ナタリー PowerPush - ももいろクローバー
ファン待望の初期楽曲集ついに登場 過去と現在をつなぐ「ラフスタイル」
5人の声が重なり合う複雑なハーモニー
──自分なりの表現はメンバーみんな身に付けていますよね。さらに5人の声が合わさったユニゾンの音色自体に個性がある。ユニゾンの音色の個性はジャニーズのグループにもよく感じるんですけど、合わさった声自体にブランド力があるというか。
佐藤 うんうん。それはすごく感じますね。今回、昔の曲をたくさん聴き返してみてみたら、そのブランド力がまだ弱いんです。それに比べて最近の音源は、それぞれの個性もしっかりしているし、ユニゾンでパンッと合わさったときのももクロならではの声というのができあがってきましたね。今回はコーラスもかなり複雑になっていて。
──レコーディング中にバラバラで聴いているときは、複雑すぎて完成形が読めなかったです。
佐藤 サビのコーラスは4声になっています。一番上は佐々木かな。その下のラインを高城(れに)と玉井(詩織)が歌って、一番下は有安(杏果)が。今までは本人たちでハモを録るときも「コーラス」に特化した役割というか、あえて個性をつぶすような録り方だったんだけど、今回は真ん中の百田を立てつつ5人のハーモニーがはっきり際立つようにしていて。5人の「ユニゾン」というより5人の「ハーモニー」がポイントになっています。
──音的には主旋律にぶつかりまくってますよね。
佐藤 高城&玉井のラインなんか、主旋律に常に2度でぶつかってるんです。いわゆるテンションコードをぶつけてるんで、不協和音なんですが4声をバランスよくミックスするとコードに複雑な色合いが出るっていう。高城は今まであんまりハモをやってもらうことはなかったんですけど、声質がすごく向いているんですよね。今回これだけうまくいったので、今後はまた幅が広がるかなと思います。
もっとファンタジーを突き進むべき
──その他の楽曲も、ミックスは全部新たにやり直してるんですよね。
佐藤 はい。「ツヨクツヨク」「words of the mind -brandnew journey-」「Believe」の3曲は原曲のアレンジャーさんに、そのままの味を活かしつつももクロ用に新たに作り直してもらってるんですよ。ほとんどそのままで2013年版にアップデートしてもらっています。
──収録曲の中で最もレアなのはおそらく「だいすき!!」だと思うんですけど、これはどういう曲なんですか?
宮井 これがまさに猫の曲作ってたときのものですよ(笑)。ニャーニャー言ってるでしょ?
──ああっ!(笑)
佐藤 アルバム制作用にいろいろデータを掘り起こしてたら出てきたんですよ。「なんだこの『だいすき!!』ってセッションファイルは」と。川上に聞いてみたら「ああ、あったねえ」って(笑)。
宮井 これは一切音源になってないからね。ライブでも数えるくらいしかやってない(笑)。
──「あの空へ向かって(Z ver.)」はいつ録られたものですか?
佐藤 中野(2011年4月10日「4.10中野サンプラザ大会 ももクロ春の一大事~眩しさの中に君がいた~」)の頃ですね。ほかは早見のパートを誰かに差し替える程度だったんですけど、「あの空」を試したときに、歌の成長がすごく感じられたので「あれ、これはみんな歌い直してみる?」って話になって。
──「あの空へ向かって」はライブのクライマックスに欠かせないアンセムで、ファンにとっては待望の正規音源化となりますけど、この完成度の曲が結成1年目ですでにあったという。
宮井 今こうやってざっと聴いてみると、いいアルバムだね(笑)。「あの空」はメンバーが歌詞も書いていて。よくこんな歌詞が書けたなあ。すごくまっすぐな歌だけど、ホントこういう子たちなんだよね。今歌っても今なりの機微があるから、曲も一緒に成長してる。
──絶対無理だと言われ続けた宮井さんたちが「じゃあやめましょう」と言っていれば、今のももクロはなかったわけで。可能性を信じて見守り続けてきた宮井さんにとっては感慨もひとしおですよね。
宮井 うん。ひと昔前まではもっとリスナーに寄り添った音楽が主流だったし、俺もそういうアーティストを担当してたけど、ももクロを始める直前にうちの中島愛ちゃんのライブを観てハッとしたんですね。完全にファンタジーじゃないですか。
──「キラッ☆ミ」ですからね。
宮井 それでいいと思ったんですよね。そっちのほうがリアリティがあるというか。そのファンタジーを川上なら「プロレス」って言うかもしれないけど、ももクロはもっともっとファンタジーを突き進むべきだと思いますね。ミッキーマウスみたいな存在になってくれたらうれしい(笑)。
佐藤 ももクロは変わり続けるからこそ変わらないというか。商売としては売れる音楽を作らなきゃいけないんだろうけど、メンバーはそういうことを考えず、もっと音楽の幅を広げてもらいたいですね。吸収が早い子たちなんで、これからもっと成長するんじゃないかと思います。
- インディーズベストアルバム「入口のない出口」 / 2013年6月5日発売 / SDR
- 初回限定盤A [CD+Blu-ray] / 3990円 / SDMC-0105B
- 初回限定盤B [CD+DVD] / 3500円 / SDMC-0105D
- 通常盤 [CD] / 2800円 / SDMC-0105
収録曲
- あの空へ向かって
- MILKY WAY
- ラフスタイル
- ももいろパンチ
- だいすき!!
- Dream Wave
- Hello…goodbye
- 気分はSuper Girl
- 最強パレパレード(ももクロver.)
- 未来へススメ!
- ツヨクツヨク
- words of the mind -brandnew journey-
- Believe
- 走れ!
- きみゆき
- ラフスタイル for ももいろクローバーZ
- あの空へ向かって(Z ver.)
ももいろクローバー
スターダストプロモーション所属タレント育成の場として、2008年5月17日に結成されたアイドルグループ。「週末ヒロイン」「いま、会えるアイドル」というキャッチフレーズのもと全国津々浦々でライブ活動を行い、2009年7月には1stシングル「ももいろパンチ」をリリース。この時期に百田夏菜子、早見あかり、佐々木彩夏、玉井詩織、有安杏果、高城れにの6人が揃う。同年11月に2ndシングル「未来へススメ!」を発表し、2010年5月にはシングル「行くぜっ!怪盗少女」でメジャーデビューを果たす。同年12月には初のホールワンマン「ももいろクリスマス in 日本青年館~脱皮:DAPPI~」を大成功に収めるも、2011年1月に早見あかりがグループを脱退することを発表。同年4月10日の東京・中野サンプラザ公演「4.10中野サンプラザ大会 ももクロ春の一大事~眩しさの中に君がいた~」が早見のラストステージとなり、ライブ終了直後に「ももいろクローバー」から「ももいろクローバーZ」へと改名した。