“掛け合い”の遺伝子

NOLOV　キックはメンバーみんなの憧れだったし、本当に強い影響を受けてます。「Break3」（2003年発売のシングル「性コンティニュー」収録曲）を参考にして、俺たちも「FANTASTIC4」を作ったり。キックの構成の面白さやテーマの新鮮さ、そしてそれを成立させる技量は参考になります。ラップって「成功したい」「金」「ストリート」みたいなテーマが多いと思うんですけど、俺らはそういうタイプの人間ではないから、楽曲の切り口として参考にしづらくて。でも、キックはそうじゃないヒップホップを形にしていたので、かなり参考にしていますね。ただ、前に「マルシェ」（2002年1月発売のシングル）を参考にしようと分析したことがあるんですけど、なんでこの歌詞と構造になっているのか、法則性がわからなくて断念しました。

LITTLE　あの曲は……法則はないね（笑）。その場のノリで作ってるから、分析して作るのは難しいと思うよ。いろんなアクシデントやイレギュラーのうえで作った部分もあるし、作ろうと思って作るって部分を超えた曲だよね。だって、あのテーマで曲を作ろうなんてしょうもないでしょ（笑）。

BAOBAB MC　それ言っちゃうんですか（笑）。

LITTLE　自分で話して思い出した。一生懸命作った曲でもなかったなって（笑）。でもそんなに聴いてくれてるんだね。

NOLOV　やっぱりラップの掛け合いとかはすごく参考にしてます。

LITTLE　今は洋邦問わず、ラップを掛け合いで作るグループって多くはないじゃない？ 特に集団になると少ないから、それを今でもやってるのがジャバの面白い部分でもあるよね。

ROVIN　キックの「復活祭」（参照：「今日はいい日です」KICK THE CAN CREW、武道館で盟友たちと復活祭）はメンバー全員で行ったんですけど、あれはちょうど今回のアルバムの制作に入った時期で。今LITTLEさんがおっしゃってくれたみたいに「掛け合いのグループが少ないから、そこでオリジナリティを出してこうぜ！」って話してたんだけど、「復活祭」でキックもRHYMESTERもガンガン掛け合いやってて（笑）。

NOLOV　「バチバチの掛け合いやったら、今なら目立てるぞ！」と思ってたら……。

ROVIN　「一番のボスがやってるじゃん！」って（笑）。

LITTLE　MellowYellowもそうだし、FGは掛け合いのラップが好きだからね。それに、やっぱり「掛け合う」とか「全員で1曲になる」というのがラップグループの魅力なのかも知れない。ラッパーによっては、グループ曲であっても自分のバースは自分のもので、グループのものとは思わないという人もいるけど、俺ら（キック）はそういう感じじゃなかった。3人で掛け合わないで1バースずつ取った曲でも、それは当然だけどグループの曲。RHYMSTERもそうだよね。16小節ずつそれぞれでラップしても、1曲を通してグループとしての曲になる。

多様性を生み出す1つの存在になってほしい

NOLOV　余談的に聞きたいんですけど、「復活祭」にキックの3人で登場したとき、どういう気持になりましたか？

LITTLE　歓声がとにかくすごくて、そのパワーに圧倒されたのと同時に「オケが聴こえねー」って（笑）。

NOLOV　感傷に浸る間もなく（笑）。

LITTLE　余裕の表情をしてるけど、内心はビートを取るのに必死で（笑）。

BAOBAB MC　でも、モニタリングが聴こえないぐらいの歓声は浴びてみたいね。

NOLOV　最後に、LITTLEさんがこれからのジャバに期待することとか教えてもらってもいいですか？

LITTLE　俺がキックでデビューしてからもう20年ぐらい経つけど、未だに「ヒップホップ / ラップとはこういうもんだ」っていう意識の壁が世の中にはあると思う。そして「日本人がラップするなんて」というイメージと、「日本はほかの国に比べてUSナイズドされていない、ガラパゴス化している」というイメージも同時にあって。そんな状況の中で、俺は「日本には日本のヒップホップがあっていい」と思ってるし「そっちのほうがすごくない？」って思うんだよね。俺たちも俺たちで、進行形でオリジナルなモノを作って行きたいし、各自そういう動きができれば面白い。多様性を生み出す1つの存在として、その中にJABBAもいてくれるとうれしいし、そういう存在になってほしいな。がんばりましょう！

JABBA一同　ありがとうございます!!