KAMIJO|メディアの垣根を超えて届けたい物語

想像の範疇を超えてくれるミュージシャンたち

──各楽曲で描かれているシーン、音楽的な特徴などについて聞かせてください。アルバムはインストナンバーの「Dead Set World」から始まり、全体の主題歌とも言える「Theme of Sang」へと続いていきます。

“Dead Set World”とは「理想世界」という意味。死ではなく、“変えることができない”というニュアンスもありますね。2曲目の「Theme of Sang」のメロディをオーケストラバージョンで表現しているのですが、実はすべて打ち込みなんです。フルートの生々しい息使い、弦の音まで繊細に表現しているので、生演奏だと思う方もいらっしゃるでしょうね。打ち込みではありますが、僕自身も生楽器を演奏しているような気持ちで制作しているので。「Theme of Sang」はブログで公開した物語の最後の部分をそのまま歌詞にしています。サンジェルマン伯爵(18世紀のヨーロッパで活躍した伝説的人物)がルイ17世のもとにひさしぶりに現れ、再会を喜び合っているシーンですね。もともとは日本語で歌おうとしていたのですが、いくら練習してもメロディと言葉がうまくハマらなくて。急遽英語詞にしたところ、すごくノリがよくなりました。メロディがバラの茎だとしたら、英語のフレーズがトゲの役割を果たしていると思います。

──そして3曲目の「Nosferatu」はシングルとしてリリースされた絢爛豪華なロックナンバーです。

2曲目とつなげるために、ドラムの音質をシングルのバージョンから少し変えています。再会したサンジェルマン伯爵とルイ17世が「この世界を救おう」と歌っているのですが、ルイ17世は“Emigre”(亡命貴族)なので公の場所に出ることができない。そこでサンジェルマン伯爵が「あなたの代わりに私がメディアに出よう」と申し出て、次の「Bloodcast -Interlude-」につながるというわけです。

──そのあとの「Vampire Rock Star」はどのような曲なんでしょうか?

メディアに登場したサンジェルマン伯爵が歌うことを想定して作った曲ですね。ルイ17世はそこに自分の姿を重ね、いろいろな思いを巡らせるというシーンです。こんなにライブで盛り上がりそうな曲を書いたのは初めてかもしれないですね(笑)。車で移動しているときに思い付いたフレーズがもとになっているんですよ。すぐに「これは曲にしなければ!」と思いましたし、現代的な音作りにトライすることもできてやりがいがありました。演奏も素晴らしいんです。ギターはMeku、ベースはMASASHI(Versailles)、ドラムはYUKI(Versailles)、キーボードはSHOKOさんなんですが、本当にカッコいいフレーズを弾いてくれて。演奏に関しては、中心となるリフ、メインのテーマ以外はお任せすることが多いですね。たとえばギターについても音色を少し指定するくらいで、あとは好きなように弾いてもらっているので。ソロの最大の弱みは自分の想像の範囲を超えることが難しいことだと思っていて。でも参加してくれているミュージシャンは必ず僕の想像を超えた演奏をしてくれるし、アイデアが狭まることもない。バンドでの経験が生かされていると言っていいでしょうね。

希望にあふれている「Mystery」と「mademoiselle」

──「Emigre」はオーケストラとロックを融合させた、このアルバムを象徴する楽曲の1つだと思います。

先ほども言ったようにライブ「Epic Rock Orchestra」のプロローグとして制作した曲ですね。「Emigre」はフランス革命の亡命貴族のことで、「Sang」の物語の中では「亡くなった人間をヴァンパイアとして蘇らせ、彼らに血を作らせて発電する」という制度を描いています。「もしかしたらエミグレの使者は現代にも存在していて、人々の心のすき間に入り込もうとしているかもしれない」と想像しながら聴いてもらえるとうれしいですね。

──「Mystery」は明るいメロディとミステリアスな歌詞のバランスが印象的な楽曲です。

面白い曲ですよね(笑)。「Sang」は謎が多い物語ですが、それは人の人生も同じ。連想ゲームではないですが「My Story」から「History」、そして「Mystery」へとつながってできたのがこの曲です。楽曲自体はテーマパークで流れているようなミュージカル的なイメージのものにしようと思っていました。ミステリーにはワクワクする要素がたくさん含まれているし、明るい「Mystery」という曲があってもいいのかなと。

──「mademoiselle」は美しいメロディを軸にした楽曲です。

アルバムの流れの中で聴くと、この曲が持っているキャッチーな部分がさらに際立つと思います。この曲の歌詞はストーリーに直接関係しているわけではないんですよ、実は。CDの歌詞カードの中に謎解きのヒントが隠されているので、そこも楽しんでほしいですね。「Mystery」は謎の出会い、「mademoiselle」は男女の出会いをテーマにしていますが、どちらも物語の始まりを告げるものですし、希望にあふれているんですよ。

KAMIJO

感性が近い人たちに作品を届けるためには

──重厚感のあるイントロから始まる「Castrato」も、「Sang」の物語の大事なポイントと言えそうですね。

サンジェルマン伯爵が現代の人々に警告を与え、「どんな未来を選択するのか?」と問う場面を描いた曲ですからね。この曲はアルバムのサウンドの要でもあるんですよ。「Epic Rock Orchestra」を通して追求してきたことが、一番いい形で表現できた曲なので。僕はずっと「Symphony Of The Vampire」(メジャーデビューミニアルバムの表題曲)を超えることを目標にしてきたのですが、それを達成できたのが「Castrato」だと思っていて。今は「Castrato」を超えるのが大変なんですけどね(笑)。

──それはつまり「Epic Rock Orchestra」で掲げていた“ロックとクラシックの壁を壊す”というテーマをさらに推し進めるということですか?

音楽のジャンルだけではなく、媒体やメディアの境をなくしたいという気持ちもありますね。音楽、ミュージカル、小説、映画、アニメ……表現の方法はいろいろとありますが、どうしても音楽ファン、アニメファンなどに分けられてしまう。本来はそうじゃないと思うし、僕は感性が近い人たちに作品を届けたいです。たとえばフランス革命に興味がある人、ヴァンパイア映画が好きな人は必ず「Sang」を楽しんでくれるはずなので。そのためにはメディアの垣根を超えないといけないんですよね。

──なるほど。そしてアルバムは「Ambition -Interlude-」を経て、組曲として構成された「Sang I」「Sang II」「Sang III」でクライマックスを迎えます。

「Ambition -Interlude-」はナポレオンの野望を表現しています。「Sang I」「Sang II」「Sang III」はまさに物語のクライマックスですね。これまでに登場してきた人物の名前も聴き取れると思うので、ストーリーを楽しみながら聴いてもらいたいです。

KAMIJO「Sang」
2018年3月21日発売 / Sherow Artist Society
KAMIJO「Sang」初回限定盤

初回限定盤 [CD+DVD+ストーリーブックレット]
4860円 / SASCD-092

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KAMIJO「Sang」通常盤

通常盤 [CD]
3240円 / SASCD-093

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CD収録曲
  1. Dead Set World
  2. Theme of Sang
  3. Nosferatu
  4. Bloodcast -Interlude-
  5. Vampire Rock Star
  6. Emigre
  7. Mystery
  8. mademoiselle
  9. Delta -Interlude-
  10. Castrato
  11. Ambition -Interlude-
  12. Sang I
  13. Sang II
  14. Sang III
初回限定盤収録内容

DVD

  • Nosferatu MV
  • Story of Sang

ストーリーブックレット

公演情報

KAMIJO Live Tour 2018 -Sang-
  • 2018年3月24日(土)東京都 鹿鳴館
  • 2018年3月30日(金)京都府 KYOTO MUSE
  • 2018年4月1日(日)大阪府 OSAKA MUSE
  • 2018年4月8日(日)神奈川県 新横浜 NEW SIDE BEACH!!
  • 2018年4月14日(土)千葉県 KASHIWA PALOOZA
  • 2018年4月21日(土)宮城県 SENDAI CLUB JUNK BOX
  • 2018年4月29日(日・祝)兵庫県 神戸VARIT.
  • 2018年4月30日(月・祝)岡山県 IMAGE
  • 2018年5月3日(木・祝)熊本県 熊本B.9 V2
  • 2018年5月4日(金・祝)福岡県 DRUM SON
  • 2018年5月12日(土)愛知県 ell.FITS ALL
  • 2018年5月13日(日)静岡県 Sunash
  • 2018年5月19日(土)栃木県 HEAVEN'S ROCK Utsunomiya VJ-2
  • 2018年5月26日(土)新潟県 GOLDEN PIGS BLACK STAGE
  • 2018年5月27日(日)石川県 vanvanV4
  • 2018年6月2日(土)北海道 DUCE
  • 2018年6月3日(日)北海道 DUCE
  • 2018年6月10日(日)長野県 NAGANO CLUB JUNK BOX
  • 2018年6月16日(土)埼玉県 HEAVEN'S ROCK さいたま新都心 VJ-3

Tour 2018 -Sang- FINAL

  • 2017年11月10日(金)東京都 TSUTAYA O-Crest
KAMIJO(カミジョウ)
1995年からヴィジュアル系ロックバンドLAREINEのボーカリストとして活動し、1999年にSME Recordsよりデビュー。その後2007年春にVersaillesを結成し、2009年にワーナーミュージック・ジャパンよりデビューした。Versaillesはデビュー作となるシングル「ASCENDEAD MASTER」でオリコン週間ランキング8位を記録し、2012年12月に活動休止。KAMIJOは在籍したバンドでほぼすべての作詞と大半の作曲を手がけており、劇伴制作でも才能を発揮している。2013年8月にシングル「Louis ~艶血のラヴィアンローズ~」でソロデビュー。2014年3月にはワーナーミュージック・ジャパンからソロメジャーデビュー作品「Symphony Of The Vampire」をリリースし、同年9月に1stフルアルバム「Heart」を発表した。活動20周年を迎える2015年はワールドツアーの開催に加え、オールタイムベストアルバム、リバイバルベストアルバムの発売と一層精力的に活動を行った。2015年末にVersaillesの活動再開を発表し、現在はバンドと並行してソロ活動を行っている。2017年は5月にシングル「カストラート」をリリースし、7月にワンマンライブ「Epic Rock Orchestra」を実施。2018年3月にアルバム「Sang」を発表し、自身最大規模のツアーをスタートさせる。