ナタリー PowerPush - J
ソロ17年目に掲げる“FREEDOM”の意味
自由をつかむということは本当はものすごく怖いこと
──LUNA SEAの一員としてメジャーデビューしてから21年、ソロとしては16年経ちましたが、それだけのキャリアを持つJさんがなぜ今このタイミングで“FREEDOM”という言葉を掲げたんでしょうか?
自由って開放的であると同時に、実はものすごく残酷なものでもあるんじゃないかと思っていて。この言葉を選んだ1つの理由として、俺は自由に生きてきた人間だからこそ“FREEDOM”っていう言葉に1つ意味を付け加えなきゃいけないと思ってたんです。“FREEDOM”ってよく聞く言葉だけど、俺らは本当の意味をボヤーッとしかわかってないんじゃないかって思うんです。だから、俺は自由をつかむということは本当はものすごく怖いことでもあるんだということもメッセージしてる。実は最初、このタイトルを付けることも怖かったんですよ。
──強い言葉ですもんね、“FREEDOM”って。
で、ある意味軽い言葉でしょ?
──ああ、そうとも受け取れますよね。
だから、この言葉がどういうふうに伝わるんだろうなと思ってね。ただ、イメージとしてすごくポジティブなエネルギーを発している言葉なのは間違いないからね。
──Jさんが宣言してくれるから僕らも心強いし、ずっと第一線で戦ってきた人が言うからこその重みも感じます。
戦ってきたのかな……戦ったんだとは思うんですけど、自分自身ではその都度目の前にあるものをクリアして、自分の思い描いたものへ向かっていっただけなんですよね。だから実際はそこまでカッコいいものじゃなかったりもするんですけど。ただね、こんな俺でもやってこれたんだから、みんなも絶対にできるはずだってことは責任を持って言えます。要は自分の信じるものにどれだけ情熱をかけられるかの違いであって。自由って本当に人それぞれで、永遠を手に入れたい人もいれば、今この瞬間だけが自由なんだ、それさえあればいいっていう人もいる。いろんな形があるけど、ものすごく大切な、かけがえのないものだと思うんです。だから自分の信じるものに情熱を捧げていくことってカッコいいし、そんな思いを音楽として鳴らせたらなって思いながら俺はアルバムを作ってます。
カッコいい大人=いまだに夢を追い続けてる人
──Jさんみたいな人がいるから、大人も信用できるって思える若い世代も多いですよね。
逆に「こうはなりたくねえな」とも思われてるかもしれないですけど(笑)。でも最近はいろんなカッコいい大人が増えてますよね。そういう大人たちって、いまだに自分自身の夢を追い続けてる人たちだと思うんです。で、そういう大人から発せられるエネルギーがいろんな人をまだまだ変えていくんじゃないかな。その世代が作る音楽を聴いたりライブを観たりするのが、もしかしたら若い世代にとって一番の教科書かもしれないし。そういう意味では、俺自身もっと音楽の可能性を追求していきたいし、さらにもっと最高の奴らがバンバン世に出てきてほしいと思うし。それができるのがロックミュージックの楽しさだし、すごさだと思うんです。俺らの世代はたぶん下の世代に対して、「もっとやっちゃえよ! なんだっていいんだぜ?」みたいなことをずっと期待してるよ。
──Jさんから見て、下の世代のアーティストたちはおとなしいと感じますか?
おとなしい人たちは多い気はするよね。俺らが同い年くらいの頃は、もっとしっちゃかめっちゃかでしたから。だから遠慮するなよって感じるときはあります。今しかできないことって、やっぱりあるじゃないですか。で、それはたぶん俺らの世代も一緒。最前線を走ってる奴らが好き放題やることによって、どんどん面白い世の中になっていくと思っていて。もちろん無責任な意味じゃなくてね。
──それこそが“FREEDOM”ってことなんでしょうか。
まさにそうです。俺は不平とか不満とか文句とかでもいいし、いろんな意見があるべきだと思うんです。そういうピュアなエネルギーに触れることでいろんな衝動に駆られるわけで。音楽ってそういう“うねり”の繰り返しだと思うんです。で、うねりを起こした人間としては、鳴らさないといけない音があると思うし、それが使命なんじゃないかな。
自分自身が聴いてきた音楽に忠実であろう
──今回のアルバム2曲目「Love to Kill」の歌詞は、ソロデビューシングル「BURN OUT」で歌っていたことをそのまま2013年に持ってきたような世界観ですよね。Jさんは歌いたいこと、伝えたいことがソロデビューした1997年から、もっと言えば音楽活動を始めたときからずっと変わってないんでしょうか?
変わってないと思います。最初のソロアルバム「PYROMANIA」を出すときは、自分自身が聴いてきた音楽に忠実であろうと思っていたんです。忠実に俺を表現できなければ、ただの「人気バンドのいちメンバーが出したアルバム」になっちゃうので。そのスタンスは今も変わってないし、自分の思いに忠実なアルバムを作れなければ自分の存在意義ってないじゃんって思ってます。それくらい強い気持ちで音作りと向き合ってるんですよ。きっと俺の周りの、個人的に付き合ってるバンドの仲間はみんな一緒ですよ。
──「Love to Kill」の歌詞だけではなくソロ活動を通して言えることなんですけど、ソロとして最初のシングル「BURN OUT」、続くソロアルバム「PYROMANIA」、そして前作の「ON FIRE」と、Jさんの作品には“炎”をイメージさせるタイトルや歌詞が多いですね。
言葉遊びのように、火とか炎とかを連想させる言葉をわざと使ってるのもあります。ただ、そういった言葉から熱を連想してもらえると思うので、自分の伝えたい表現としてはピッタリなんですよ。
- ニューアルバム「FREEDOM No.9」 / 2013年10月23日発売 / cutting edge
- CD+Blu-ray 4515円 / CTCR-14808/B
- CD+Blu-ray 4515円 / CTCR-14808/B
- CD+DVD 3990円 / CTCR-14809/B
- CD 3150円 / CTCR-1481
- CD 3150円 / CTCR-14810
CD収録曲
- Go Ahead
- Love to Kill
- MARIA
- If you can see me
- Nightglow
- Everything
- Looser
- right away
- Sword
- Day Dream -the way of infinity-
- NEVER END
Blu-ray / DVD 収録内容
- 「NEVER END」Music Clip
- Documentary Film
J(じぇい)
1992年、LUNA SEAのベーシストとしてアルバム「IMAGE」でメジャーデビュー。1997年のバンド活動休止期間にシングル「BURN OUT」、アルバム「PYROMANIA」でソロデビューを果たす。2000年12月のバンド終幕以降、本格的なソロ活動を開始。LUNA SEA時代からソングライターとして知られる彼ならではの、パワフルでパンキッシュなロックサウンドが高い支持を得る。2003年にはソロとしては初となる日本武道館でのライブを敢行。また楽器メーカーESPから発売されているJオリジナルモデルのベース販売数は累計で5万本に達し、世界でもっとも売れているアーティストモデルのベースとなっているなど、現在も次世代のベーシストに影響を与え続けている。2008年にLUNA SEAが"REBOOT"(再結成)して以降は、ソロと並行して音楽活動を展開。2013年10月、通算9枚目のオリジナルフルアルバム「FREEDOM No.9」をリリースする。