ナタリー PowerPush - 井上ジョー
力強い一歩を示す「風のごとく」 完全セルフ監修の制作プロセスを追う
2007年、颯爽とシーンに現れ、作品を発表するたびたぐいまれなポップセンスを発揮してきた井上ジョー。今回、デビュー以来最長のインターバルを経て送りだす5thシングル「風のごとく」は、タイトルどおり疾走感と力強さにあふれたロックチューンだ。この曲が生まれるには、ライブから得た新たな気持ちが必要不可欠だったと彼は語る。
また、井上ジョー最大の武器は、作詞、作曲、全楽器演奏、アレンジ、プロデュース、エンジニアリングをすべて自分でこなすマルチな才能。ナタリーではその楽曲制作の過程を細かく追及し、知られざる彼の脳内に迫るべくインタビューを実施した。
取材・文/鳴田麻未 撮影/中西求
ライブをやってなかったら今回のシングルは書けなかった
──今回のシングルは4thシングル「GO★」から約1年ぶりのリリースとなりますが、この間は何をされていたんですか?
前作から時間が空いたのは、この1年間でレベルアップするためにライブの場数を踏んでいこうっていうことになったからです。それまでずっと曲制作のみに集中していて、ライブはあまりやってこなかったので。
──そのライブ活動期間で何か得るものはありましたか?
ほんとに新たな発見ばっかりでした。イベントに参加すると、周りは「ライブで育ってきたぜ」っていう人たちばかりだけど、僕はレベル1からのスタートで。そういう中でライブをするのは緊張もしますし、その緊張とどう戦っていこうかな、目の前のお客さんにどうやったら曲が伝わるのかな、どうしたら井上ジョーに興味持ってくれるだろうっていろいろ考えさせられました。この経験から曲の歌い方や詞の書き方への意識もすごく変わりましたね。
──ライブで吸収したものを音源制作にフィードバックしていったということですか。
そうです。回数を重ねるごとに喉も強くなって体力もつき、何より自分の限界を超えることができるようになったんですよね。例えば、今までここは出ないだろうなって思ってた声域も、ライブのステージではやるっきゃないよねってやってみたら、意外と出たりして。そういう、ライブで得た経験が作品にも影響してると思います。ライブをやってなかったら今回のシングルは書けなかったでしょうし、書こうと思わなかったでしょうね。
ロックが好きな自分を前面に押し出していきたい
──「風のごとく」は今までの曲の中で一番疾走感があって、どこか吹っ切れた印象を受けました。この曲はすんなり書けた曲でした? それとも難産だった?
わりとすんなりいったと思います。まずテーマとして男らしい曲、力強い曲をちょうど書きたいなと思ってたんですね。そんなとき「よりぬき銀魂さん」のオープニングテーマの話をスタッフからもらって、それがまさしく「男らしい曲」ってオーダーだったので、自分が書きたいものと合致して問題なく書けてしまいましたね。
──なぜ力強い曲を書きたいと思っていたんですか?
1stアルバムは、自分がいろんな音楽に影響を受けてるってことを表現したアルバムだったんですけど、逆に言うと統一性がない作品というか、バラエティには富んでいるけれども一言では表せないようなものでもあったので。で、今回はやはりライブですね。ライブをやったことによって、ロックが好きな自分っていう根本の部分を前面に押し出していきたいなと思って、「風のごとく」という力強い曲ができました。
──じゃあ今回は作る時点からライブで演奏することを意識していた?
してました。ただこの曲はライブだとすごく楽しいだろうけど、かなり気合を入れないとすぐ演奏がグラついちゃうと思うんですよね。頭から終わりまで嵐のように駆け抜ける曲だから、それなりの強い気力が必要だろうなぁ。すべてのパートが忙しいんで、きっとバンド全員汗だくになりますね(笑)。
井上ジョー(いのうえじょー)
1985年生まれ、アメリカ・ロサンゼルス出身。ソングライティングに加え、楽器やアレンジなどすべて自ら手掛がけるマルチアーティスト。日本人の両親のもとで、日本のポップカルチャーとアメリカの音楽シーンに触れて多感な時期を過ごす。学生時代にバンドやマーチングバンドなどを経験した後、オリジナル曲の制作を開始。2006年に初の日本長期滞在を経験したことを機に、日米を往復しながらの音楽活動を展開する。2007年9月に1st EP「IN A WAY」をリリース。2008年にはシングル「CLOSER」がアニメ「NARUTO-ナルト-疾風伝」の主題歌に起用され話題に。2009年4月に1stフルアルバム「ME! ME! ME!」をリリースする。カラフルで新感覚のミクスチャーサウンドがコアな音楽ファンからも評価されている。