音楽ナタリー Power Push - i☆Ris

そして武道館アーティストになった

茜屋日海夏インタビュー

ほかの誰かになりたかった

──なぜ「アニソン・ヴォーカルオーディション」を受けようと?

実は別のコンテストの情報を検索してたら「アニソン・ヴォーカルオーディション」の広告が出てきたのがきっかけで(笑)。で「応募するだけならタダだし」ってことで履歴書を送ったら書類審査が通っちゃいまして。親も「じゃあ記念に受けてくれば」って言ってくれたので面接を受けに行ったって感じだったんです。

──絶対受かってやる!ってテンションではなかった?

茜屋日海夏

今思うとすごく失礼な話なんですけど、実は(笑)。もちろんアニメは大好きなんですけど、当時はお芝居もできて、歌も歌える柴咲コウさんみたいな人に憧れてましたし。だからオーディションに対しても「これに受かったら歌えるのかー」って感じで。あと自分の声にコンプレックスがあったんですけど、ある人から「その個性的な声を生かせる声優っていう職業があるよ」って言われたこともあって「声優も面白そうだなあ」とも思っていて。でもやっぱり「たぶん受からないだろうけど、受けるだけならいいよねー」という気持ちではありました。

──それがいくつのとき?

17歳ですね。

──実は前のめりで応募したわけではいない17歳の茜屋さん的には、今の姿って想像できました? 「プリパラ」みたいな人気アニメに出演し、武道館のステージに立ち、さらに最近は舞台役者としても活動している。

まったく。もし当時の私に今の私の姿を説明しても信じてくれないでしょうね(笑)。昔から目立ちたがりで、芸能界に入りたくて夢は膨らんでたけど、心のどこかにはいつも自信のない自分がいたりしましたから。

──自信のない自分?

今もそうなんですけど、基本的に「私はダメなんだからがんばらなきゃ」っていうところから出発するんです。これはたぶんお母さんの影響なんですけど、ホントに私のことをホメてくれない人なんですよ(笑)。部活でバレーボールをやってたときも、チームが優勝しても「ほかの子はちゃんとできてたのに、あんたのこのプレイがダメだった」ってすぐに言うんです。今もさすがに大舞台に立ったときには「感動したよ」って言ってくれるんですけど、普段のライブを観たり、ラジオを聴いたりしたときは「ここはこうしたほうがよかったんじゃない?」って連絡してきますし。

──それでも芸能界を志望したきっかけって?

3歳くらいの頃、ミュージカルのビデオがすごい好きで。今思い返すと、それをずっと観ながら「私もステージに立ちたい」「人の前に出て、みんなを笑わせたり感動させたりしたい」って漠然と思ってた気がします。それからずっと憧れていて、中1の進路調査のときには志望校の欄に「日出高校」って書いたりしてました(笑)。

──日出って目黒にある芸能活動に寛容な高校ですよね。

秋田に住んでたのに、突然「東京の高校に行く!」って言い出して親と大ゲンカになって(笑)。でもそこまでお芝居をしたかったのも親の影響なのかもしれないですね。自分に自信がないから「ほかの誰かになりたい」って思ってたのかなあって。

今の私はハッピーガール

──少し話が前後するんですけど、3歳で芸能の世界に憧れて、オーディションに受かったのが17歳。失礼ながらけっこう時間が……。

ホンットに長かったです。秋田にも芸能系の養成所はあるんですけど数は少ないし、何よりお金がかかるから当時の私には現実的な選択ではなかったし。あと親からは「勉強しろ」って口を酸っぱくして言われてたし。でも夢は捨てられないし、女優や歌手になることしか頭になかったから、ずっともどかしかったです。

──じゃあオーディションに受かったときはうれしかった?

この世界での一歩を踏み出せたことには「よっしゃ!」ってなりましたけど、正直「あー、ソロじゃないのか」とは思ってました。秋田にいた頃、友達に「私、アイドルには向いてないと思うんだよね」って言ってましたし(笑)。

──憧れの世界に入れはしたけど向いてなさそうな仕事が回ってきた。もどかしさは続きますねえ(笑)。

i☆Risに入って1年くらいは「このままグループで活動しててお芝居できるようになるのかな?」って悩んだし、シングルを定期的に出せたり、ライブをやれたりするのはスタッフの方のおかげであって、私の実力ではないって感じていたので、ホントにもどかしかったです。

──何がきっかけで解消できました?

茜屋日海夏

「プリパラ」にメンバー全員で出られることになったのと、去年1stツアーで地方を回れたことですね。デビューした頃からステージに立つことはホントに楽しかったんですけど、ツアーを通じてたくさんのファンの方に会ったことで自分たちを認めてもらえた気がしたんです。

──その頃には自信のない茜屋さんもいなくなった?

いや、まだまだ全然ネガティブでした。ほかのアイドルさんと一緒になるイベントで、そのアイドルさんが下積み経験のある人たちだったりすると「いきなりデビューしちゃった私は努力が足りないんじゃないか」って気になってみたり。で、そういう気持ちをなんか上手に発散できなくて家に帰っては壁を殴ってました(笑)。

──溜め込みましたねえ、ストレス(笑)。

ネガティブを解消できたのは、ここ1、2年くらい。いろんな劇団さんの舞台に呼んでもらえてからですね。お芝居という夢が叶ったことで考え方がガラッと変わって、物事をポジティブに捉えられるようになって。最近ずっと「ハッピーガール」って言ってるんですけど、それも本当に本心から出てきた言葉で。お芝居をしているときだけじゃなくて、例えば「プリパラ」のイベントに、ちっちゃい子がいっぱい集まってくれるのを見たりしているときも本当に幸せなんですよ。

──今「プリパラ」を熱心に観てる子って、きっとミュージカルが大好きだった3歳の茜屋さんと同じ気持ちのはずですもんね。

そうなんです! 「らぁらちゃん(茜屋が「プリパラ」で演じるキャラクター・真中らぁら)みたいなアイドルになりたい」って言ってくれてるのを見るとホントにうれしくなっちゃって。あるイベントで直接言われて泣いちゃったこともあります。

武道館からまた「起」を始めたい

──茜屋さんはなんでハッピーガールになれたのか? つまりなんでお芝居という夢を叶えられたんだと思います?

i☆Risがあるからですね。メンバーそれぞれ個々の活動をするようになったのはデビュー2年目くらいからなんですけど、なんでできるようになったのかっていったら「プリパラ」が人気になったから。その作品に出演して、テーマソングを歌っているi☆Risのことを皆さんが知ってくださったっていう土台があったからこそですから。そもそも6人でライブをすること自体すごく楽しいし、自分にとっては欠かせない存在だと思ってます。

──じゃあ武道館ライブも楽しみですね。

はい。まだ“ざっくり”ではあるんですけど、次の可能性が見えるライブにしたいなって思っていて。武道館からまた起承転結の「起」を始めたいですね。

──自分が武道館に立つ姿はイメージはできてます?

茜屋日海夏

いや……立ってみないと実感が湧かなさそうです。私、モー娘。さんが大好きで、去年の12月に推しの鞘師里保ちゃんの最後の武道館コンサートを観に行っていて。そのときにはもう自分たちが武道館でやることが決まっていたので「ここでやるのかあ」なんて思ったりもしたんですけど、ステージに立つ自分の姿はイメージできなかったんですよね。

──そのときの茜屋さん、忙しそうですねえ(笑)。自分がステージに立つことを考えなきゃいけない一方で、鞘師さんが辞めちゃうことは悲しまなきゃいけないし。

“鞘師ロス”に号泣しながら、「私もここに立つのか」って冷静に考えたりしていて、脳みそが大忙しでした(笑)。で、まだ武道館に立つ実感は湧いてないんですけど、とにかくがんばるというよりは楽しもう、とは思っていて。ほかのメンバーもお客さんに楽しんでもらいたいっていう思いが強いですね。

──あと武道館は次の「起」になると言ってましたけど、デビュー5年目の茜屋さんはどうなるんでしょう?

ちょっと自分のことに集中する時間を作ってもいいかなって思ってます。1人の役者としての茜屋日海夏に集中する時間を作ってみたいですね。

i☆Ris 4th Anniversary Live

2016年11月25日(金)東京都 日本武道館
OPEN 17:30 / START 18:30
最新シングル「Re:Call」 / 2016年8月3日発売 / DIVE II entertainment
Type-A [CD+DVD] / 1944円 / EYCA-11059/B
Type-B [CD] / 1296円 / EYCA-11060
Type-A CD収録曲
  1. Re:Call
  2. 鏡のLabyrinth
  3. Re:Call(Instrumental)
  4. 鏡のLabyrinth(Instrumental)
Type-A DVD収録内容
  • Re:Call-MUSIC VIDEO-
  • Re:Call-Off Shot Movie-
Type-B CD収録曲
  1. Re:Call
  2. 鏡のLabyrinth
  3. 真夏の花火と秘密基地
  4. Re:Call(Instrumental)
  5. 鏡のLabyrinth(Instrumental)
  6. 真夏の花火と秘密基地(Instrumental)
ライブBlu-ray / DVD「i☆Ris 結成4周年Live~foooour~@i☆RisTELLARTHEATER」 / 2016年10月26日発売 / DIVE II entertainment
[Blu-ray Disc] 6480円 / EYXA-11197
[DVD2枚組] 4860円 / EYBA-11195~6
i☆Ris(アイリス)
i☆Ris

山北早紀、芹澤優、茜屋日海夏、若井友希、久保田未夢、澁谷梓希からなる声優アイドルグループ。avexと81プロデュースが共催した「アニソン・ヴォーカリストオーディション」を機に2012年に結成され、同年11月にシングル「Color」でアーティストデビューを果たした。また2014年からは全メンバーがアニメ「プリパラ」シリーズのメインキャストを務めており、この「プリパラ」シリーズのテーマソングなど、現在までに13枚のシングルと2枚のオリジナルアルバム、1枚のカバー盤を発表。その一方で各メンバーとも声優、舞台俳優、ラジオパーソナリティ、DJなど、個人活動を積極的に展開し、2016年にはその実績が認められ「第十回 声優アワード」の歌唱賞を受賞した。そして2016年11月にはデビュー4周年記念公演として、初の東京・日本武道館ワンマンライブを実施する。