音楽ナタリー Power Push - 川田まみ

I've中沢伴行と語る「彼女のブッ飛び方」

初めて“1回も睨まないMV”が撮れた

──そんなさわやかな「Contrail~軌跡~」のミュージックビデオのメイキング映像では「1回も睨まないMVが完成しそうです」とおっしゃってましたね。

川田 そうなんですよ! もうね、今までは流し目を送るか睨みつけるかの二択で、MV撮影では私がカメラに目線をやると「いいよ、いいよ! もっと(睨みを)ちょうだい! もっと!」って、ずっと言われ続けてきたんです。それが今回は「優しい笑顔で」みたいなオーダーだったので、さすがに戸惑いましたね。「新人の川田まみです。うまく笑えないかもしれないけどがんばります!」くらいの感じで(笑)。

──でもちゃんと優しく笑えてましたよ。

川田 撮影が進むにつれて慣れてきたというか、調子に乗って「ピースして『うぇーい!』とかやったほうがいいですか? できるんですよ?」とか提案してみたんですよ。この楽曲のイメージ的にはもっと突き抜けた、若い感じがいいのかなと思ったので。でも、そういうのは要求されてませんでした(笑)。ともあれ、MV撮影が終わってから、I'veのプロデューサーにも「デビューして10年経った今のまみちゃんだから、ああいう笑顔ができたんじゃない?」と言ってもらえたので、少しは余裕が出てきたのかなと。

川田まみ×中沢伴行対談、スタート

──楽曲制作やレコーディングのほうも、すんなり行きました? 先ほどおっしゃったように、楽曲自体はPCゲーム版の延長にあるので、原作の世界観みたいなものはすでに把握してらっしゃったと思われますが。

川田 実を言うと、私としては「Contrail~軌跡~」のような楽曲のほうが、本来の自分には合ってるんじゃないかって思ってるんです。今話したことと矛盾が生じるかもしれないんですけど、「PARABLEPSIA」は川田まみの10年間が凝縮された、私自身の「こうありたい!」っていう思いが全部詰まった作品なので、かなり自分に気合を入れてるんですよ。一方で、「Contrail~軌跡~」はよりナチュラルに自分を表現できたというか、声のトーンとかも素の自分にすごくマッチしている気がするんですよね。だからレコーディングでは無理なく、気持ちよく歌えました。もちろん、制作過程では葛藤したり、クリエイター陣と衝突したりしたこともあったんですけど。

──その「衝突」についてお聞きしてよいですか? 今日は、I'veのクリエイターの1人であり、川田さんのデビュー以来その楽曲の数々を手がけられ、今回の「Contrail~軌跡~」の作曲・編曲もなさった中沢伴行さんも同席されているので。

中沢伴行 ご迷惑でなければ……。

──じゃんじゃんお話ください。聞くところによると中沢さんは、今回は川田さんのマネージャーとして札幌(I'veの本拠地は北海道札幌市)からいらしたそうで。

川田 うちの“ジャーマネ”が急に来れなくなってしまって(笑)。

中沢 「じゃあ僕が代わりに」と、上京してきました(笑)。

──おつかれさまです!

中沢 だから今日はしゃべるつもりではなかったので、ほんとに迷惑じゃなければ。あと、川田が怒ってなければ。

──「私のインタビューなんだからね!」って(笑)。

川田 怒らないからなんでも話してごらん(笑)。

このデモは、まだ飛んでない

テレビアニメ「蒼の彼方のフォーリズム」キービジュアル ©sprite/久奈浜学院FC部

──では仕切り直して、制作における「衝突」についてお伺いします。

中沢 まず、楽曲の目指すイメージはわりと明確にあって、みんなで共有されてもいたんですよ。だから、それを表現する手段としてどれが適切なのか、例えばAというアプローチでいくのか、それともBでいくのか、はたまたCがあるのか、そういった形のぶつかり合いですよね。

川田 イメージというのは、簡単にいえばこの「あおかな」のキービジュアルですね。

──見たまんまですけど、かわいい女の子が空を飛んでいる絵ですね。

川田 そのイメージにみんなで向かっていったんです。だから、中沢さんのデモを聴かせてもらって、「これ、まだ6割しか飛んでないっすね」みたいなやりとりを何度も繰り返してね。「この絵見てください。こんだけ飛んでんですよ!」って。

中沢 「もっと飛べません?」とか言われちゃう。

川田 私は歌い手なので、やっぱり声を乗せたときに気持ちよく抜ける感じが絶対に必要だと思っていて、だから「ここはもっとファルセットでスコーンと伸ばしたいんです!」ってリクエストしたり。それからギターの音なんかも、今までの川田まみのシングルで押し出してきたロックっぽいテイストを、何%くらい入れるのか、あるいは0%にして完全にポップなものにするのか、とか。

中沢 そこもずいぶん話し合ったよね。「ロック的な力強さも欲しいけど、重くなりすぎちゃうとこの作品とはマッチしないよね」とか。

川田 「でも、ちょっとは入れたくない?」「その『ちょっと』ってどれくらい?」みたいな。

ニューシングル「Contrail~軌跡~」2016年1月27日発売 / NBCユニバーサル・エンターテイメント
初回限定盤 [CD+DVD] 1944円 / GNCV-0037
通常盤[CD] 1296円 / GNCV-0038
CD収録曲
  1. Contrail~軌跡~
    [作詞:川田まみ / 作曲:中沢伴行 / 編曲:中沢伴行、尾崎武士 / ストリングスアレンジ:emyu:]
  2. Halfway
    [作詞:川田まみ / 作曲:中沢伴行 / 編曲:中沢伴行、尾崎武士]
  3. Contrail~軌跡~(Instrumental)
  4. Halfway(Instrumental)
初回限定盤DVD
  • 「Contrail~軌跡~」PV
ライブ情報
MAMI KAWADA FINAL F∀N FESTIVAL "F"

2016年5月21日(土)東京都 TOKYO DOME CITY HALL
<出演者>
川田まみ / KOTOKO / fripSide / 黒崎真音

ファンクラブ先行予約:2016年2月6日12:00~2月9日23:59
一般発売:2016年3月26日10:00

川田まみ(カワダマミ)

2月13日生まれ、北海道出身の女性シンガー。2001年に島みやえい子の推薦でI'veのオーディションに参加し合格。同年11月に発表された「風と君を抱いて」で歌手デビューを果たす。そして2004年6月にリリースされた「I've Girls Compilation 6『COLLECTIVE』」収録曲「IMMORAL」「eclipse」において、独特の繊細なビブラート、透き通るように伸びやか、かつ力強い歌声で幅広い層からの支持を獲得。2005年2月にテレビアニメ「スターシップ・オペレーターズ」の主題歌に採用されたシングル「radiance / 地に還る~on the Earth~」でソロデビューした。以降、さまざまなアニメのテーマソングを手掛け、2012年8月に通算4枚目のアルバム「SQUARE THE CIRCLE」をリリース。また2013年2月には初のベストアルバム「MAMI KAWADA BEST BIRTH」とニューシングル「FIXED STAR」を立て続けに発表した。その後も精力的に音源制作、ライブ活動を続け、2015年9月には3年ぶり5枚目のオリジナルフルアルバム「PARABLEPSIA」を発表。2016年1月にはアニメ「蒼の彼方のフォーリズム」のオープニングテーマを含むシングル「Contrail~軌跡~」をリリースする。なお川田は2016年中に歌手業を引退。5月21日に東京・TOKYO DOME CITY HALLでKOTOKO、fripSide、黒崎真音をゲストに迎えたファイナルライブ「MAMI KAWADA FINAL F∀N FESTIVAL "F"」を実施する。