ナタリー PowerPush - 伊藤ふみお
ソロ本格始動! ミッドエイジの衝動を描く
伊藤ふみおのソロアルバム「MIDAGE RIOT」がリリースされた。KEMURI解散後初の音源となるこのアルバムには、プロデューサーのtatsu(LÄ-PPISCH)を始め、多くのゲストアーティストが参加。ポジティブなバイブレーションはそのままに、バンド時代とは一線を画すバラエティ豊かな楽曲群が収められている。
今回ナタリーでは、ソロアーティストとして本格的な活動を開始した伊藤ふみおを直撃。アルバム制作に至った経緯と作品に込めた思いを訊いた。
取材・文/高橋美穂 インタビュー撮影/中西求
本当に歌を辞めようと思ってた
──まず、タイトルが象徴的だと思うんですが……、ふみおさんが再び「MIDAGE RIOT」し始めた理由からお伺いしたいんですけど。
結構、単純明快で。2008年の3月に上田現ちゃんっていう友人が亡くなってね。そのときに、これはアルバムを作らないといけないと思って。それが、モードに突入した一番のきっかけ。やりたいと思ったらぱっとやればいいんだけど、それまでは何をやろうとかタイミングとかも考えて、延ばし延ばしになってて。でも、現ちゃん5つ上だけど、そんな歳が離れてない人がそうなっちゃうのを見て、のんびりしてる暇もないなと。思いついたらフレッシュな気持ちのままに作るっていう、シンプルな作業をやるべきなんじゃないかなって。
──そうだったんですね。以前、KEMURI解散前の2007年5月頃に、私が他の媒体でインタビューさせていただいたときは「今後は歌わないかもしれない」ともおっしゃってましたよね。
5月頃は本当に歌を辞めようと思ってたんだけど、解散に向かっていく中でいろんなことが自分の中であって、8月くらいには、これは歌を辞められないなっていう感じが漠然とあったんだよね。だから、“現ちゃんがきっかけ”って言うと悲しいというか、切羽詰まった感じがあるけど、そればかりではなくて、いろんなことが重なって、「やるべきだ」って納得できたのがそのタイミングだったのかなって。
──遺志を継いで、というと重い言い方になっちゃいますけど……。
そうですね……、もうちょっとやってみようと。
──そのご縁もあって、今作にはLÄ-PPISCHのtatsuさんが全面的に参加されてるんですか?
そのとき(=現さんが亡くなったとき)にも、がんばってやらなくちゃねって話はしてたんだけど、今回のプロデュースでかかわってもらうって話は別のところで決まったんです。
──なるほど。何か運命的なものを感じますね。
うーん、ちょっと不思議な。新しい出会いも今回のアルバムであったんですけど、一番の根っこには、LÄ-PPISCHっていう自分が好きでよく見に行ってたバンドのつながりがありますからね。「またLÄ-PPISCHか」って感じ(笑)。初めて観てから20年経っちゃったのか。それを振り返ると自分的にも感慨深いものがあるようにね、あの時代をリアルタイムで見てた人が「まだたっちゃん(=tatsu)やってるんだ」って思えば、それをきっかけにしてよみがえってくる思い出っていうのもあると思うんですよね。
伊藤ふみおらしさが欲しくて自分で曲を書いた
──さかのぼると、まずふみおさんの歌声をKEMURI解散後にCDで初めて聴けたのは、東京スカパラダイスオーケストラのアルバム「Perfect Future」の中の「Pride of Lions」にゲスト参加したときでしたよね。
あれは解散のあとに声を掛けられたんです。2008年の1月。それに、もう一回歌うって話をしたのも、彼らが最初だったんですよ。2007年のライジングサンで、スカパラのライブに乱入して「MONKEY MAN」を歌ったんですよね。そのステージ後にメンバーと飲んでたときに「また歌を続けることにした」って言ったんです。「そりゃ、そっちのほうがいいよ」って言われたりして。(スカパラ谷中敦の書いた)歌詞をもらったときにもグッときちゃって。感情過多にならないように歌おうと思ったくらい、タイムリーな内容でしたね。
──今回スカパラが作曲やアレンジで何曲かに参加してるのも、そのご縁ですか。
そうですね。このアルバムプロジェクトが始まったくらいのとき、2008年のライジングでもスカパラのステージに「Pride of Lions」で参加して。そんなこんなもあって、スカパラにはぜひかかわってもらいたいって話をして。ある意味門出ですからね。ソロとしての、バンド解散後一発目だから。
──いろんな方が作曲されてますけど、ご自身でも何曲か手掛けてらっしゃいますね。
そう。最初はね、バンド時代と同じように、作詞に集中しようと思ったんですよ。で、スカパラや、いろんな作家の人たちに発注させていただいて。レゲエやスカ、ロックステディを中心とした、今の気分のダンスミュージックを作ってほしいと。で、でき上がった曲はすごくよくて、レコーディングもして、非常に楽しみな仕上がりになって、歌詞も大枠付けて、いい感じだったんですよ。でも、何か良すぎちゃって、伊藤ふみおらしさがもうひとつ欲しいなって気持ちが出てきちゃって。それから自分で曲を作ったんですよね。ちょうど去年、矢沢永吉さんの作品にハマってよく聴いてたんだけど、矢沢さんがオリジナリティみたいなものについて「カッコ悪くても、自分の中から出てきたものは見てもらうほうがいいと思う」って言ってたんですよね。そんなこんなも手伝って、俺もやってみようって思えて。それからは自分から湧き出るがままに。中核はね、みんなにいい曲を書いてもらってるから、自分らしさを表現するような曲を肩ひじ張らないで書いていこうと思ったんですよね。それで今年に入ってから書き始めたんですけど。
──それで16曲というボリュームたっぷりな内容になったんですね。
いやぁ、16曲よく付き合ってくれたなって。レーベルには感謝してますね。そんなこんなでプロジェクトが止まってた時期もあったし。時間をかけていろんなものをやらせてもらったので。
初回盤CD収録曲
- Love is a giving thing
- あしたへ架かる虹
- One, Two & Go!
- Hey, friend! Start again!
- my funny little girl
- 声なきこえがつむぐ歌
- 心の鐘
- 晴れわたる空へ
- Every day is a Chance to Shine
- Light the second breath
- すべては静かに明日へ向かう
- In Silence of Christmas
- ドコカデダレカニ
- LOUD and PROUD!!
- EASY LIFE
- LIP UP FATTY
通常盤CD収録曲
- Love is a giving thing
- あしたへ架かる虹
- One, Two & Go!
- Hey, friend! Start again!
- my funny little girl
- 声なきこえがつむぐ歌
- 心の鐘
- 晴れわたる空へ
- Every day is a Chance to Shine
- Light the second breath
- すべては静かに明日へ向かう
- In Silence of Christmas
- ドコカデダレカニ
伊藤ふみお(いとうふみお)
1990年代後半より、ロックバンド・KEMURIの中心人物として国内スカパンクシーンを牽引。PMA(Positive Mental Attitude=肯定的精神姿勢)をスローガンに掲げ、海外公演も積極的に行うなど、多くのリスナーに強い存在感を示す。2007年12月のバンド解散後は俳優としても活動。2009年10月21日にソロアルバム「MIDAGE RIOT」をリリース。12月には東名阪ツアー「FUMIO ITO 2009 TOUR MIDAGE RIOT ~ミッドエイジの衝動~」を実施。