金子ノブアキ×SKY-HI|東京を舞台にした問題作

“東京トライバル”を感じた

──SKY-HIさんは、曲にどういう印象を持ちましたか?

SKY-HI 「がんばるぞ!」っていう気合いはあっても、気負いはなかったです。音楽的には初めてかどうかと言うとそこまでの感覚もなかった。冒頭のアフロな感じも、僕は20歳くらいのときからアフリカに2年くらいいたんですけど……嘘です、2週間くらい(笑)。

金子 盛りすぎ(笑)。

SKY-HI それくらいアフリカ音楽やトライバルな音楽が持つ要素は、僕も好きだったんです。このコラボが動いてたときは、ちょうど僕が「FREE TOKYO」というミックステープ(2018年8月にミニアルバムとしてSoundCloudにて無料配信)を作った時期で、「じゃあ東京に住む人の民族性ってなんだろう」と考えて自分の中では“東京トライバル”という言葉も使ってました。まあ「TOKYO TRIBE」(井上三太によるマンガ。2014年に映画にもなっている)とかぶるんでアレなんですけど。

金子ノブアキ

──「FREE TOKYO」のマインドと通じるものがあった。

SKY-HI そうですね。“東京トライバル”っていうのは、フィーリングとかバイブスとして言ってたんですけど、あっくんが作ってきたトラックも、まさにそれを感じるものでした。同時に、“イリュージョン”っていうテーマももらってたから、フリースタイルの延長くらいの感じ。スッとラップしてブレイクがきてまたラップして「ああ、できた」って。それをあっくんに送って、「もしいらないところあれば言ってくれたら削るし」ってあとはお任せした。自分の中で、熟成とか発酵はさせてないんです。

──金子さんも“東京トライバル”のようなことを考えていました?

金子 そうですね。大きいことで言えば、もうすぐオリンピックが始まるし、人が一気に集まって引いていく。祭りのあとには衰退しかないかもしれない。でも僕らはこの街の人間。ひいては日本ですけど。そこで何を発信したらカッコいいかなって考えてました。2人でも東京のことはよく話してましたし、自分がストリートカルチャー出身だということを出したいと思ったのはそこからです。そういうお互いの中にある、心の呼び合いみたいなこともトラックに出ているかと。

──例えばどんな部分に表れているんですか?

金子 民族的なところがあったり、グレゴリオ聖歌みたいな響きがあったり。東京って、そういう世界中のいろんな物事が目の前をどんどん通り過ぎて循環していく街。川が海になって、また雨になって戻ってくるように、いろいろな情報が巡り巡っていろいろなカルチャーが生まれる。そんな生活サイクルにおける温度感やスピード感は共通してる部分があるなって思ってました。お互い現場が好きだし、常に何か作っていたいし、そのプロセスが好きだし。

今の東京は幕末っぽい

──SKY-HIさんは今、東京にどんなイメージを抱いていますか?

SKY-HI めちゃくちゃいっぱいあります。僕は中学生の頃から東京に住んでいて、特に渋谷という街への思いは強いです。思春期にレコード屋に通うようになって、十代後半でクラブのステージに立ってラップするようになって。大好きな街でリスぺクトもあって、でもその反面、悲観的になっちゃうようなことも少なくない。

──どこにマイナス要素を感じるのでしょう。

SKY-HI 時代がグローバルだから、いろんなことがあるとは思うけど、相対的に見て東京ならではの何かが衰退していってると思うんです。経済的にもそうだし、文化的にも東京発のものに何ができるかってなるとちょっと怪しい。マンガとかアニメは元気だけど、それを受けて“クールジャパン”となると途端にダサくなるとか。そんな“ジャパン”と“東京”ってニアリーイコールでもあると思いますし。

──確かに。

SKY-HI そういう歯痒さみたいなものはありますね。いろんな人がいて、いろんなものが混ざって、こんなに小さな都市の中で、多様なカルチャーがものすごいスピードで育っていった。それって、世界的に見ても珍しくて面白くて、カオティックで最高なんですよね。でもそうやって発展してきたものが、妙な感じで閉じていく傾向にあるのは切ないし胸が痛い。カッコいい東京を取り戻すとか作り直すとか、そういうことじゃないんです。カッコいい東京はすでにあるから、それを改めてレペゼンしたい。掘り起こして提示したい。それが今の僕と東京の関係値です。

SKY-HI

金子 何をもって気高さなのか。それはこの曲の端々に感じられると思うんですけど、やっぱりこの街は最高だなって思う。僕は東京に生まれて東京で育って今も東京にいる。それって宝くじに当たったくらい運がいいことだって思いますから。育った街だからボロカスになっても愛おしい。オリンピックがあるから人を受け入れるために拡張するってことは、祭りのあとそこは空になるってこと。自然災害とかもあって、撤退する勇気を唱える人もいる。衰退が見えかけてるから、捻じれてるから、そこに新しい考え方やカルチャーが生まれるのかなって思います。

SKY-HI なんか幕末っぽいですよね。

金子 そうだよね、幕末とかルネッサンスとか。

これぞ問題作

──私はこの曲が何なのか咀嚼できないと言いましたけど、強いて言葉にするならパンクだと思うんです。時代が捻じれて、そこに対する強い反抗があったり、そのせいで退屈の極みにきたりしたときに生まれる音楽。

金子 なるほど。僕はいわゆるバリバリのパンクスじゃないから適当なことは言えないんですけど、わかります。精神性としてはそうかもしれない。“引っ張っていく”と言うか、攻めていく感じ。アンビエントとかもそうだと思うんですよね。引いていくことでの攻め。そこにラップが入ってるってことは大きいですよね。この攻撃的なトラックに“違法ドラッグなんてやるバカはパクられろ”って意味合いの言葉を乗せると、法令遵守な普通のこと言ってるだけなのに、すげえヤバいことのように響く。それが音楽の魔法と言うかカッコいいところ。

──パンクの話とは逆とも取れることを聞きますが、知名度のあるお二人がそれだけのメッセージをお持ちなら、より浸透させるために、もう少し今の主流にあるポップに寄せていくこともできたと思うんです。そういう音楽もお好きだと思いますし。例えばトラップのプロダクションを取り入れるとか、民族的な要素で言うとトレンドっぽくダンスホールやアフロの要素を入れるとか。

金子 まったくなかったですね。そういうものはすでにありますし。むしろ、もし日高くんのファンも聴いてくれるんだったら、攻めたほうがいいでしょって。情報がどんどんあふれては出尽くす現代のスピード感において、なお「なんじゃこれ」って聴いたら忘れられなくなるようなもの。拒否反応が出るくらいでもいい。それが日高くんくらいのスキルを持った人とやる意味だと思います。危険な思想っぽく見えるかもしれないんだけど、ごくまっとうなことを言ってるっていう面白みは、日高くんとだからこそ。これぞ問題作ですよ。そんなこと自分で言うなよって話ですけど(笑)。