神聖かまってちゃん|の子が明かす「進撃の巨人」最終章オープニングテーマの生まれた背景

陰キャが全校集会で全生徒の前でぶちかました!みたいな

mono(Key)

──以前の対談で諫山さんは、「夕暮れの鳥」の制作の際に「『コンクリートの向こう側へ』のような“ホーリー感”で『風の谷のナウシカ』のオープニングテーマを作るとしたら」というリクエストをしたと話していましたが、今回も諫山さんから何かオファーはあったんですか?

今回は制作サイドから「映画音楽みたいな壮大な曲」って依頼されました。あとは「神聖かまってちゃんといえばコレ、みたいな曲をください」って。まあ、正直そんなこと言われなくても僕はわかりますけどね。自分がどういう曲を書けばいいのかとか。

──前回は「夕暮れの鳥」のほかにいくつか候補曲を作っていたと言っていましたが、今回はどうだったんですか?

ほぼこの曲だけみたいなもんですね。念のためもう1曲作って投げたんですけど、「僕の戦争」で即決って感じで。

──ちなみにもう1曲も、近いテイストの曲なんですか?

いえ、全然違いますね。もっと「HUNTER×HUNTER」とか「ドラゴンボール」って感じの曲。もうちょいキャッチーというか。

──そういう曲も作っていたんですね。

みさこ(Dr)

神聖かまってちゃんにはいろんなタイプの曲があるのに、その中でも「僕の戦争」みたいなタイプの曲を世界規模で叩きつけられるタイミングをくれて、僕としてはすごく感謝してます。例えるなら、陰キャが教室で1人でコツコツ作ってた気持ち悪い作品を、全校集会で全生徒の前でぶちかました!みたいな(笑)、そういう「叩きつけてやったぜ!」って感じがして楽しかったです。

──生のストリングスやクワイアを取り入れた豪華で迫力のあるサウンドメイクは、これまでの神聖かまってちゃんにはないアプローチだなと感じました。

本当は今までのレコーディングでも聖歌隊を使いたかったんですよ。お金がなくて無理だっただけで。今回は「進撃の巨人」の曲ってことでいつもよりもいっぱいお金が出たんで、念願だった夢を叶えて初めて聖歌隊を呼びました。本当によかったですね。今回のレコーディングでは、僕の才能を札束で叩きつけてやりましたよ。

──お金をかけることで満足いく表現を突き詰められたならよかったですよね。予算がないという理由で自分がやりたい表現にリミットがかかるのは残念ですし。

いや、ホントそうっすね。だからもう、聖歌隊なんて次はいつ使えるかわかんないですよ(笑)。また「進撃の巨人」みたいなでっかいタイアップをつかまないと、本当に無理なんじゃないかなみたいな。

マリオで例えたらスター状態じゃないですか

──YouTubeを観ると、フルサイズの発売前からすでに世界中のたくさんの人たちが「僕の戦争」のカバー動画をアップしていましたよね。

けっこう観てますよ。みんな早いですよね。アニメの初回放送の当日にピアノで弾いたりドラムを叩いたりする動画がアップされてたりしてて。国を越えてこういう広がり方をするっていうのは、インターネットのいい部分ですよね。僕は昔からインターネットが好きなのでいい面も悪い面も知ってるんですけど、最近はTwitterとは距離を置いてるんですよ。あれは、自分では意識してなくても他人の怒りとかを見続けることになるので、精神的に汚染されてしまう。インターネットは車の運転と同じなんです。ちゃんと自分で自分を制御しながら楽しまなきゃ危ないんですよ。だから僕はそれを肝に銘じながら、1日16時間くらいネットサーフィンしてます。

──なるほど、の子さんはインターネットの長距離ドライバーというわけなんですね。

いやマジでそう。あと中毒者ですね。インターネットジャンキー。

──これまで神聖かまってちゃんのことを知らなかったであろう海外の方々がこの曲に熱狂しているのを、の子さんはどう感じますか?

このタイアップが終わってからが本当の勝負ですよね。果たしてそのあとも付いて来てくれるのか。それは海外に限らず国内も同じことで。だってタイアップ期間って、マリオで例えたらスター状態じゃないですか。

テレビアニメ「『進撃の巨人』The Final Season」オープニング映像より。
テレビアニメ「『進撃の巨人』The Final Season」オープニング映像より。

──ははは(笑)。

僕は今までもいくつかタイアップをやってきたから、これが諸行無常なことだってわかってるんですよ。その期間は盛り上がっても、作品が終わればほとんどの人は去ってくんだなって。だからそういう盛り上がり方に対してはもう冷めてますよ。ドライというか。

──でも「夕暮れの鳥」「るるちゃんの自殺配信」「僕の戦争」と、海外でバズった曲が3曲もありますし、神聖かまってちゃんが海外公演をやっても観客は集まりそうな気がしますよ。まあ、今はコロナ禍なので簡単には渡航できませんが。

「いつか行けたらいいな」というのは本当に思ってますよ。もともと行く予定もあったし。コロナが流行る前にパスポートを取ってたんだけど、パスポート取った瞬間にコロナ禍になったんですよ(笑)。でも僕は海外で活動することに対してはまったくナメてなくて。こういう形でいくら名前が広まったとしても、現地で経験を積み重ねていってファンを増やさないと絶対ダメだと思う。いくら海外で反響あるって言っても、今は本当のお客さんはまだ全然いないはず。だから海外で集客付けたければ、ちゃんと向こうでドサ回りして本当のファンを付けないと難しいと思いますね。

──の子さんは基本的に自信家というイメージだったんですけど、そのへんはけっこうシビアに考えているんですね

というか絶対シビアですよ、海外展開なんて。そんな簡単な話じゃないはず。僕も今年で36歳になるので、「人生もうあとがないな」って日々考えてますしね。

──もうすぐ36歳になるの子さんが、今もこうやって名曲を作り続けてるのはうれしいことですね。かつて「23才の夏休み」で遠い未来の話のように「そして33才さ」と歌っていたのに(笑)。

まあ、そうですね。69歳くらいになってもそんなことを笑いながら話せたらいいですね。ははは(笑)。

──2020年に1年間充電することができたので、ここからまた10年間は止まらずにがんばりましょう(笑)。

そうですね。やっぱり僕はナタリーが大好きなんで、これからもずっとこういうことを話し続けられるようにしたいです。

MAPPA(「『進撃の巨人』The Final Season」アニメーション制作)コメント

初めて「僕の戦争」を聴いたときの感想

一度聴いたら頭から離れない、ファイナルシーズンの幕開けにふさわしいインパクトある楽曲だと思いました。

同時に、この音にどんな映像を当てはめていけばいいのか頭を抱えました(笑)。

「僕の戦争」の歌詞やメロディに着想を得て作ったシーンについて

テレビアニメ「『進撃の巨人』The Final Season」オープニング映像より。

個人的に、歌詞にピッタリ絵を合わせすぎるとちょっと恥ずかしい感じがするので、曲の展開やリズムに合わせて映像を構成するようにしています。

音に明確に合わせたのは、ラストの雨粒が跳ねる場面でしょうか。軽快なリズムに合わせて波紋や滴が舞うイメージにしました。