ナタリー PowerPush - 泉 沙世子

映画「二流小説家」主題歌 テーマは“剥き出しの愛

泉 沙世子が3rdシングル「手紙」をリリースした。今作は上川隆也主演の映画「二流小説家 -シリアリスト-」の主題歌で、愛する人への“剥き出しの愛”を歌った壮大なバラード。心の奥深くに広がっていくような情感豊かな歌声も耳に残る1曲だ。

今回のインタビューでは、新曲の制作秘話はもちろん、今作の制作前後から起こっていたという彼女の内なる変化にも話題が波及。メジャーデビューから約半年で変わり始めた、泉 沙世子のクリエイティブなモードについても深く迫った。

取材・文 / 川倉由起子 インタビュー撮影 / 佐藤類

 
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歌詞のテーマは“剥き出しの愛”

──3rdシングル「手紙」は、映画「二流小説家 -シリアリスト-」の主題歌として書き下ろされた曲ということで。制作を始める前に、まずは映画を観られたのでしょうか?

泉 沙世子

そうですね。まだ音が完全に入ってない状態だったんですが、それでも、ドキドキしてどっちに転ぶかわからない危うさのようなものにどんどん引き込まれました。あと、死刑囚役の武田真治さんがすごく色っぽいなって。

──男性の色っぽさ、ですか?

はい。単純にハラハラドキドキするというより、人間くさいドロッとした部分もしっかり描かれてて、そこから生まれる危なっかしい感じが色っぽさにつながってるのかなって。武田さんがもともと持っておられる部分もあると思うし、それが役によってより引き出されてる感じがして、個人的にはそこがすごく印象的でした。

──主人公の小説家を演じた上川隆也さんはいかがでした?

普段テレビで拝見しているより、ちょっと抜けた感じのお芝居が新鮮でした。今まではジーッと何かを内に秘めたようなお芝居の印象が上川さんにはあったのですが、この映画では少しドタバタした表情が見られるというか。上川さんと武田さんの役がすごく対照的で、それぞれのキャラクターもより引き立ってる感じがしました。

──いざ楽曲制作に入るとき、映画の内容は意識しましたか?

あまりネタバレになることは言えないんですけど、私が映画を観て一番引っかかったのは“純粋な愛”の部分だったんです。この歌詞にも一見ちょっと怖かったり、狂気を感じるフレーズがあると思うんですが、そういうのももとをたどれば実はすごく純粋な愛だったりして。深く愛するがゆえに他人の声が耳に入らなかったり、一定の線を越えてしまったり……ってことはきっとあると思うんですけど、そんな姿こそが人間くさいといいますか。だから今回は“剥き出しの愛”をテーマに、人間のボコボコしたいびつな感じ、危うさを表現しようと思って書いていきました。

「引き裂くなら殺してしまおう」の真意

──今のお話を聞いていると、映画から曲のヒントになる着想を得て、それを膨らませて作っていったという感じなんですね。

はい。もちろん映画の主題歌ということも頭にはあるんですけど、そこから独立した私の世界観や心の奥にあるものが今回の歌詞には出ていると思います。でもある意味では映画にもすごく寄り添っているし、人それぞれの見る角度や状況によって感じ方は全然違うんじゃないかな。

──具体的な歌詞でいうと、まず出だしの「引き裂くなら殺してしまおう」からすごくギョッとしたんですよ。

あー(笑)。でも、こういうことってないですかねえ?

──……。

ないか(笑)。一歩間違えると「怖っ!」って思われちゃうんでこれは説明が難しいんですけど、例えば私の場合、他人と比べて「自分のここが変やなー」と思う差は、恋愛に出やすいのかなって思うんです。それは相手との1対1の閉鎖的な空間だから、自分の変な部分も膨らみやすい状況になるわけで、しかもそれは他人が見たら「わ、怖っ!」って思うことかもしれない。私の周りにも「怖い! それ引くわー」っていう恋愛をしてる子がゴロゴロいるので(笑)。

──ああ、それはなんかわかります。閉鎖的な空間で、より相手との距離を縮めたくなるから、どんどん素の自分が出ていっちゃう。

そうなんです。で、そういう1対1の相手しか見えていない中で、2人をつないでいるものを切られるとしたら、すごい困るじゃないですか? だから「それなら殺してしまおう」って(笑)。

──完全にその人しか見えない状態、相手が自分のすべてっていう極限のところまで来てたら確かにそう思うかも。

恋愛だとちょっと重いかもしれないけど、家族愛でもなんでもいい。何かを守りたくて本当に一生懸命なときって、少なからずそういう感情が起こると思うんですよ。「絶対にこの人を守りたい」「この人がいなくなったら私がいないも同然」みたいな。そういうイメージですかね。

ニューシングル「手紙」 / 2013年6月12日発売 / 1050円 / KING RECORDS / KICM-1450
ニューシングル「手紙」
収録曲
  1. 手紙
  2. Love you Darling
  3. 手紙(instrumental)
  4. Love you Darling(instrumental)

泉 沙世子

映画「二流小説家 -シリアリスト-」

2013年6月15日全国公開
監督:猪崎宣昭
出演:上川隆也 / 片瀬那奈 / 平山あや / 高橋惠子 / 小池里奈 / 伊武雅刀 / 武田真治 ほか
原作:「二流小説家」デイヴィッド・ゴードン / 青木千鶴訳(ハヤカワ文庫)
配給:東映

泉 沙世子(いずみさよこ)

1988年10月28日、大阪府豊中市生まれのシンガーソングライター。岡山県で育ち、小学生のときに歌手を志す。中学生時代よりオーディションを受け始め、高校卒業後に上京。地道な音楽活動を続け、2012年に開催されたキングレコード創業80周年記念オーディション「Dream Vocal Audition」でグランプリを受賞し、2012年11月にシングル「スクランブル」でメジャーデビューを果たした。2013年6月12日に3rdシングル「手紙」をリリース。表題曲の「手紙」は上川隆也主演映画「二流小説家 -シリアリスト-」の主題歌に採用された。