juJoe「supersonic」特集|ESP学園在校生とコラボプロジェクトを振り返る (2/2)

ぜいたくなレコーディングだった

──本番のレコーディングに関しても、3人はそこまで関わっていない感じですか?

長谷美 そうですね。私たちは交代で写真や動画を撮りに行っていたくらいで。

米谷 お水を持ってきてくれたりね。

佐藤 レコーディングの様子を拝見するのは初めてだったので、僕はけっこう緊張感がありました。思っていた以上に細かく楽器の音色やマイキングなどの調節をしているのを見て、曲に対してのこだわりがすごいなと。

小林 私はレコーディング風景の撮影に手一杯で、あまり作業自体に目を向ける余裕がなかったです。スタジオが狭くてどうしても画角が全部一緒になっちゃうので、どうやって変化をつけたらいいのかなって。それ以外の印象が特に残ってない(笑)。

長谷美 レコーディング作業はサウンドエンジニア専攻の学生たちが主体でやっていて、もちろん先生にもついてもらってましたけど、知ってる子たちがjuJoeさんのレコーディングをやっているという衝撃がありました。率直に「すご!」って思いましたね。

──バンド側はどうでした? 学生とのレコーディングは。

 なんでもやってくれるんで楽でしたよ。水を持ってきてくれたり……。

米谷 水ばっか(笑)。

 毎回マスター譜が新品で用意されてたり、あと防音室の重いドアを「どうぞ」って開けてくれたりとか。

平井 そのおかげで体力が温存されましたね。

花澤 僕たちが普段やっているレコーディングは「1日で5曲録り終えないと」みたいなスピード感で進むこともあるんですけど、今回は「2週間に分けて1曲分のギターだけ録る」みたいなスケジューリングだったんで、時間的な余裕がかなりあって。その場で学生のアイデアを募って「これやってみようか」と試してみるようなこともいろいろできたので、それがすごく楽しかったです。かなりぜいたくな時間の使い方でした。

花澤彰典(G)

花澤彰典(G)

米谷 例えば「1回ラインで録ったベースをリアンプしてもう1回マイクで録る」みたいな実験をしたりとか。授業の一環なんで、先生がいろんなテクニックを学生に教える目的もあるから、それが僕らにとっても勉強になったところがありましたね。学生と同じ目線でレコーディングに臨めたというか。

平井 ここまでたっぷりの予算と時間が使えるレコーディング現場って、正直経験したことなかったんで。レーベルに所属して会社から予算が出てたときだって、こんなにゆっくりやれたことはないですよ。

平井拓郎(Vo, G)

平井拓郎(Vo, G)

米谷 普段は妥協することも多いんです。自分たちで録音するとなったらお金も時間も限られるから「これはまあこんなもんかー」で済ませることも少なくないんだけど、今回はサポートも手厚かったんで、納得いくまでできた感じはしますね。

 全部で何十時間やったんだろう?

花澤 週1回の授業が8週分あったから……。

米谷 1日6時間ぐらい? ということは、2曲で48時間ぐらい使ったってことか(笑)。

 2曲で48時間! 考えられない(笑)。こんなスケジュールでレコーディングできるの、すっごいお金持ちだけだよ。

長谷美小林 わはははは。

佐藤 あれくらいじっくり時間をかけてやるのが普通なのかと思ってました……。

米谷 自分たちでお金を出して録るときに今回みたいな時間の使い方をしようと思ったら、ものすごい負担になっちゃう。

 ドキドキしちゃう。

米谷 動揺していい演奏できない(笑)。前作の「玉砕 / 待っていた」なんて、2曲を1日で録りましたからね。

花澤 10時間もかかってない。

 8時間ぐらいかな。なんなら時間が余ってた(笑)。

学生のコーラスが入ってタイトルトラックが変更に

 あと今回、学生のみんなにコーラスを歌ってもらったんですよ。「supersonic」のサビと、「チェーンソー」の最後のほうで入ってくるコール&レスポンスのところ。

──そこには3人も参加しているんですか?

小林 (小声で)してない……。

 (笑)。この3人はコーラス録りの日に現場にいなかったんで。いてほしかったですけどね。

菅秀昭(B)

菅秀昭(B)

長谷美 基本的にはレコーディング作業を担当した学生たちが参加させてもらいました。うちのクラスからも1人だけ、たまたま撮影で行ってた子が参加してるんですけど。

佐藤 どうせなら参加したかったですね。

長谷美 コーラス録りの場面もカメラに撮ってあって、「楽しそうだなー!」と思いながら見てました。

 実際楽しかったからね。俺ら、キャッキャしてたから(笑)。みんな歌うまいんですよ。なんとなく「もうちょっとがんばって歌えよ!」とか言うことになるんだろうなと予想してたんですけど、意外にみんなちゃんと声出して歌ってくれて。

米谷 ピッチもよかったし。

米谷優馬(Dr)

米谷優馬(Dr)

 そう! 俺より全然うまい。

平井 曲もちょっと感動的な感じになってね。当初は「チェーンソー」をタイトルトラックにする予定だったんですけど、みんなのコーラスが入ったことで「supersonic」に変えたんですよ。最後やけに感動すんな、って。

──そうして音源が完成したと。MVやジャケ写、アー写の撮影に関してはどうでしたか?

 MVのほうは撮影チームに完全にお任せだったんですけど、アー写とジャケ写に関しては学生たちからいろんなアイデアをもらって、めちゃめちゃ助かりました。「試しにこんなの撮ってみました」ってサンプルをたくさん出してくれて。

平井 そうやって能動的にアイデアをポンポン出してきてくれるとすごく助かりますね。

花澤 普段の制作だとスタッフに「アー写、どんなふうに撮りたいですか?」ってまず聞かれることが多いんですよ。でも僕らもそれなりに長年バンドをやってきて、アー写もいろんなパターンを撮ってきたんで、正直もうネタ切れというか(笑)。

 「どうしたいですか?」と聞かれても、どうしたいもこうしたいもないんで(笑)。俺らはマジでなんでもよかったんで、今回のように「こういう構図でこんなふうに撮ろうと思ってます」とか提案してもらえるのはありがたかった。アー写のときは「適当にしゃべっててください」とだけ言われて、本当に適当にしゃべってただけなんで。

花澤 委ねられたのがよかったです。

 ジャケ写に至っては、僕ら何もしていないですから。この写真、走るこころちゃん(小林)を捉えた奇跡の1枚なんですよ。

小林 そうなんです(笑)。実はこれ私で。

 躍動感が素晴らしい!

juJoe「supersonic」ジャケット

juJoe「supersonic」ジャケット

サカナクションの次はミセスを目指す

──シングル「supersonic」を売り込むにあたって、プロモーション担当、マネジメント担当としてどういうポイントをアピールしていきたいですか?

佐藤 まず一番は学生、若者に聴いてほしいと思います。もちろん曲自体は若者に限らず、どの世代の人が聴いても刺さるものだとは思いますけど、まずは若者に届いてほしいですね。

長谷美 最近の若い人はやっぱりK-POPとかに興味が向いてて、私も含めてですけどあまりバンドさんを聴かない子が多いと思うので、初めてバンドさんの音楽を聴くという人に聴いてもらいたいです。

小林 私は逆に、今はバンドが来ている時代でもあるかなと思っていて。Mrs. GREEN APPLEとかが起こしている波に乗れたらいいなと。

左から長谷美里奈(アーティストマネジメント担当)、佐藤依織(セールスプロモーション担当)、小林想(セールスプロモーション担当)。

左から長谷美里奈(アーティストマネジメント担当)、佐藤依織(セールスプロモーション担当)、小林想(セールスプロモーション担当)。

花澤 サカナクションの次はミセスを目指すということですね。

平井 異論はない。

小林 あはははは。

長谷美 あとは2月20日にレコ発ライブ「超々juJoe」を開催するので、盛大にリリースをお祝いできたらなと思っています。juJoeさんと親交のあるRhythmic Toy Worldさん、Large House Satisfactionさんという2組のバンドさんに出演していただけることになりました。

小林 せっかく3バンド出るので、最後に「supersonic」や「チェーンソー」を出演バンド全員で歌うみたいな演出ができたらいいなと思っています。まだできたらいいな、と思っている段階ですけど。

長谷美 でもそれはみんなやりたいねって話してるよね。

──そこに学生さんは入らないんですか?

長谷美 学生は……え、入ります?(笑)

 「We Are The World」みたいじゃん。

一同 あはははは。

花澤 この1年間の集大成みたいなライブになると思うんで、みんな参加でやりたいですね。

平井 とりあえず学生さんにいっぱい来てもらいたいです。

 学割も用意しましたし、学生たちにもぶっ刺さること間違いなしの力を持ったバンドを呼べたので、普通にいいイベントにはなりますよ。確実に。

juJoe

juJoe

長谷美 それこそバンドさんのライブを観たことがない人たちに、生演奏のすごさを味わってもらいたいです。

 そうだね。プロモーションがんばって!

佐藤長谷美小林 がんばります(笑)。

音楽を続けていいんだ

──では最後に総括として、この1年間やってきて得たもの、学んだことを教えてください。

佐藤 実際にライブを企画して運営する経験をしたことで、エンタメ業界の裏側を垣間見ることができました。僕は将来的にアーティストを売り出すプロダクションなど、音楽スタッフ総合コースで学んできたことをそのまま生かせるような仕事に就きたいと思っているので、とても貴重な経験をさせてもらえました。

長谷美 私はこのプロジェクトが始まった当初からjuJoeさんとの連絡を取らせていただいて、バンドと学生の窓口みたいな感じだったんです。大人の方々と連絡を取り合う機会もこれまであまりなかったので、必要な情報を整理して文章にまとめることがすごく難しくて。この1年間で、そこをちょっとでも学べたと思っています。この経験は社会に出てからもしっかり生かせるんじゃないかなと。

小林 私は最初の自己紹介のとき、「juJoeさんをテレビに出させます!」みたいな宣言をした記憶があるんです。でも今思えば、そのときは夢しか見てなかった。毎日の授業やイベント制作の経験を重ねてきたことで、一番大事なのは規模を大きくすることじゃなくて、どれだけ人の心に届くか、どれだけ影響を与えるかなんだなと気付くことができました。業務上のことだけじゃなく、人間的にもいろんなものを得られた1年間だったなと思います。

──素晴らしいです。ありがとうございました。では、バンド側からもこの1年やってきた感想を聞かせてください。

平井 今回のMV監督とは10年前にも一緒にMVを作ったことがあって。10年経ってまた仕事で再会するということが起きたんで、もしかしたらこの3人とも10年後にまた会うかもしれないですよね。やってきたことがつながって、歴史が流れているんだなと。そこでまた新しい人たちと出会えたことで、まだ自分が音楽を続けていいんだと神に言われたように感じた一年でしたね。

 もし10年後にまた一緒に仕事するとなったら、そのときはもう俺ら50過ぎてることになるんですが……。

花澤 ホントだ!

米谷 大御所だ!

 大御所(笑)。それまでやっていたいですね。そのためにも、こうやって学生と絡んで代謝するチャンスをもらえたのはマジでうれしかったです。

米谷 曲決めの件もそうですけど、自分たちにはない発想や視点でjuJoeのことを見てもらえたことがありがたかったですね。非常に得るものの多い1年でした。

花澤 ちょっと青春してる感じがありましたね。学生のみんながイベントに向かってがんばっていたりする姿を間近に見ているだけで、ちょっと心がホカホカするというか。僕らだけでやっていたら絶対に生まれないものがこの1年で生み出せましたし、「おじさんが青春してもいいんだよ」と言ってもらえたような……。

 誰も言ってないけどね。

米谷 ひと言も言ってない。

花澤 まるで言われたかのような(笑)、それくらい元気をもらいました。ありがとうございました!

一同 ありがとうございました!

juJoeとESP学園在校生。

juJoeとESP学園在校生。

公演情報

CD Release Party「超々juJoe」

2025年2月20日(木)東京都 CLUB PHASE
OPEN 18:00 / START 18:30
<出演者>
juJoe / Rhythmic Toy World / Large House Satisfaction

プロフィール

juJoe(ジュージョー)

前身バンド・QOOLANDでメジャーデビューを果たし、「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」に出演した経験のある平井拓郎(Vo, G)と菅秀昭(B)を中心に結成されたバンド。2019年に1万枚の無料サンプラーCDをタワーレコードなどで配布して話題を呼ぶ。2021年には4ヶ月連続シングルと1stアルバムをリリースし、米谷優馬(Dr)と花澤彰典(G)を迎え入れ4人体制となった。2023年に新体制初のシングル「玉砕 / 待っていた」を発表。2024年から2025年にかけてESP学園とのコラボレーションプロジェクトに参加し、2025年2月にはESP学園在校生とともに制作したシングル「supersonic」をリリースした。なお平井は2021年に中編小説「さよなら、バンドアパート」を執筆。同小説は後に映画化された。