ナタリー PowerPush - 片平里菜

亀田誠治、スカパラ茂木&沖と世代を超えた音楽談義

20代前半のアーティストはすごく「ナタリーっぽい」

亀田 あとそうだ。福島の芋煮会で飲み会があったんですけど、里菜ちゃんは赤い公園と仲良くしゃべっていて。僕は赤い公園も手がけてるんですけど、里菜ちゃんと赤い公園って音楽性がまったく違うじゃないですか。なのに一緒になると、普通に1つになれるっていう。それはフェスの雰囲気も大きく影響してると思うけど、たぶん里菜ちゃんの持ってる「すごくフォーキーなのにオルタナティブ」な側面に赤い公園のメンバーが好意を抱いているんだと思うんです。そうやってお互い意気投合してるのをほほえましく感じてましたね。

──片平さんや赤い公園みたいに、現在20代前半ぐらいのアーティストが今の音楽シーンに新しい波を作っている印象がありますよね。

亀田誠治

亀田 みんな面白くて、僕はそういう人たちがすごく「ナタリーっぽい」と思うんです。

──「ナタリーっぽい」ですか? それは具体的にはどういったことでしょう?

亀田 アーティスト側が轟音ノイズロックを愛しながら、アイドルも大好きみたいな。でもマンガも大好きで……そういった点でみんなナタリー化してるんじゃない? なんかもう1億ミュージシャン総ナタリー化!

──そんな気を遣っていただかなくても(笑)。

亀田 でも僕にとってナタリーはいつもそういう基準になってるよ。

──ありがとうございます。でもなんでしょうね、「プラスアルファ」みたいな要素を強く持ってる人たちが多くなってきてるということなんでしょうか?

亀田 そうそう。だから僕は里菜ちゃんもその「プラスアルファ」を持ってると思うの。音楽においてズバ抜けた綺羅星のような才能がありつつ、周りをフワッと包み込むような癒しの部分も兼ね備えている。そこがいろんな人を引き寄せていくんだと思うんですよね。

片平 ……ありがとうございます(笑)。すいません、全然しゃべれなくて。ずっと聞き入ってしまいました(笑)。

J-POPはクロスカルチャー化しないでほしい

──片平さん、この機会に亀田さんにいろいろ聞いておきたいことはありませんか?

片平 そうですね……私、もともと洋楽が大好きなんですね。でも……私が欧米に行って歌っても、私の音楽は通用しないんじゃないかっていうコンプレックスがあって。

亀田 わからんよ。それはやってみないとね。J-POPってむちゃくちゃカッコいいじゃないですか。これは勝手に思ってることだけど、僕はできればクロスカルチャー化しないで……ごめんなさい、ナタリーさんの前で。さっきナタリーを持ち上げたのに、今度はナタリーを否定するみたいになっちゃうんですけど……クロスカルチャー化しないで、音楽だけで世界に飛び出していけるようなJ-POPを作りたいと僕は思っていて。例えばアニメや映画、ファッションに音楽をくっ付けて世界に出ていくことも素晴らしいんですけど、最終的にはJ-POPが音楽単体で世界で認められるようになってほしい。僕自身、J-POPは海外の音楽と比べて全然引けを取ってないと思っているので、そういう時代が早く来るといいなと願ってるし、そういう音楽をどんどん作りたいと思ってるし……そういう音楽を里菜ちゃん世代のアーティストたちと一緒に作れたら最高ですよね。

片平里菜

片平 あと赤い公園さんの話なんですけど、さっき亀田さんが言った新しいタイプのアーティストのうち、何もないところから生まれたタイプだと思うんです。本当にカッコよくて大好きです。でも……最初は私、赤い公園さんから受け入れてもらえないかもなと思ってたんですけど。

亀田 そしたらビッグウエルカムだったよね。なんか君ら、もうキャッキャキャッキャしゃべってたもんね(笑)。結局、里菜ちゃんが深いところに持ってる人間性とか音楽性とかが赤い公園と共鳴し合ったからだと思うんですよ。それはさっきも言った音楽的なオルタナ性しかり、自分は人と同じことをやらないぞっていう決意しかり。赤い公園もそういう気持ちで音楽を作ってるし、里菜ちゃんもさっき「いわゆるJ-POP的サウンドを取り入れると曲が薄っぺらくなってしまうのが嫌だ」って言いましたよね。アーティスト本人がそうやって言えるのって、実はすごく大切なことだと思うんです。だって、今あるはやりのサウンドに乗っかって“お化粧”してくださいっていうのと真逆のことなんですから。そんなこと言われたら、プロデュースするこちらも燃えますよね。自分が試されてる感じがするし。

大事なのは曲と、そこにある声

──逆に亀田さんから里菜ちゃんに何か言っておきたいことはありますか?

亀田 あっ、また一緒に音楽を作りたいです。

片平 あーっ、うれしいです(笑)。

亀田 でもそれは、僕と一緒にやりたいっていう曲が生まれたときでいいですから。そう思ったときに電話してくれたら(笑)。

片平里菜

片平 亀田さんが一番得意とするジャンルってなんですか?

亀田 ジャンルは関係ないかも。

片平 あっ、本当になんでも……。

亀田 大事なのは曲と、そこにある声かな。僕には音楽を選ぶ基準はそれ以外にはないですね。あとは自分がその曲を好きかどうかっていうのも、すごく大事にしてます。だから里菜ちゃんが次にどんな曲を持ってきてくれるのか、今から楽しみにしてますよ。

片平 私もどんな曲をお願いするか、いろいろ考えてみたいと思います。

亀田 なんかね、片平里菜ってアーティストのいろんなところを切り取りたいっていう思いが強いんですよ。まだまだいろんな側面を持っているアーティストだと思うので。

──言ってもまだシングル3枚、デビューからは1年も経ってないですもんね。

片平 経ってないか……。8月で丸1年ですもんね。

亀田 まだ1年なの?

片平 はい。

──いちリスナーとして、シングルを出すたびに着実に大きくなっている感じを強く受けます。

片平 そうなんですか? でも……どの曲もデモとしてストックしていたものなので、急に変わったということはなくて。逆に周りの環境が急速に変わってきて、今回みたいに亀田さんにお願いすることができた結果、すごいパワーアップした感じはします。

亀田 今リリースされている曲って、ほとんど書き溜めていた曲なんですか?

片平 新しい曲もあるし、デビュー前の曲もあるし。「Oh JANE」はこの中では新しいほうで、去年の今頃に書いたものです。

──歌の説得力がどんどん増してるのも大きいんでしょうね。いろんなことを経験したことで得た自信が、どんどん歌に反映されているというか。

亀田 ああ、それは大きいと思いますよ。

片平 それはあるかもしれないです。片平里菜っていうアーティストが好きな方は、単純に歌が好きで聴いてくれる人が多くて。それが大きな自信になってますね。

亀田 だって一番思いがこもってる部分だもんね。この「Oh JANE」からは、目隠しして聴いても里菜ちゃんだってわかるようになってくるような気はするよ。

左から片平里菜、亀田誠治。
片平里菜 あの場所で偶然 弾き語りツアー2014
2014年5月12日(月)
宮城県 BLUE RESISTANCE
2014年5月13日(火)
岩手県 LIVEHOUSE FREAKS
2014年5月14日(水)
岩手県 KLUB COUNTER ACTION MIYAKO
2014年5月17日(土)
宮城県 遊楽館かなんホール
2014年5月20日(火)
秋田県 Club SWINDLE
2014年5月21日(水)
福島県 club SONIC iwaki
2014年5月24日(土)
福島県 岩瀬郡天栄村「風とロック CARAVAN福島」
2014年5月25日(日)
神奈川県 横浜赤レンガ地区野外特設会場「GREENROOM FESTIVAL '14」
2014年6月9日(月)
長野県 LIVE HOUSE J
2014年6月10日(火)
新潟県 SHOW!CASE!!
2014年6月17日(火)
北海道 COLONY
2014年6月21日(土)
愛媛県 松山キティホール
2014年6月23日(月)
岡山県 城下公会堂
2014年6月24日(火)
広島県 ナミキジャンクション
2014年6月27日(金)
山口県 Organ's Melody
2014年6月28日(土)
熊本県 cafe Arbaro
2014年6月30日(月)
福岡県 ROOMS
2014年7月2日(水)
鹿児島県 SR HALL
2014年7月4日(金)
香川県 高松MONSTER
2014年7月8日(火)
大阪府 Kitchen和
2014年7月9日(水)
京都府 磔磔
2014年7月11日(金)
東京都 自由学園明日館(アコースティックライブ / ワンマン)
片平里菜(カタヒラリナ)
片平里菜

1992年5月12日生まれ、福島出身のシンガーソングライター。2011年9月、「閃光ライオット2011」で1万組の中から審査員特別賞を受賞する。翌2012年にはソニーWALKMAN「Play You. Label」第1弾アーティストに抜擢され、山田貴洋(ASIAN KUNG-FU GENERATION)プロデュースのもと楽曲制作。7月にはメジャーデビュー前にもかかわらず「NANO-MUGEN FES.2012」に出演し、話題を集めた。2013年1月にアジカン山田プロデュースによる楽曲「始まりに」を配信リリース。同年4月には20公演にわたる初の全国弾き語りツアー「片平里菜 飾らない笑顔で 弾き語りツアー2013」も敢行した。5月にはギブソン社傘下のギターブランド・エピフォンが片平を日本人女性初のエピフォンアーティストとして公認したことも発表され、大きな反響を呼んだ。そして8月7日、ポニーキャニオンからシングル「夏の夜」でメジャーデビュー。翌2014年1月15日には2ndシングル「女の子は泣かない」を発表し、同月末からは初のワンマンツアー「片平里菜 1stワンマンツアー2014 “女の子は泣け、笑え、叫べ”」を東京、大阪、福島で行った。4月30日に3rdシングル「Oh JANE / あなた」をリリース。

亀田誠治(カメダセイジ)

1964年アメリカ・ニューヨーク生まれ。1989年に音楽プロデューサーおよびベーシストとしての活動を始める。これまでに椎名林檎、平井堅、スピッツ、Do As Infinity、スガシカオ、アンジェラ・アキ、JUJU、秦基博、いきものがかり、チャットモンチー、エレファントカシマシ、WEAVER、MIYAVI、赤い公園、東京スカパラダイスオーケストラなど数多くのアーティストのプロデュースやアレンジを手がける。また2004年夏に椎名林檎らと東京事変を結成し、数多くのヒット曲を発表。2012年閏日に惜しまれつつも解散する。2013年には2回目となる自身の主催ライブイベント「亀の恩返し」を日本武道館にて開催。映画「カノジョは嘘を愛しすぎてる」の音楽プロデュースなどさまざまなかたちで作品を届けている。2014年5月には「SAYONARA国立競技場 FINAL WEEK JAPAN NIGHT」にて音楽監督を務める。またオフィシャルサイトで、自身の知識をフリーでシェアし、新しい才能を応援する「恩返し」プロジェクトを展開中。


2014年5月7日更新