JUJU「昭和洋楽 純喫茶JUJU『時間旅行』」インタビュー|10年ぶり洋楽カバー作で松任谷正隆と描いた“70年代の純喫茶” (2/2)

正隆さんのアレンジは“清い”

──「こんなアレンジでくるんだ」と驚いた曲はありますか?

ダイアナ・ロス「If We Hold On Together」は今回一番びっくりしたアレンジだったかも。イントロやAメロが、すごく“清い”なあと思って。「Winter Wonderland」みたい!と思いましたね。正隆さんが手を加えるとちょっとホーリーになるというか、教会が見える感じが常にあるんですよ。それがすごく素敵だなと思いました。それはビリー・ジョエル「Honesty」でも感じましたね。「Honesty」は正隆さんのアレンジですごく難しい世界に連れていかれました。

──それは具体的に言うとどういうことですか?

この曲の歌詞は大人になればなるほど内容が身につまされるというか。相手に誠実さを求めているけれど、その誠実さってだいたいの場合見つからなくて、めちゃくちゃ傷付いたりするわけですよ。いろいろ悩み苦しんで結局あきらめるんだけど、あきらめの中に救いがある。その救われるところに正隆さんが連れてってくれる感じがして。歌ってるときにワー!っと後ろ向きに倒れこんでも、正隆さんのアレンジが救い上げてくれる気がするんです。それは正隆さんならではなんだろうなと思うし、だからすごく“清い”なと思いました。

──ほかの曲もさまざまなアレンジが施されていますが、奇をてらったものはなく、JUJUさんの歌声を前面に出した作りになっているなと思いました。

全部が全部オリジナルから離れたものにすると、皆さんからリクエストを募った以上、「私が好きなオリジナルと全然違うんだけど」ということにもなりかねないから、その塩梅は考えましたね。でもBee Geesの「How Deep Is Your Love」は、子供の頃から私にはちょっと明るすぎる印象があったんですよ。日曜の昼下がりにニヤニヤが止まらない2人が駆け引きしながらイチャコラしてる感じ、というか(笑)。ニューヨークが舞台の映画「サタデー・ナイト・フィーバー」のサントラに入ってる曲なのに、私にとってあの曲はカリフォルニア感がすごく強くて。私はもうちょっと湿度のある曲が好きだから、今回私がこの曲を歌うならば映画「ナインハーフ」の2人、ミッキー・ロークとキム・ベイシンガーの「How Deep Is Your Love」にしたいというのを、アレンジャーの石成正人さんにお伝えしました。「とりあえず映画観てください」って(笑)。やるせない雰囲気を出したかったんですよ。諦観が大事なわけです(笑)。オリジナルの「How Deep Is Your Love」が好きな人からすると、全然イチャコラできないじゃんって思われるかもしれないですけど(笑)。

──歌ってみて難しかった曲はありましたか?

どの曲もずっと聴いてきた曲だし、メロディを口ずさんできた曲だけど、知ってるつもりでいたからこその落とし穴もありました。だからどの曲も初めて出会ったテイで、もう一度改めてきちんと聴いてから歌うことを心がけました。特に一筋縄ではいかなかったのは、エルトン・ジョンの「Your Song」ですね。こんなに譜割りとメロディが変わり続ける曲だと思わなかったです。ライブでも歌ったことがあるけれど、そのときの私の「Your Song」は全然違う「Your Song」だったんだなと思い知りました。エルトン・ジョンがなぜこんなに譜割りとメロディが変わり続ける曲にしたのか私はわからないまま、知ったかぶりで歌っていたんだなと思いましたね。

──今はその意味は理解できたのですか?

この曲はラブレターなんですよ。ラブレターを誰かに送るときってこうなるよなと思って。ラブレターをメロディに乗せて好きな人に向けて歌うときに、当然感じるであろう照れだったり、はにかみだったりがあるからこそ、譜割りも変わるし、メロディも変わるし、タメも変わるんですよね。それに気付いてからは「なんて美しい曲なんだろう」と一層思うようになりました。

ツアーでさらにアルバムを深く掘り下げる

──改めて、松任谷さんとまるまる1枚アルバムを作っての感想をお願いします。

非常に興味深い時間でした。例えばSimon & Garfunkel「Bridge Over Troubled Water」のレコーディングのときには、正隆さんから「鳥の目線になって、荒野を上から見ている感じで歌って」と言われて。私、これまで鳥の目線で歌ったことなかったけど(笑)、それは絶対トライしてみたいなと思って、鳥の目線に立ってみたんです。実際歌ってみると、正隆さんがやりたかったことの気持ちがめちゃくちゃよくわかりました。この曲は「あなたがしんどいときは、私が自分の身を呈してでもそこを渡れる橋になるから、私の上を通っていってください」という歌ですけど、それってJUJUをここまで連れてきてくださった皆さんに対して私が感じていることだなという思いが、鳥として歌ってるときにぶくぶくと湧いてきて。すごく不思議な体験をさせていただいたし、だからこそ正隆さんとの仕事は癖になるなと。音楽を作る以上のものが必ずそこにあるというか。本当に貴重な体験をさせていただきました。

──先ほども「純喫茶JUJUは長く続けていきたい」とおっしゃっていましたし、今後もこのシリーズは続くと。

続きます! 続きますとも!(笑) 早い時間は喫茶店として開けているスナックも多いじゃないですか。だからママが帰ってきても、昼間の営業として純喫茶を続けたいと思ってます。横にも縦にも斜めにも後ろにも前にも行くのが時間旅行だと思うし、「純喫茶JUJU」ならではの時間旅行がたくさんできたらなと思ってます。

──6月からは4カ月におよぶロングツアー「JUJU HALL TOUR 2026 純喫茶JUJU『時間旅行』演出:松任谷正隆」が開催されます。このツアーも松任谷さんが演出されますね。

欲深いので「ツアーの演出もお願いします」とお伝えしました(笑)。ツアーでさらにアルバムを深く掘り下げて、切り込んでいく作業をもう1回正隆さんとできるのがすごくうれしいです。正隆さんとご一緒させていただいた前回のツアーでは、「ユーミンをめぐる物語」収録曲も全曲はやっていなくて、アルバム以外の曲も含めて、正隆さんが構成されていきました。今回のツアーも、洋楽だけではなく別の曲もやるかもしれないし、ツアーの主軸みたいなところを、正隆さんと今話しています。このアルバムは3月のリリース時ではなく、10月11日のツアー最終公演ですべて完結すると思うので、皆さんのお住いの近くで「純喫茶JUJU」が開店する際には、ぜひ時間旅行を体験しにいらしていただければと思います。思ってもみなかった時間旅行がたくさんできるはずですよ。

──初回限定盤とFC会員の完全生産限定盤には前回のツアー「JUJU HALL TOUR 2025 The Water」のライブ映像が収録されます。改めて同ツアーの感想をお願いします。

ひさしぶりのオリジナルアルバムのツアーだったので、毎公演ドキドキしながらやっていましたし、純粋にJUJUのオリジナル曲だけのアルバムツアーは本当にニッチな世界だったりもするから「皆さん大丈夫かな、本当に来たいと思ってくれているのかな」と少し不安を感じていました。でもオリジナルアルバムのツアーじゃないと感じられないものが絶対あるし、こういったツアーだからこその一体感も、やっていくにつれてどんどん感じましたね。スタッフが見つけてくれたファンの方の感想の中に「ツアーのことを想定してアルバムを作ったんじゃないかって思うような、そんなライブだった」というものがあったんですけど、実は本当にその通りで。「ライブでこういうふうに見せたいから、この曲は絶対必要だ」と考えて作った曲もあるし、そこをきちんと汲み取ってくださる方がいらっしゃることに私はまた勇気をいただいたので、「これからもがんばろう」とすごく思えました。

──FC会員限定盤は、今回のCDや「JUJU HALL TOUR 2025 The Water」のDVD / Blu-rayに加え、今作のカセットテープやライブフォトブック、オリジナルステッカーに「純喫茶JUJU」のミニチュア看板までついた、とんでもなく豪華な内容となっています。

「昭和洋楽 純喫茶JUJU『時間旅行』」完全生産限定盤のパッケージ展開図。

「昭和洋楽 純喫茶JUJU『時間旅行』」完全生産限定盤のパッケージ展開図。

中でもカセットテープが肝で。私たちが「スナックJUJU」の大家とママに許しを得て、ひさしぶりにスナックの中に入って掃除をしたり内装を変えているときに、このカセットテープを見つけたわけですよ。で、このカセットテープはなんだったのか……という謎がツアーで解き明かされます。

──おお!

今回のアルバム作りも、1本のカセットテープを見つけたところから始まったんです。そのカセットテープの正体はライブに来てのお楽しみです。

──絶対ライブに行かねばですね!

そういうことです(笑)。皆さんを壮大な物語の中に連れていきますよ。

公演情報

JUJU HALL TOUR 2026 純喫茶JUJU「時間旅行」 演出:松任谷正隆

  • 2026年6月20日(土)千葉県 森のホール21
  • 2026年6月24日(水)栃木県 宇都宮市文化会館
  • 2026年6月27日(土)東京都 J:COMホール八王子
  • 2026年6月28日(日)東京都 J:COMホール八王子
  • 2026年7月1日(水)愛知県 愛知県芸術劇場 大ホール
  • 2026年7月2日(木)愛知県 愛知県芸術劇場 大ホール
  • 2026年7月7日(火)新潟県 新潟県民会館
  • 2026年7月10日(金)佐賀県 鳥栖市民文化会館 大ホール
  • 2026年7月11日(土)長崎県 長崎ブリックホール
  • 2026年7月17日(金)香川県 レクザムホール(香川県県民ホール)
  • 2026年7月18日(土)愛媛県 松山市民会館
  • 2026年7月22日(水)大阪府 フェスティバルホール
  • 2026年7月23日(木)大阪府 フェスティバルホール
  • 2026年7月29日(水)東京都 NHKホール
  • 2026年7月30日(木)東京都 NHKホール
  • 2026年8月2日(日)石川県 本多の森 北電ホール
  • 2026年8月7日(金)山形県 やまぎん県民ホール(山形県総合文化芸術館)
  • 2026年8月9日(日)青森県 リンクステーションホール青森(青森市文化会館)
  • 2026年8月12日(水)群馬県 高崎芸術劇場 大劇場
  • 2026年8月18日(火)京都府 ロームシアター京都 メインホール
  • 2026年8月20日(木)兵庫県 神戸国際会館 こくさいホール
  • 2026年8月21日(金)兵庫県 神戸国際会館 こくさいホール
  • 2026年8月23日(日)長野県 ホクト文化ホール
  • 2026年8月29日(土)広島県 広島文化学園HBGホール
  • 2026年8月30日(日)岡山県 倉敷市民会館
  • 2026年9月3日(木)大阪府フェスティバルホール
  • 2026年9月4日(金)大阪府フェスティバルホール
  • 2026年9月8日(火)静岡県 静岡市清水文化会館(マリナート)大ホール
  • 2026年9月12日(土)愛知県 Niterra日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
  • 2026年9月18日(金)福岡県 福岡サンパレス
  • 2026年9月19日(土)福岡県 福岡サンパレス
  • 2026年9月22日(火・祝)北海道 札幌文化芸術劇場hitaru
  • 2026年9月23日(水・祝)北海道 札幌文化芸術劇場hitaru
  • 2026年9月26日(土)宮城県 仙台サンプラザホール
  • 2026年9月27日(日)宮城県 仙台サンプラザホール
  • 2026年9月30日(水)埼玉県 大宮ソニックシティ 大ホール
  • 2026年10月2日(金)茨城県 水戸市民会館 グロービスホール(大ホール)
  • 2026年10月7日(水)福島県 けんしん郡山文化センター 大ホール
  • 2026年10月10日(土)東京都 東京国際フォーラム ホールA
  • 2026年10月11日(日)東京都 東京国際フォーラム ホールA

プロフィール

JUJU(ジュジュ)

2004年メジャーデビュー。2007年から毎年欠かすことなく全国規模のライブツアーを開催している。デビュー20周年の2024年には「スナックJUJU 東京ドーム店」や全国アリーナツアーも開催した。「奇跡を望むなら...」「やさしさで溢れるように」など数多くのヒット曲をリリース。邦楽カバーアルバム「Request」シリーズやジャズアルバム「DELICIOUS」シリーズなど、歌で“物語”を伝える歌手として、ジャンル・洋邦・世代を超えて名曲を歌い継ぐライフワークも注目されている。2025年3月に、7年ぶり8枚目のオリジナルアルバム「The Water」をリリース。2026年3月には松任谷正隆をプロデューサーに迎えた10年ぶりの洋楽カバーアルバム「昭和洋楽 純喫茶JUJU『時間旅行』」を発表した。