川元 うん。歌詞を日本語にしたとき、周りの人に「マッシュもトゲが抜けたんだね」みたいなことを言われたんですけど、僕自身としては「別にそんなことはないよな」と思っていて。

マッシュ 前のアルバムは全曲日本語の歌詞なんですけど、そういう極端な感じだったり、バランスを取ろうとしないところもけっこう尖ってると思うし。まあ、別に尖ろうと思って音楽をやっているわけではないんですけどね。俺はみんなと仲よくなりたいので(笑)。

川元 別にトゲを向けてるわけではないっていう。

マッシュ(Vo, G)

マッシュ そう。ちょっとツンとしているだけです(笑)。

──日本語にすれば当然、言葉の意味がわかりやすくなるわけで、エッジの効いた歌詞もそのまま伝わりますからね。

マッシュ そのことはすごく考えてましたね。それまで英語で歌っていた歌詞をそのまま日本語に訳すような感じだと、ちょっと説教臭くなるかもしれないなと。日本語はぼやかすような表現もできるから、前のアルバムではその特性を生かした歌詞が多かったんですよ。「アウトサイダー」はもっとダイレクトだし、そういう意味でもトゲっぽいのかな。「住めば都」(「! [雨だれ]」収録曲)とか歌っていたのに比べたら、全然違いますからね。

ミニアルバム「OUTSIDE」2016年10月5日発売 / 1620円 / HIP LAND MUSIC / Polka Dot records / RDCA-1045
「OUTSIDE」
収録曲
  1. アウトサイダー
  2. タイムセール
  3. モノクロ
  4. The Puddle
  5. 一人ぼっちも悪くない
ツアー情報
Kidori Kidori "OUTSIDE" Release Tour
  • 2016年10月22日(土)千葉県 千葉LOOK ※ゲストあり
  • 2016年10月28日(金)北海道 COLONY
  • 2016年11月6日(日)福岡県 graf
  • 2016年11月7日(月)岡山県 PEPPERLAND
  • 2016年11月8日(火)大阪府 Shangri-La
  • 2016年11月20日(日)愛知県 池下CLUB UPSET
  • 2016年11月25日(金)東京都 UNIT
Kidori Kidori(キドリキドリ)
Kidori Kidori

大阪・堺で結成され、2008年より本格的に活動を開始。バンド名は村上春樹の小説「ねじまき鳥クロニクル」に由来する。UKロック、パンク、ハードコア、ジャズ、ファンク、プログレ、テクノ、J-POP、ワールドミュージックなど、幅広いジャンルの音楽を帰国子女のマッシュ(Vo, G)の感性で昇華したサウンドが特長。2011年7月に初の全国流通盤「El Primero」を、2012年8月に「La Primera」を自主レーベル・Polka Dot recordsよりリリースした。2014年3月にンヌゥ(B, Cho)が脱退し、バンドはマッシュ、川元直樹(Dr, Cho)の2人にサポートメンバーを加えて活動することを表明。同時期に拠点を大阪から東京に移し、8月13日に新体制第1弾となるミニアルバム「El Blanco 2」をリリースした。同月「SUMMER SONIC 2015」などに出演し、その後も多数のフェスやイベントに参加。2015年2月に日本語詞3曲、洋楽カバー3曲のCD「El Urbano」を、6月にはバンド初の全曲日本語詞のアルバム「! [雨だれ]」を発売。8月にはサポートメンバーの汐碇真也(B)がバンドに正式加入した。2016年4月に会場限定のソノシート「タイムセール」を発表したのち、6月にはCD「フィールソーグッド e.p.」をリリース。8月には汐碇が脱退し、バンドは再びマッシュと川元の2人体制に。10月に3rdミニアルバム「OUTSIDE」を発表し、10月から11月にかけて同作のリリースツアーを行う。