ナタリー PowerPush - 伊藤ふみお
ソロ本格始動! ミッドエイジの衝動を描く
歌いたいように歌えなくて、途中でくじけそうになった
──聴き手にとってこのアルバムは、「MIDAGEになってもRIOTできる」というメッセージにも聴こえてきます。
そうあってくれると素晴らしいですね。やっぱりさ、10代のときって30代さえ架空の世界っていうか。若くないなっていうリアリティは30代になって出てくると思うんだよ。それは40代もおんなじなんだけど、ワクワクするようなことってほんとはたくさんあるし、ちょっとしたキッカケだと思うんだよね。真剣に面白がるっていう。結局は人生を豊かなものにしたいっていう目標みたいなものがあって、僕はこのアルバムを聴いてくれた人が同じように思ってくれたら、そんなに素晴らしいことはないと思う。
──じゃあふみおさんも、今作をワクワクしながら作ることができていた?
やってましたよ。ワクワクを通り越してウンザリしそうになったり(笑)。
──ええっ?
愚痴じゃないんですけど(笑)、結構新しいチャレンジとかしたわけ。曲で言うと「In Silence of Christmas」とか。「声なきこえがつむぐ歌」とかも特にメロディが難しいんですよ。あとは平谷の作った「すべては静かに明日へ向かう」とかも。とにかく自分の中で真剣にチャレンジしてやってたんですけど、どうにも歌いたいように歌えなくて、途中でくじけそうになったくらい(苦笑)。レコーディングしながら、とにかく形にするぞって思ってやってました。
──じゃあ今は、挑戦していく気持ちで満ちている感じですか?
うん。伊藤ふみおとしては、まだ何か見つけたわけじゃないし、形にしてるわけじゃないから。例えば話は逸れますけど、去年俳優の仕事をして映画に出たりする機会があって、それもチャレンジだったし、最初は思ったようにできなかったし。でも今年に入ってからも何本か出て、徐々にできるようになってきてる。だからソロの楽曲にしても何にしても、チャレンジが許されるうちはとことんチャレンジしていい結果を残したいなって。今、まさにその真っ最中な感じ。
──俳優っていう表現方法には以前から興味があったんですか?
漠然と。普通の人が映画を観てて「出れたらいいなあ」って思うような、それぐらいのレベルですけど。小学校のときの学芸会くらいしかやったことなかったので(笑)。
──じゃあ、解散後にマルチアーティストを目指していた、というわけではなく……。
全然。2007年の12月に解散したでしょ。その後のことは何も決めてなくて、さあどうしようってときに、今の事務所の方から知人を介して連絡があって「俳優やりませんか」って言われたんです。そのときは「俳優って何だよ?」って思ったんですよ。でも、やったことないのにできないって思ってる自分って何なのかなって思いもあり、事務所の人たちもいい顔をしていたし、なんとなくやってみようと。そして2008年になってスカパラの話が来たんですけど、そのときも「のこのこ出てってどうするのかな、解散したばっかりなのに」って思ったし。でもそれも知人が背中を押してくれて。そんなこんなで今に至ってますから、不思議といえば不思議な感じ。
──いろんなことと通り過ぎずに向き合ってきたから今に至るんじゃないですか?
うん、そうなのかもしれないですけどね。どこに行くかわからないんですけど、良くなると信じてやってる(笑)。
KEMURIを風化させないことが大事だと思う
──もう、歌はずっと続けていくと決めてますか?
うん。やりたいですね。今回、打ち込みのリズムトラックを使ったりして、いろいろ自由なアルバムを作れたから、この気持ちを大事にして、自分の中のテーマだけしっかり決めてね、面白がりながら真剣にやり続けたいですね。
──では、俳優も経験していることが、歌い手の活動にフィードバックされるところってありますか?
うーん、まだライブをやってるわけじゃないからなんとも言えないですけど、多分、絶対両方にとっていいと思いますよ。やっぱりフィジカルって大切だと思うんですよね。あんまり偉そうなことは言えないですけど、演じることに関しても歌うことに関しても。撮影の現場で、こういうふうにこだわってるんだ、こういうふうに見えるんだって思うことが……時間は短いですけど、自分が出たシーンを見てると、ヒントになることもあるから。そういうことをライブとか、パッケージにするときにも生かせたらいいなって。
──今、ライブってお話も出てきましたけど、今回のライブは東京ではKEMURIが解散した日(12月9日)に行うんですね。
そう(笑)。所信表明のような。解散したバンドではあるんですけど、自分たちが長い間かけてやってきたバンドだし、いろんな意味で風化させないことが大事なんじゃないかと。
──それはうれしいですね。今作自体にも、やはりPMAが息づいてると思えました。
サウンド面と同じように、歌詞ももう一回仕切り直して考えたときに、中心になるのはやっぱりPMAだったっていうことですよね。今の自分に自然な形で聴こえてくるPMA。前向きになれるものって、どんどん変わっていくのが自然だと思うし、これからもそれを自分の中できちっと形にしていけたらいいなと思ってます。
初回盤CD収録曲
- Love is a giving thing
- あしたへ架かる虹
- One, Two & Go!
- Hey, friend! Start again!
- my funny little girl
- 声なきこえがつむぐ歌
- 心の鐘
- 晴れわたる空へ
- Every day is a Chance to Shine
- Light the second breath
- すべては静かに明日へ向かう
- In Silence of Christmas
- ドコカデダレカニ
- LOUD and PROUD!!
- EASY LIFE
- LIP UP FATTY
通常盤CD収録曲
- Love is a giving thing
- あしたへ架かる虹
- One, Two & Go!
- Hey, friend! Start again!
- my funny little girl
- 声なきこえがつむぐ歌
- 心の鐘
- 晴れわたる空へ
- Every day is a Chance to Shine
- Light the second breath
- すべては静かに明日へ向かう
- In Silence of Christmas
- ドコカデダレカニ
伊藤ふみお(いとうふみお)
1990年代後半より、ロックバンド・KEMURIの中心人物として国内スカパンクシーンを牽引。PMA(Positive Mental Attitude=肯定的精神姿勢)をスローガンに掲げ、海外公演も積極的に行うなど、多くのリスナーに強い存在感を示す。2007年12月のバンド解散後は俳優としても活動。2009年10月21日にソロアルバム「MIDAGE RIOT」をリリース。12月には東名阪ツアー「FUMIO ITO 2009 TOUR MIDAGE RIOT ~ミッドエイジの衝動~」を実施。