これじゃ絶対にダメだなと、周りの人たちのやる気や誠意を見て思った
──前回のインタビューでは、最初はお父さんの勧めで“シンガー養成ギプス状態”で歌うことを始めたと言ってましたよね(参照:井上実優「Boogie Back」インタビュー|音楽塾ヴォイス出身の19歳、メジャーデビュー)。ただ、それだけだと続かないじゃないですか。
はい。
──どこかのタイミングで、「自分は歌うんだ」と決意したわけですよね。
そうですね。確かに最初は父に勧められて、「唐津ジュニア音楽祭」に渋々出演しました。でもたまたまそこで音楽塾ヴォイス主宰者である西尾(芳彦)さんに見い出してもらい、すぐに入塾して……正直、自分の中では「今から習い事をするのかな、歌いたくないのに」という感じで。何が起きているのかわからない状態で基礎練習などを始めたので、最初の1年間くらいは真剣な気持ちじゃなかったと言うか、ただの習い事としてしか考えていませんでした。そこでは、周りの生徒とペアになって練習をしたりするのですが、まったく知らない人と歌を披露し合ったり、先生の前で毎週歌を披露したり、そういう経験を積んでいくうちに、周りのやる気が自分とは全然違うことに気付いて。「ただ親に言われたから来ています」なんて人は1人もいませんでした。特に私は、入った当時最年少だったので、大人の方もたくさんいらして。皆が本気でプロを目指している中で「いいのかな、こんな中途半端な気持ちで」「これじゃ絶対にダメだな」と思いはじめ、当時は学校で運動部に入っていたのですが、中学2年のときにやめて、そこからは歌一本に絞って、やっと決心がつきはじめましたね。
──歌うことが楽しくなり始めたのは?
楽しく……でも、場合によりますが、楽しく、そうですね……。
──今もなっていない?
いや、楽しいときもありますし、苦しいときもありますが、楽しいなと思えるようになったのは……自分から意識を変えてからですね。レッスンを受けはじめた頃は「どうして私ここに来て歌っているのだろう?」と思っていたのですが、楽しいと思うのも苦しいと思うのも自分次第ですし、中途半端な気持ちだと楽しいわけないですよね。真剣に取り組んで、できなかったことができるようになったときの達成感を感じるようになってから、楽しさがわかり始めたかなという気がしますね。
歌で自分を全部さらけ出すのが一番苦手だった
──歌って、出された課題をクリアして技術を磨いていくだけじゃダメなものだと思うんです。声と言葉で自分の中にあるものをさらけ出さなきゃいけないと言うか。
そうですよね。
──「あ、歌ってそういうものなのか!」って、どこかで気が付いたんじゃないかと思うんですけれども。
そうですね、音楽塾ヴォイスに通っていた最初の頃、ほかの生徒たちは、先生から与えられたことにさらに自分なりの何かをプラスして歌っていました。私は先生から「自分なりに表現してみて」と、急に言われるのがすごく苦手で、泣きそうになっていて。羞恥心を捨てて自分の中にあるものをさらけ出すことが本当に苦手でした。でも、その経験が一番自分を成長させてくれたのだなと今は思います。
──「自分はそれをやらなきゃいけないのか」っていうことを理解してから、「これなら人前で歌っていいんじゃないかな」と思えるようになるまで、けっこうかかりました?
4、5年はかかりましたね。そう思えるようになったのはヴォイスを卒業する直前でした。普段から「私を見て!」と自分をさらけ出すことができる人は1人でどんどんとやっていけると思いますが、私は、放っておくとすぐ内にこもってしまうので(笑)。先生はそれを見越して、わざと「自分なりに表現してみて」という課題を与えるのですよね。人一倍そういう課題を出されるので、つらかったですけど、今となってはそれがよかったと思っています。
──今後の予定とか、この先のビジョンについても教えていただけますか。
来年には1stアルバムをリリースするのが目標ですね。まだ経験が少ないので、ライブをたくさんやっていこうと思っています。
──特にこれを早くやってみたい、というのはあります?
今からやらなくてはいけないことは、本当にたくさんありますが、自分の完全なオリジナル曲を作る、歌詞も曲も1人で書く、ということを目標にしています。アルバムには1曲でも入れられたらいいなと思っていますね。それから、全編英語詞の曲も制作したいなと思っています。あと、そうですね……やはり20歳になる年なので、大人になりたい(笑)。漠然としてますけど、そういう目標は、自分の中ではありますね。
- 井上実優「Shake up EP」
- 2017年8月23日発売 / ビクターレコーズ
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初回限定盤 [CD+DVD]
1944円 / VIZL-1224 -
通常盤 [CD]
1296円 / VICL-64837 - CD収録曲
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- Shake up
- Robin
- Sweet Love
- Boogie Back(kensuke ushio REMIX)
- DVD収録内容
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Slave of Love TOUR 2017 at Shibuya WWW
- 「Shake up」Music Video
- 「Shake up EP - Behind the Scenes -」
- 井上実優(イノウエミユ)
- 1997年生まれ、福岡県出身の女性シンガー。小学校6年生のときに出場した音楽コンテスト「唐津ジュニア音楽祭」をきっかけに、音楽塾ヴォイス主宰の西尾芳彦に出会う。中学生の頃から作詞作曲と歌唱の研鑽を積み、高校入学を機に本格的に曲作りをスタート。2016年春に上京し、7月には東京・日本武道館で行われたライブイベント「スカパー! Presents『FULL CHORUS ~音楽は、フルコーラス~』 in 日本武道館」に出演し、ステージデビューを果たす。2017年4月にシングル「Boogie Back」でビクターエンタテインメント内のレーベル・ビクターレコーズよりメジャーデビュー。8月には新作CD「Shake up EP」をリリースする。