曲ごとに違うキャラクターと出会えるのがすごく楽しい

──デビューシングル収録の3曲のうち「Boogie Back」「Slave」の作詞クレジットは、井上さんと三輪コウダイさんの共作名義です。作詞についてはいつ頃から？

中学からなんとなく始めて、高校入学と同時に作詞作曲のレッスンを受け始めてはいましたが、本格的に自分で作り始めたのはまだ最近のことですね。書いては直されを繰り返していたら、徐々に形になってきたというか。最初の頃は今回のデビューシングルのような歌を書くなんて夢にも思っていませんでした。というか、まず私の作詞力が話にならなくて（笑）。

──そうなんだ？（笑）

性格の固さがもろに出てしまい、固い言葉しか思いつかなくて。上司へのメールか？みたいな（笑）。漢字2文字の熟語が多過ぎて「言葉のチョイスが古過ぎる……」と呆れられて。「お前は本当に女子高生なのか？」とか言われて。

──それが19歳でこのデビューシングルにたどり着くんだから、お話を聞いているだけでしみじみしますよ（笑）。

そうですよねえ（笑）。音楽があったからこそ、人としてもどうにか成長できたなと思います。もし音楽に出会っていなかったらと思うと不安になりますね。例えば学校でみんなが人並みにこなせることも、たぶん1つもできなかったと思うし、もしかしたらグレていたかもしれない。内気の極みなクセして頑固なうえに、ルールに従うのが嫌いな性格だったので。おまけに不器用なので、高校に入ってからはずっと音楽に没頭し過ぎてしまって、親がすごく心配して。

──英才教育していたくせに（笑）。

「明日から金髪に染めて学校行け！」とか煽られて。妙な喧嘩になったりしていましたね（笑）。

──「Boogie Back」と「Slave」の作詞についてはどういったプロセスで進めていきましたか？

三輪さんや西尾さん（作曲、プロデュースを担当）から先に短い曲のヒントのようなデモが送られてきて、そこから曲の匂いを嗅ぎ取って、私なりに言葉を乗せてデータで返すというやり取りを重ねていきました。「Boogie Back」は最初に西尾さんから曲のメロディが送られてきましたね。

──「Slave」については？

短いサビの部分を聴いて、すぐに“Slave”という言葉が浮かんで、そこから歌詞を広げていきました。

──「Boogie Back」は80'sやユーロビートのエッセンスを持つダンサブルなナンバーで、「Slave」はまさしくアギレラやアリアナに通じるR&B的なパンチ力とビッチ感がありますね。自分の中のソウルミュージックへの素養については？

自分が好きなアーティストに気付いて何年も経っていないので、正直今も学んでいる真っ最中ですね。最近はアレサ・フランクリンといったルーツ系やブルーノ・マーズなんかを聴いています。曲ごとに違うキャラクターと出会えるのがすごく楽しくて、いろんなアーティストを聴いていても違和感といったものもまったく感じないんです。

武道館が1stステージ

──そして「I will be your love」は、昨年7月に東京・日本武道館で開催されたライブイベント「スカパー！ Presents『FULL CHORUS ～音楽は、フルコーラス～』 in 日本武道館」で歌った曲ですね。このイベントに抜擢されたことから、なんと武道館が人生初のステージとなったわけですが。

初めて告げられたときはからかわれているのかと思いましたね。

──たぶんお父さんにも報告しましたよねえ？

「はぁっ!?」て驚いて、爆笑して、徐々に心配されました（笑）。

──まあそうでしょうねえ。

親が一番緊張していたと思います。私は私でステージに立ったら絶対に失神すると思っていましたから。誰にでも1stステージがあって、私にとってはそれがたまたま武道館だったわけですが、武道館であろうが別の場所であろうが失神すると思っていました。でも倒れずに歌えた。それだけはいまだに「私、よくやった！」と自分を褒めてやれますね（笑）。今までの積み重ねがあったからだと思っています。

──ステージからお客さんの顔は目に入りましたか？

あそこまで広いと細かく見えないものですね。それに気付いたらすごく気持ちよく歌えました。途中から「歌える！」という確信が持てたんです。そこからはもう「聴けー！」って感じで歌いましたね（笑）。

──大舞台に向いているのかもしれない（笑）。

そうかも（笑）。やった！

私の声を通して、多面性を楽しんでもらえたら

──今後の抱負について聞かせていただけますか？

このデビューシングルもそうですが、1曲ごとに異なる人格を持った主人公がいて、自分なりにそのキャラクターになりきって歌うようにしています。私の声を通して、そんな多面性を楽しんでもらえたらうれしいですね。いつかは素の私を乗せた歌も歌うかもしれないけど、今はイメージが固定されるよりも、「こんな曲もあるんだ？」「こんなふうにも歌えるのか？」と違う曲を歌うたびに新たな魅力を感じてもらえたら、というのが理想です。あとは「ハンパな覚悟で出てきたんじゃないぞ！」ということが伝わるようにがんばりたいですね（笑）。

──性格もポジティブになってここまで成長してこられたように、音楽があればいろいろなことが変わるということを、これからさらに身をもって証明していけるとよいですね。

はい。歌を歌うといつも周囲の人から「いつものあんたとは別人だね」と言われるので。今の私には音楽の力を信じるほかにないと思っています。そして私が好きなアーティストからたくさんの音楽を受け取ったように、私の歌を1人でも多くの方に聴いてもらって、早くなんらかのバトンを渡せるようになりたいです。あとは両親に何か返したい。よく大人になったら親を旅行に連れて行ったりするじゃないですか？ 私はそれを早々にしたくて（笑）。

──自分が親ならこのインタビューを読んで泣きますわ。

あはは（笑）。心配や迷惑をかけた分、早く返したいです。

──そしていつかは名実共に武道館へ凱旋ですね。

はい！ 早く自分の力でまたあの場所に戻りたいと思います。