音楽ナタリー PowerPush - Kidori Kidori
コンセプトは“サウダージ” 初の日本語詞アルバム
元andymori・藤原寛と過ごした1年
──去年の3月にはンヌゥ(B)さんが突然脱退するという出来事がありました。活動を止めることなく、そのあと2人体制で「El Blanco 2」を出しましたが、実際のところ、当時はまだ心が落ち着かない状態だったんでしょうか。
どうなんだろうなあ。メンバーの脱退があっても絶対にバンド活動を止めないって決めてたんで、とにかく前を向いて活動し続けた1年でした。常に栄養ドリンクを飲んでるような感覚があって、ふと我に返ったときになんだか疲れてしまって。「ああ、ちょっと地元帰りたいな」って気持ちがよぎったこともありましたね。
──4月にはイベント「HighApps SPECIAL!!」をもって、約1年活動をともにしてきた藤原さんのサポート活動が終わりました。ライブ中とかはいろんな思いがよぎったんじゃないでしょうか。
いざライブが始まるとすごく感情が高ぶりましたね。川元なんか泣いちゃってたし、僕自身も涙をこらえてたし。でも「終わりなんだ」っていう喪失感ではなくて、もう少しさわやかな感じでした。お互いの門出を見送る感じで。ライブが終わって改めてありがとうございましたって伝えたとき、藤原さんから「Kidori Kidoriと一緒に活動できる機会があって、楽しかったし面白かった。いろいろ学びにもなった」って言ってもらえてよかったです。
──ちなみに今作のベースは藤原さんが弾いてるんですよね?
そうです。インストの「Tristeza」以外は弾いてくれています。
──今後のサポートメンバーはもう決まってるんですか?
BAND Aで活動してた汐碇真也さんにサポートしてもらうことになってます。BAND A自体は僕らのレコ発に出たことがあって、プレイも知ってるし、いい人だっていうのもわかってたんで、お願いしました。
雨の匂いは情景が浮かびやすい
──今作でこだわった部分はどのあたりでしょうか?
村上龍さんの本を読んでて、匂いの描写があるとよりその場にいる感覚になったんで、ちゃんと匂いのあるアルバムを作りたいなって思ってました。歌詞を読むと全体的に雨が降ってるっていうのも匂いが想像しやすくて、情景が浮かびやすいと思うんです。
──曲作り中の環境とか気分も関係してきそうですね。
僕は自分でも怖くなるくらい集中して一気に曲作りをするので、制作中の気候は影響してますね。アルバムを作ってた1、2月は雨続きの日が多くて、家にこもってると心も内向きになりがちで、昔のことを思い出したんです。「自分の通ってた高校とか今どうなってるんだろうな」とか、「実家の犬、元気かな」とか。
──なるほど。2曲目が「テキーラと熱帯夜」で、1曲目の「ホームパーティ」よりは陽気な感じがします。
「ホームパーティ」の登場人物は人とうまくなじめてない感じがあるんですよね。寂しさみたいなものがあって、結局ベランダにタバコを吸いに行っちゃうくらいだし。
──ワイワイしてる人たちの輪に入れないみたいな。
そうそう。次の「テキーラと熱帯夜」で陽気になるんだけど、さらに「あなぼこ」でまた違う気持ちになって。
──歌詞に出てくる「あなぼこ」は傷のようにも、心に空いた穴のようにも感じ取れました。
そんな「あなぼこ」みたいなものがない人間はどうなんだっていうことを歌ってます。
インタールードで悲しみを叫ぶ
──6曲目にはインストナンバーの「Tristeza」(トリステサ)が入っています。
これはスペイン語で悲しみって意味です。作品の中でシーンを切り替えるためにインタールードを入れました。曲の長さは短めですけど、アンビエントっぽいことをやりたくて。三浦さんの得意分野でもあったので、彼のスタジオワークが光った曲でもあります。
──シンセサイザーをここまでフィーチャーした曲はKidori Kidoriだとあまりないですよね?
前作の「記号の街」でも使ってるんですが、うっすら流れてるくらいですね。その前の「El Blanco 2」はライブで再現できない曲はダメだって頭があったんで、「シンセは取り入れないほうがいい」って思ってたんですが、今回は特に制限を設けず。
──マッシュさんはシンセも弾くんですね。
いや、iPhoneのシンセのアプリを昔からずっといじってて、自分たちの既存の曲をアンビエント風アレンジにして遊んでいたくらいです(笑)。三浦さんのおかげでちゃんとうまい具合に「Tristeza」から「なんだかもう」に流れを作れたので、今回インタールードを初めて入れることができたと思います。
──音もシンセ以外にいろんな音が混ざっていて、最後は「Tristeza!」という歪んだ叫び声で曲が終わりますね。
この曲では最後の叫び声もそうですし、音で状況とか気持ちを表現してます。雑踏を表現するためにコラソン、ハート、テキーラとかスペイン語と英語の単語を聴き取れないくらい重ねたり、雨音を入れたり。ギターの音が重なっていくのは鬱憤が溜まっていくことを表現してて、最後に悲しみという意味の「Tristeza」を叫んで「なんだかもう」のイントロにつながると。
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- ニューアルバム「! [雨だれ]」 / 2015年6月3日発売 / 2592円 / HIP LAND MUSIC / Polka Dot records / RDCA-1040
- ニューアルバム「! [雨だれ]」
収録曲
- ホームパーティ
- テキーラと熱帯夜
- あなぼこ
- コラソン
- Tristeza
- なんだかもう
- 住めば都
- !
- 傘を閉じれば
- アフターパーティ
- Kidori Kidori「! [雨だれ]」インストアイベント
- 2015年6月4日(木)
大阪府 タワーレコード梅田NU茶屋町店 - 2015年6月11日(木)
東京都 タワーレコード新宿店 - 2015年6月14日(日)
神奈川県 タワーレコード横浜ビブレ店 - 2015年7月10日(金)
大阪府 タワーレコードなんば店
- Kidori Kidoriと雨やどりワンマンツアー
- 2015年6月20日(土)
大阪府 Shangri-La - 2015年6月21日(日)
愛知県 池下CLUB UPSET - 2015年6月28日(日)
東京都 UNIT
Kidori Kidori(キドリキドリ)
大阪・堺で結成され、2008年より本格的に活動を開始。バンド名は村上春樹の小説「ねじまき鳥クロニクル」に由来する。UKロック、パンク、ハードコア、ジャズ、ファンク、プログレ、テクノ、J-POP、ワールドミュージックなど、幅広いジャンルの音楽を帰国子女のマッシュ(Vo, G)の感性で昇華したサウンドが特長。2011年7月に初の全国流通盤「El Primero」を、2012年8月に「La Primera」を自主レーベル・Polka Dot recordsよりリリースした。2014年3月にンヌゥ(B, Cho)が脱退し、バンドはマッシュ、川元直樹(Dr, Cho)の2人にサポートメンバーを加えて活動することを表明。同時期に拠点を大阪から東京に移し、8月13日に新体制第1弾となるミニアルバム「El Blanco 2」をリリースした。同月「SUMMER SONIC 2015」などに出演し、その後も多数のフェスやイベントに参加。2015年2月に日本語詞3曲、洋楽カバー3曲のCD「El Urbano」を発表し、東京・新代田FEVERで自主企画「1989」を開催した。6月にバンド初の全曲日本語詞のアルバム「! [雨だれ]」をリリース。同月に東名阪ツアー「Kidori Kidoriと雨やどりワンマンツアー」を行う。