KANA-BOON|迎えた転換期、デビュー5周年のその先へ

今が最高やと本気で思ってる

──この1年、ライブをたくさんやる一方で精力的に作品をリリースしてきましたよね。B面集を2枚、ミニアルバムを夏と冬で2枚。楽曲を作る中で感じた変化はありますか?

谷口鮪(Vo, G)

谷口 そうですね。「NAMiDA」(2017年9月発売)というアルバムは、自分たち的には「これまでのKANA-BOONはここでいったん終わりでしょ」という感覚で作ったんです。キャッチーなリフがあって、いいメロディがあって、エモーショナルな部分があってという。あれが今まで培ってきたKANA-BOONの集大成みたいなアルバムだったので、次にフルアルバムを作るときに同じことをやるのかなと考えると、それは違うだろうと。いつか作る新しいフルアルバムに向かううえで、ここから先は“変化”の道のりなんじゃないかなと思っています。今まで自分たちが手を付けてこなかったことにもトライして、いろんなことをこのバンドでやりたいという感覚になったんです。

──ここまでの5年間、いろいろなことがあって波瀾万丈な道のりだったと思いますが、そうやってたどり着いた今のこの場所は思い描いていたものと比べてどうですか?

谷口 思い描いていたものとは違いますけど、納得はいってます。過去と比べたらバンドの状況は決していいわけではないと思うし、そういったバンドの浮き沈みや波に対してものすごく神経質になっていた時期もありました。でも、いい状況ではなくなったら、例え時間がかかったとしてもここから上がればいいだけの話だと今は思っていて。自分たちとしては今が最高やと本気で思ってるし、今度はそれを広く知らしめていくようにしないとなって思います。

古賀が活躍してくれました

古賀隼斗(G, Cho)

──そういった2018年を経て、2019年最初のシングル「ハグルマ」をリリースされますが、手応えはいかがですか?

谷口 カッコいい曲ができたなと思います。「からくりサーカス」のオープニングテーマとして、好きな作品に対してちゃんと納得のいくものを作って参加できたので、すごく誇らしい気持ちですね。

──「シルエット」(テレビアニメ「NARUTO-ナルト-疾風伝」オープニングテーマ)しかり、「Fighter」(テレビアニメ「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」オープニングテーマ)もしかり、KANA-BOONはアニメが絡むと気合いの入った曲を出してくる印象がありますね(笑)。

谷口 アニメに限らずなんでもですけどね(笑)。でも、そんなにたくさんアニメタイアップをやらせてもらえるわけではないから気合いは入ります。普段の曲作りとは違うエネルギーがあるので、それは曲に出ていると思いますね。

──今回はどういうところを取っかかりにして曲を作っていったんですか?

谷口 今回はまず僕が1コーラス分のデモを何曲か用意して。アニメ第2期のオープニングテーマですけど、だいたいストーリーのどのあたりなのかというのは知っていたので、テンポの速い曲であったり、最近やっていなかったようなソリッドにガシガシいく曲であったり、そういうイメージを持って作りましたね。最終的にその中からオープニングテーマに決まったのが「ハグルマ」でした。ここ最近は僕が各楽器のパートも考えて、メンバーにはそれをちゃんといい音で録ってもらうことに集中してもらっていましたけど、今回はひさしぶりにスタジオセッションもやったんです。古賀が活躍してくれましたね。今のイントロはもともとなかったんですよ。

古賀 最初は違うフレーズが入っていたんです。でももっとパンチのあるリフがいいねという話になって、みんなでスタジオで演奏しながら考えて今の形になりました。

KANA-BOONの音の作り方をもう1回呼び起こした

飯田祐馬(B, Cho)

──こういったアグレッシブな曲は今までにもありましたが、「ハグルマ」はよりそれぞれの音が重くて、太いものになっていますよね。どういう音を目指して作っていったんですか?

谷口 まず、ちゃんとカッコいい音で録りたいという思いはありました。今までも試行錯誤してやってきましたけど、いよいよ、もっとちゃんと納得のいく音を残したいなと思ったんです。音作りからトラックダウンまで、いつも以上に気を使って取り組んだので、ちゃんと迫力のある音になったかなと思います。でも、難しかったですね。最近、アジカンの「ホームタウン」(2018年12月発売の最新アルバム)のような、芯がありつつちゃんとスペースのある、ナチュラルな作品にしたいなと思って全体的に音数を減らすモードなんです。「ハグルマ」も最初は音数を減らした状態で完成させようとしていたけど、曲にパンチが出なくて、そのあたりは苦労しましたね。

飯田 ここ1年くらいで楽器の音はすごくシンプルになってきていて。ベースもエフェクターでなんとかするんじゃなくて、タッチで音を変えていくようにしているんです。アンプの設定と弾き方だけで、低音の響きを変えていくようにするとか。「ハグルマ」もカップリングの曲「オレンジ」も、そうやってエフェクターに逃げることなく自分を追い詰めたことでうまくできたかなと思っています。やりがいも達成感もありますね。エフェクターを通して作った厚みとは違うし、温かみも出てるなって。

小泉 ドラムの場合はチューニングの違いも大きいんですけど、チューニングに応じた叩き方というのもあるんだなって。海外のバンドを聴いていいなと思って真似しても同じ音が出せなかったりするし、力の使い方の難しさはすごく感じました。力強い音というのは「Origin」(2016年2月発売の3rdフルアルバム)あたりからずっと目指してきましたけど、最近はちゃんと1音1音を鳴らす大事さを痛感していて。そこをもっと突き詰めていけば、タイコもいろんな鳴らし方ができるんだろうなって、レコーディングをするたびに思いますね。

小泉貴裕(Dr)

──ギターの音も変えましたか?

古賀 だいぶ変えましたね。ドラムとベースがボトム寄りになったんで、僕が担う周波数の幅が増えたというか。アンプを変えたり弾き方を変えたりして、いかに中音域、高音域を芯のある音で埋めるかを意識しました。エフェクトで高音域をカバーしたりとか、そういうことも試しましたし。特にイントロのフレーズはベースもドラムも鮪のギターも、僕に合わせたアプローチをしてくれたので、全部の帯域が埋まって一体感のある音が生まれたと思います。

──今のお話を伺っていると、今はまさにKANA-BOONサウンドの新しいスタンダードを作ろうとしている段階なのかなと感じたのですが、どうですか?

谷口 音の面ではそうですね。同世代の、同じ世界にいるようなバンドとは違う音にしたいなと思うし。「ハグルマ」自体はちゃんとライブ曲というか、フェスでも出せるものになっているような気がします。今ツアーで演奏しているんですが、なかなかいい起点になってくれているんですよ。難しいから、ちゃんと自分たちの課題にもなっていますしね。この曲ができてよかったなって思います。