神はサイコロを振らないインタビュー|「心海」から4人だけの秘密基地へ──音へのこだわりを追求した3rdフルアルバム完成 (2/2)

今ならすべての音符がそこにある理由を説明できる

──前作「心海」(2023年9月リリースの2ndフルアルバム)のインタビューでは、皆さんの語り口から葛藤がにじみ出ているように感じました(参照:神はサイコロを振らないインタビュー|1人では生きていけない──「心海」に込めたメッセージの真意は)。

柳田 確かにそうでしたね。その迷いはなくなりました。

──何か転換点はありましたか?

柳田 2024年に開催したビルボードライブもそうだし、初期曲の再録企画「Reproduce 2025」もそうですね。今までは頭の中にあるイメージを形にする方法がわからなかったからただ闇雲に作っていた。だけどここ1、2年でそれを音にするやり方がわかってきたんですよ。

吉田 「心海」のときは葛藤していたけど、今は答えに向かってみんなが最短距離で走っている感じがします。

黒川 確かに。僕個人としても、柳田から送られてくるデモを聴いてすぐにドラムセットのイメージができるようになったという変化があって。それまではテックさんに「どういうのがいいと思いますか?」と相談しながら考えていたけど、経験の積み重ねもあって、「この曲にはこのドラムセットが合いそうだな」とか「このペダルを使いたい」と自分で決められるようになりましたね。

黒川亮介(Dr)

黒川亮介(Dr)

柳田 歌もギターもベースもドラムも、今だったらすべての音符がそこにある理由を説明できる気がします。

黒川 本当に録り音にはこだわったからね。シンバルの余韻の残し方1つとっても、柳田にコントロールルームで聴いてもらって「今の長い? 短い?」みたいな。前回はそこまでする時間も余裕もなかったけど、今回は超細かいところまで詰められました。

柳田 そういう1つひとつが本当に大事だし、いろいろ試したり、自分たちのこだわりを追求したりするのが本当に楽しくて。ツアーを一緒に回っているピアニストのDevin(Kinoshita)さんとも「音楽はすべてに意味がある」という話で盛り上がりました。カバーツアーのために、いろいろな名曲を研究する中で、ミスチル(Mr.Children)のハーモニーを紐解くと「クソカッコいいな」「こんなにおしゃれなことをやってるんだ」と思うんですよね。全体のバランスを俯瞰で捉える視点がすごく重要なんだと感じて。神サイは4人全員が俯瞰できるバンドになりたい。それが実現したら、きっとめっちゃカッコいいバンドになれると思う。

吉田 そうやって音楽に対する考え方をガラッと変えてから作った最初のアルバムが今回の作品なんです。

吉田喜一(G)

吉田喜一(G)

バンドを長く続けていきたい

──アルバムタイトルの「EINSTEIN = ROSEN BRIDGE」は、ワームホールの名称ですよね?

柳田 はい。ワームホールは過去と未来を自由に行き来できるトンネルのようなもので。アルバムの完全受注生産限定盤には10年前にリリースした曲の再録版も入っているので、過去の神サイにも、今の神サイにも、未来の神サイにもアクセスできると思ったんです。それと同時に、聴いてくれる人にとってのワームホールになれたらいいなという気持ちがあって。町ですれ違った人から元カノと同じ香水の匂いがした瞬間に、思い出が全部フラッシュバックするようなことってあるじゃないですか。この楽曲たちが、そういう存在になれたらいいなと。アルバム全体がワームホールなんです。

──ダブルアニバーサリーを通じて、過去を振り返ったり、未来について考えたりする機会も多かったと思います。バンドを続けることに対して、新しく感じたことはありましたか?

柳田 このアルバムを作る前までの自分は「破滅したらしたでええやん」みたいな考え方だったんですよ。正直「長く続けたい」という思いよりも「今最高に輝きたい」という思いが強かった。でも今は「バンドをどうやったら長く続けられるだろうか」と考えてます。というのも、そもそもバンドが10年続くってすごいなと改めて感じたんです。それは自分らがここまで続いたからこそ思うことでもあるし、周りを見ていて感じたことでもある。とてつもないエネルギーで夢を追い続けている先輩もいれば、足並みがそろわなくなって、バンドを続けられなくなった仲間たちもたくさんいますから。だから、ここから先は……ちゃんと計画を立てればやりたいことを実現できるくらいの状態にはなってきたから、ただ幸せに、音楽と向き合いながら生きていきたい。

柳田周作(Vo)

柳田周作(Vo)

──柳田さん、変わりましたね。

柳田 かなり変わりましたよ。そういう心境の変化は、たぶんボーカルのテイクにも表れていて。「長生きするには」みたいな思考になると、やっぱり体の使い方も、声の出し方も変わってくるんです。それに自分の体の扱い方もわかってきたので……カバーツアー初日公演のあと、珍しくみんなと一緒に酒を飲めたんですよ。あの時間は楽しかったなあ。吉田も「長く続けるには」みたいな話をしてたよね?

吉田 うん。ちょっと前に散歩をしながら、ロックバンドについてめっちゃ考えたんですよ。「あのバンドはロックだ」「ロックじゃない」みたいな議論がよくあるけど、そこに対する自分の回答はなんだろうって。僕が思ったのは、世の中から新しいロックバンドが出てくる状況こそがロックだということ。それ自体がカルチャーで、レガシーで、俺たちが存在している時点でロックなんだと思うようになりました。だから、次の世代がちゃんと出てくるかどうかがすごく重要で。その人たちに対して自分はどうアプローチできるかを考えたら、バンドを長く続けて、誰かに影響を与え続けることが大事だと思う。それプラス、ただ続けるだけではなく、リリースをし続けて、ちゃんと結果を出すことも妥協せずにやっていく。その2つの軸がそろっている必要があるなと思ったし、そういうことを考えながら「長く続けているバンドは偉大だな」という気持ちになりましたね。

──吉田さんも変わりましたね。

吉田 以前は自分のことしか考えてなかったですからね。だけど柳田が書いてきてくれた歌詞とかに触れる中で、それこそ「Balloon of Shooting Star」では、長く続けることや、その積み重ねを次の世代へ渡していくことを歌っていると俺は解釈していて。この1年で僕たちは歴史の上に存在しているのだと認識したし、音楽そのものの偉大さを改めて実感しましたね。

桐木 音楽そのものの偉大さか……。2人とはちょっと違う話になるんですけど、「音楽による救いってなんだろう?」と考えたときに、俺の中では「没頭」という答えに行き着いて。俺は音楽に限らず、いい作品に触れたときはゾーンに入るんです。本でも絵でもスポーツ観戦でも、いいものに触れると時間が経つのを忘れられる。そして目の前の現実が全部塗り替えられる。ゾーンの入口のようなもの──ワームホールを俺ら4人の演奏で作っていければいいな、という気持ちが今はあります。

桐木岳貢(B)

桐木岳貢(B)

柳田 6月14日のぴあアリーナMM公演でも、今、桐木が言ったようなライブができたらいいですよね。バンドのグルーヴという聴覚的な情報や、演出による視覚的な情報はもちろん、匂いとか温度とか風とか……4DXみたいに、いろいろな感覚を味わえるライブにしたいな。米津(玄師)さんは、ライブの演出でレモンの香りを漂わせたらしいですけど。

吉田 じゃあ、屁の匂いとか出す?(笑)

黒川 嫌だなー(笑)。

桐木 それだけはやめて(笑)。

神はサイコロを振らない

神はサイコロを振らない

公演情報

Special Live for Double Anniversary Year 2026 "T.W. -Traversable Wormhole-" at Pia Arena MM

2026年6月14日(日)神奈川県 ぴあアリーナMM

プロフィール

神はサイコロを振らない(カミハサイコロヲフラナイ)

2015年に福岡で結成された、柳田周作(Vo)、吉田喜一(G)、桐木岳貢(B)、黒川亮介(Dr)からなるロックバンド。2020年に楽曲「夜永唄」がバイラルヒットし、同年7月に配信シングル「泡沫花火」でメジャーデビューを果たす。2022年3月にメジャー1stアルバム「事象の地平線」を発表。2023年9月に2ndフルアルバム「心海」をリリースした。2025年2月に初の東京・日本武道館公演を開催。6月にはホールツアーを行い、追加公演として台湾で初の海外ワンマンを実施した。2026年4月15日に3rdフルアルバム「EINSTEIN = ROSEN BRIDGE」をリリース。6月14日には自身初のアリーナライブを控えている。