ナタリー PowerPush - 伊藤ふみお
ソロ本格始動! ミッドエイジの衝動を描く
自分とかけ離れたことをやるのも自然じゃないから
──バラエティに富んだ作曲家陣には、どうやって声をかけていったんですか?
スカパラはそんな感じでしょ。あと、KEMURIで一緒だった平谷庄至。彼の書く曲はメロディアスで、スカパンクにはメロディアスすぎるかなって思うくらいだったんですよね。彼のメロディは好きだからお願いして。あとレーベルサイドから推薦受けて、CUBISMO GRAFICOのチャーベくんとかね。ユアソン(YOUR SONG IS GOOD)のモーリスとか。初めて会って話して、提供してもらったんですよね。曲作りの段階で、レコーディングはこちらのミュージシャンでやるってのを前提で話してたので、みんなデモテープもそこまで作り込んでなかったし、のりしろが多いというか、ゆとりのある作曲をしてくれたので、すごくやりやすかったです。
──スカやロックステディをベースに、っていうのは念頭にあったんですか?
そうですね。スカ、ロックステディ、レゲエをベースにしたダンスミュージック、ぐらいな感じだったから。チャーベくんはああいうブレイクビーツで作ってきてくれたり、それなりにみんな考えてくれて。
──違うジャンルに振り切るのではなく、ふみおさんのベースにあるものを生かしたというか。
そう。ソロで“伊藤ふみお”になって、スカバンドをやるつもりはなかったんですよね。ただ、自分とかけ離れたことをやるのも自然じゃないから、中核をスカとかロックステディで作りたいっていうくらい、ですかね。そこでお願いした人に太い幹を作ってもらって、自分ではフォークソング調のものもあれば、アコースティックなものもあるっていう遊びの部分を作って。それをやるゆとりも作りたかったんですよね。
──しっかりスカパンクも入ってるのがうれしいですね、「Everyday is chance to shine」。
そう。ちょっと違うといえば、鍵盤が入って、歪みのギターを入れずにスカの裏のカッティングをアコースティックでやったりしてますけど。でも、リズムチェンジとかもスカパンクの王道な感じ。結構早口で。かなりテンポ落ちてるけど。
──でもライブで踊れると思いますよ!
そう? よかった(笑)。
敵は自分自身です
──歌詞についても、メッセージ性が強い楽曲が多いですよね。
そうですね。今回のアルバムは、特定の音楽ジャンルって意識ではやってないので、伊藤ふみお感をさらにナチュラルな形で出していきたいと思って。エンタテインメントだからノンフィクションってわけじゃないんですけど、半分くらいノンフィクションに近い歌詞を意識しましたね。伊藤ふみおはこういう人間、っていうのをわかりやすく歌詞として表現したかったので。
──「my funny little girl」ではお子さんのことを歌われてますけど、再び歌を歌う上で、お子さんの存在は大きかったんですか?
うん、あると思う。いろんな意味で背中を押してくれるし、モチベーションの源になってくれる。今、僕は43歳になったんだけど、43歳の伊藤ふみおを切り取ったときに、家族の存在はすごく大きなものになってると思う。
──プライベートもタブーなく見せていくというか。
うん。いろんな意味で封印しない方向でいきたいなと思ってる。
──そういう穏やかな気持ちもありつつ、アルバムタイトルに「MIDAGE RIOT」っていう攻撃的な言葉を持ってきた理由というのは?
なんていうんだろう……自分が「もう一回やるんだ」って思わせてくれたすごく強いものがあるんですよね。それは穏やかにニコニコした気持ちだけじゃない、ラブもあればヘイトもあれば、サイレンスもあれば音の洪水もあって、すべてをひっくるめた力、みたいなもので。“RIOT”って言葉には“暴動”という意味が強いけど、それよりも“衝動”っていう意味でつけたんですよ。
──RIOTを起こしたい敵というのは定まってるんですか?
いや、敵は自分自身ですよ。「これくらいでいいや」って思っちゃうような自分自身。やっぱりね、歳かもしれないけど(苦笑)「これくらいでいいかな」のスタンダードが年々楽なほうに寄りがちになって、とにかくやってみようって新しいことに挑戦する気持ちが弱くなるから。このアルバムが、どんなことも自分の中で真剣にやってみるきっかけになればいいなって。
──じゃあ今作はふみおさんのRIOTの第一歩ですね。
そうだね。一回辞めようと思ったこともあったし、この3年くらいは大きな意味のある時間だったと思うのね。それの集大成というか、ひとつ形になったって意味では、まさにそのとおりだと思います。
──外に敵がいるわけではなかったんですね。
まぁ、当然嫌いな奴もいるし(笑)、そういう奴に負けねえよっていう気持ちもあるけど、それよりも何よりも自分自身が大事なんじゃないかなって結局思うんです。
初回盤CD収録曲
- Love is a giving thing
- あしたへ架かる虹
- One, Two & Go!
- Hey, friend! Start again!
- my funny little girl
- 声なきこえがつむぐ歌
- 心の鐘
- 晴れわたる空へ
- Every day is a Chance to Shine
- Light the second breath
- すべては静かに明日へ向かう
- In Silence of Christmas
- ドコカデダレカニ
- LOUD and PROUD!!
- EASY LIFE
- LIP UP FATTY
通常盤CD収録曲
- Love is a giving thing
- あしたへ架かる虹
- One, Two & Go!
- Hey, friend! Start again!
- my funny little girl
- 声なきこえがつむぐ歌
- 心の鐘
- 晴れわたる空へ
- Every day is a Chance to Shine
- Light the second breath
- すべては静かに明日へ向かう
- In Silence of Christmas
- ドコカデダレカニ
伊藤ふみお(いとうふみお)
1990年代後半より、ロックバンド・KEMURIの中心人物として国内スカパンクシーンを牽引。PMA(Positive Mental Attitude=肯定的精神姿勢)をスローガンに掲げ、海外公演も積極的に行うなど、多くのリスナーに強い存在感を示す。2007年12月のバンド解散後は俳優としても活動。2009年10月21日にソロアルバム「MIDAGE RIOT」をリリース。12月には東名阪ツアー「FUMIO ITO 2009 TOUR MIDAGE RIOT ~ミッドエイジの衝動~」を実施。