Android / iOS向け恋愛リズムアドベンチャーゲーム「アイ★チュウ」発のミニアルバム「アイ★チュウ ～シャッフルユニットミニアルバム～」がリリースされた。

今作はゲーム内で実施された登場キャラクター総選挙「I★Chu Award ～2016～」の結果をもとに誕生したシャッフルユニット5組による楽曲で構成。全楽曲の歌詞を「けいおん！」シリーズや「おジャ魔女どれみ」シリーズの劇中曲などを手がけてきた大森祥子が書き下ろした。

音楽ナタリーでは、 人気キャラクターの新たな魅力が堪能できる新作のリリースを記念して特集を企画。「アイ★チュウ」の伊藤舞ディレクターと大森にインタビューを行った。

取材・文 / 熊瀬哲子

村瀬歩さんの歌声を聴いて確信した心ちゃん人気

──ミニアルバム、とても楽しく聴かせていただきました。「この子がこんな歌い方をするんだ」とキャラクターの新たな一面も見せてもらいましたし、それぞれの魅力が掘り下げられているなと感じました。フルバージョンを聴いたファンの方々の反応が楽しみです（取材は6月初旬に実施）。

伊藤舞　衝撃を受ける部分もありますよね。今回のシャッフルユニットは去年の7月に行った「キャラクター総選挙」の結果をもとに組んだんですが、既存のユニットのメンバーをバラバラに分けて新しいユニットを作ったので、もっとユーザーの方に目新しさを感じてもらえたらと思い、作詞の大森祥子さんをはじめ新たなクリエイターさんに参加していただきました。

──大森さんは「けいおん！」「おジャ魔女どれみ」などのアニメの楽曲の作詞を担当されていますし、作曲家の方々も「お嫁サンバ」「オラはにんきもの」の小杉保夫さんや、数多くのアニメソングを手がけてこられた大久保薫さんら、豪華な顔ぶれがそろいました。大森さんは今回作詞のオファーがあったときは、どう感じられましたか？

大森祥子　申し訳ないんですが、最初は「アイ★チュウ」というコンテンツを知らなかったんです。そこからキャラクターについて勉強させていただいて。これまでもまったくなかったわけじゃないんですが、女の子目線の歌詞を書く機会が多かったので、今回男の子目線の歌詞をたくさん書けたのがうれしかったです。

──大森さんは以前Twitterで「キャラソンを書いているときは自分が“その子”になる」とお話されていましたが（参照：大森祥子‏ (@shokooomori) | Twitter）、男性キャラの歌詞を書くときはそのあたりの意識も変わってくるのでしょうか？

大森　男性目線の詞を書くときも自分が主人公の気持ちになるのが一番だと思うんですけど、自分は女性で、受け手になるリスナー側の気持ちもわかるので、「こんなことを言ってもらえたらうれしいな」「こういうことを言ってくれる男の子がいたらいいな」という思いも混ざってますね。今回はシャッフルユニットという企画ものだったので、お祭り的な感じで、楽しい歌を作ろうと思いながら書かせていただきました。

これを心ちゃん以外のメンバーが歌うんだ……！

──今回の5つのユニットには「Fancy」「Sexual」「Strange」「Luxury」「Wild」とそれぞれキーワードが用意されて、楽曲のテイストもバラエティに富んでいます。

伊藤　各ユニットには、総選挙で1位から5位に選ばれたキャラクターが1人ずつリーダーとして参加していて、それぞれのキャラに合ったテーマを付けています。1位の華房心ちゃんがリーダーのユニット・TOYBOXは、心ちゃんがとにかくかわいいキャラクターなので、「Fancy」というテーマでその魅力を前面に押し出しました。

──総選挙で1位の心ちゃんは43万4084票、2位の御剣晃は43万3156票を獲得していて、票数としては僅差ですけど、男性アイドルものの作品で“男の娘”が一番人気って珍しいなと思いました。これほど心ちゃんの人気が出ることは予想されていたんですか？

伊藤　個性の強いとがったキャラクターなので、きっとある程度の人気は出るだろうと想像していたんですが、確信したのは心ちゃん役の村瀬歩さんの歌を聴いたときですね。ボイス収録のときも「これはすごい」と圧倒されていたんですが、初めての楽曲のレコーディングのときに「歌うときもこの高さで表現できるのか」と驚きが隠せなくて。ビジュアルとボイスがうまくマッチングしているところも、ユーザーさんが心ちゃんを大好きになってくれた要因の1つなのかなと思います。

──そんな心ちゃんがフィーチャーされたTOYBOXの楽曲「W・O・N・D・E・R・L・A・N・D」も、村瀬さんの才能に驚かされる1曲だなと思いました。

伊藤　改めてすごいなと思いますよね（笑）。TOYBOXは心ちゃんを中心としたユニットなので、楽曲も男女混合編成のような形で展開できるものをお願いしていました。シチュエーションとしては、おもちゃの国で楽しく騒いでるイメージです。

大森　“男の娘”の心ちゃんが中心のかわいいユニットなんですけど、かわいい世界観の中でもほかの子たちは“男の子”なんですよね。なので歌詞に関して言うと、例えば「パールのリュバン」のリュバンはリボンのことなんですが、「男の子がそのままリボンって歌うのはどうだろう？」と思って、フランス語のリュバンにしてみたり。かわいさを全面に出しつつ、ほかの子にも合わせた詞を考えていきました。

伊藤　上がってきた曲と歌詞を確認して、もうかわいすぎて、「これを心ちゃん以外のメンバーが歌うんだ……！」と驚きました（笑）。ふわふわした女の子っぽい世界観を、男の娘と男の子5人が一緒に歌うというのも目新しさを感じていただけるんじゃないかなと思います。

セクシーを極めた「FIX ME」

──2曲目は総選挙2位の御剣晃をリーダーに従えた、QAによる「FIX ME」です。

伊藤　御剣晃は大人っぽい見た目からもセクシーさが強調されているキャラクターなので、QAのキーワードも「Sexual」に決めました。

大森　「FIX ME」は、伊藤さんから「今までの『アイ★チュウ』楽曲の中で一番のセクシーを極めてほしい」って言われたんです。

伊藤　これまでにもセクシーな楽曲ってあったんですけど、王道的なものが多かったので、もっとねっとりしたものが欲しいなと思いまして（笑）。

大森　今までのセクシーを越えなくちゃいけないとなると、「恥ずかしいとか言ってられないぞ！」と思って（笑）。私も思い切り書かせていただきました。

──歌い出しが「ジッパーを下げたい キミのドレスの」ですもんね。

伊藤　お願いしておきながら、びっくりしました（笑）。

大森　ふふふ（笑）。ちなみに、最後のサビの「初めてなんだ こんな気持ちは だからキミを教えてよ」のところは、最初は1番のサビ（「一番奥 熱くてやわらかい場所のキミを教えてよ」）の繰り返しにしようと思ってたんです。でも歌っていることがそれだけだと、ただ誘ってるだけの軽い人になっちゃうなと思って。そうじゃなくって、「君のことが本当に好きなんだ」っていう気持ちが伝わる言葉があったほうがいいと思って、今の歌詞にしたんです。

伊藤　そこの部分でこの曲の主人公の純粋さや、人間味を感じますよね。

大森　でもちょっと迷ったんですよ。晃とかがこういうことを言ってもいいのかなって。

伊藤　ああ見えて、晃はもともと純粋な子なんですよ。

大森　そう聞いて安心しました。晃のことを考えると本当は「もっとクールなままで終わったほうがいいのかな？」とかいろいろ考えたんですけど、ここの歌詞でその純粋さを感じてもらえたらいいですね。

──QAの声優さんは晃役の豊永利行さんをはじめ、歌唱力の高い方が集まっている印象でした。

伊藤　そうですね、それは偶然です（笑）。星夜はノアと仲がいいから同じユニットにしようとか、このキャラが「Sexual」のユニットに居たら新しい一面が見せられるかなとか考えていったら、なんだかすごい人たちが集まってしまったなと（笑）。

──そのおかげもあってか、この楽曲の魅力が最大限に表現されていると感じます。

伊藤　皆さん楽曲の意図を汲み取ってセクシーに歌い上げてくれて、声優さんってすごいなと実感しました。

──最後に聞こえてくる息遣いも色っぽいですね。

伊藤　あれは豊永さんのアドリブですね。テーマをちゃんと理解されて、晃がユニットのリーダーであるということも意識されてのアプローチだと思うので、そういうことをしっかり考えてやってくださるのは本当にありがたいことだなと思います。

大森　晃に引きずられて（同じユニット・F∞Fで活動する）星夜もセクシーになってるのがいいですよね。

伊藤　星夜がソロで歌っている、1番の「......突き抜けようぜ!?」の部分も仮歌では今みたいな歌い方ではなかったので、（星夜役の）KENNさんも本当に素晴らしい表現をしてくださったなと思います。晃は大人びたキャラクターなので色っぽさを想像しやすいと思うんですけど、キャラによってはセクシーなイメージが付いていないので、今回の楽曲でどう表現されているか、ぜひ聞いて確かめていただきたいです。