こんなに活動してました!年表&インタビューでわかるコロナ禍のH ZETTRIO

曲のアイデア、湯水のようにあふれ出てくるんですよ

──2020年から現在までの活動を年表で振り返りましたが、改めてライブ、リリースともにすごい量でしたね……。配信シングルは28作、アルバムもサウンドトラックを含めるとすでに10作発表していて。

H ZETT KOU こうやってリストで見るとすごいよね(笑)。

H ZETT M 曲はいっぱいあるというか……もう湯水のようにアイデアがあふれ出てくるんですよ。

H ZETT M(Piano)

──配信シングルの連続リリースは当初12カ月の予定でしたが、どんどん期間が延びていき、現時点で48カ月まで延長されました。レーベルの方に聞いた話だと、申請すればギネスブックにも載せられる記録だそうで。

H ZETT NIRE もう自分たちでは止められなくなってると思います(笑)。

H ZETT M 僕たち自身、楽しくなっちゃってるところもありますね。

──ただ、ここまで長い期間になると制作が苦痛になってしまう可能性もありそうですが、そのあたりは大丈夫だったんでしょうか?

H ZETT NIRE ありがたいことに、どの楽曲も評判がいいんですよね。「今回の曲もよかったですよ」とSNSでコメントしてもらえたり、ライブでの反響も大きいから続けられているんだと思います。せっかくリリースしたのに、誰からも反応がなかったらキツかったかも。

──各シングルのジャケットアートワークにはファンから募集したイラストが使用されていますが、これも皆さんが反応してくれる要因になっているんじゃないかと。

H ZETT NIRE 一緒に作品を作っている感覚がありますよね。

──各楽曲は基本、H ZETT Mさんが中心となって作っているんでしょうか?

H ZETT NIRE はい。毎回Mさんがかなり仕上げて持ってきてくれるので、あとはレコーディングスタジオに入って、録りながら細かいところを調節していく感じです。

──NIREさんやKOUさんが作曲することは?

H ZETT KOU 僕は今のところないかな。

H ZETT NIRE 「NIRE The Bassman」だけは僕が作ったけど、それ以外は全部Mさんが作ってます。

H ZETTRIO

──ここまでリリースが続けられるのもとんでもないことですが、H ZETT Mさんが基本作り続けていることもすごいと思います。H ZETT Mさんは普段どんな音楽を聴いたり、参考にしたりしているんでしょうか?

H ZETT M ものすごく極端に言ってしまうと「すべて参考にしている」という感じになってしまうんですが、特定のジャンルにこだわっているわけでもなく……。

H ZETT NIRE じゃあ、今日は何を聴きました?

H ZETT M ああ……まだ何も聴いてません(笑)。

──ジャンルを限定せずにさまざまな音楽を聴き、定期的にアウトプットしていく、という感じ?

H ZETT M そうですね。音楽を聴く手段はiTunesやサブスクだけでなく、最近だとカセットテープとかも使ってます。あとはラジオも聴くし。楽曲のジャンルも気にせず、なんでも聴くようにしていますね。

アレンジ=新しい輝きを探るための実験

──「SPEED MUSIC ソクドノオンガク」で披露するカバーの選曲も、例えば「紅蓮華」のような最新のヒット曲もあれば、「キン肉マン Go Fight!」といったアニソン、「函館の女」をはじめとする演歌など、とにかく幅広くセレクトされています。

H ZETT M 「SPEED MUSIC」は最近ではリスナーからリクエストを募って、そこから選んでいますね。そのリクエストもとにかくジャンルレスですね。

H ZETT NIRE 一時期は大人が子供の頃に聴いていたアニソンが多かったんですけど、今ではかなりばらけました。

H ZETT NIRE(B)

H ZETT M むしろリスナーが「こういう曲をカバーしたいんでしょ?」みたいに予測して選んでくることもあったり。もちろん全然違うパターンもありますけどね。

──「SPEED MUSIC」でのカバーはどれもかなり大胆なアレンジが施されています。中にはサンプリングのように、ボーカルのメロディラインを細かく分解して盛り込むパターンもあったり。

H ZETT M 個人的な考えになっちゃうんですけど、僕にとって演歌もジャズもクラシックも、全部一緒という印象なんですね。ドレミファソラシドという音階を必ず使っていて、そこからメロディやリズムの組み合わせ、曲全体の構成でジャンル分けされている、という感覚なんです。その素材を見て、「このリズムを変えたらあのジャンルになるかも」というふうに実験していく。それがアレンジという作業なんだと思います。

──なるほど。

H ZETT M でも、各楽曲の魅力はちゃんとリスペクトしたくて。ただメチャクチャにするんじゃなく、楽曲そのもののよさは失われないよう気を付けています。「この曲が違う輝きを持ち始めるには、こういう方向性もあるかな?」という可能性を探るんです。

──確かに、H ZETTRIOの各カバー曲はかなり攻めたアレンジを施しつつも、しっかりと原曲がわかるように保たれています。そのバランスが絶妙ですよね。

H ZETT NIRE 海外アーティストだと、僕ら以上にアレンジを加える方は多いかも。めちゃくちゃフェイクを挟んだり。

H ZETT M 例えばアレサ・フランクリンによるThe Beatles「Eleanor Rigby」のカバーは、メロディラインがまったく別物になっているんですよね(笑)。ほかにはジャズでも、どんなふうに曲が展開されているかわからないほど複雑なアレンジを施す人もいるし。もちろんその方法も面白いんですけどね。だけど僕らは、まず原曲を生かすことを大事にしています。

わずか半年で2枚のフルアルバム発売、その背景とは?

──今年1月にリリースされた「トリオピック ~激闘の記録~」は2020年、5月に発売される「Kazemachizuki」は2021年の配信シングルを集めたアルバムになります。どちらも発売順ではなく、アルバム全体の流れを踏まえた曲順になっていますが、このエディットはどのように行われたんでしょうか?

H ZETT M 大まかな構成は僕が考えて、その案を2人にLINEで送って……。

H ZETT KOU あんまり「この順番を変えたほうがいい」みたいな事態にはならないよね。このあたりもMさんのアイデアでほぼ決まります。

──リリース間隔が近いので、2020年と2021年、両方の年の楽曲を混ぜてアルバムを構成することもできたかと思います。

H ZETT NIRE なるほど、その手がありましたね。今気付きました(笑)。

H ZETT KOU でも、2020年に制作した曲はオリンピックが開催されることを想定したものが多くて、ミュージックビデオもスポーツにちなんだコンセプトで制作していて。「トリオピック ~激闘の記録~」ではその背景を感じ取れるようにまとめたかった、という意図はありました。

H ZETT KOU(Dr)

──「Kazemachizuki」は前半に激しく展開が移り変わるプログレッシブな曲が多く、後半にかけてメロディを前面に押し出したキャッチーな曲、ミドルテンポのメロウなナンバーが増えていくような印象を受けました。とてもまとまりのある流れを感じたのですが、配信シングル制作時からアルバムの構成は考慮していたのでしょうか?

H ZETT M 曲によってシングル単体で成り立つもの、アルバムの構成を考えて作るものと半々になります。あんまりアルバムのことを意識しすぎるのもよくないので、その時々でバランスを取っています。

──「New Spring」「祭りじゃ」のように、シングル配信時のシーズンに合わせた楽曲もありますね。

H ZETT NIRE あえて冬にサンバ調の曲を出したこともありましたけどね(笑)。

H ZETT KOU そう考えると、「MOCHI」は3月じゃなくて1月に配信したほうがよかったんじゃない?

H ZETT NIRE でも3月に食べる餅もまたオツなもんですよ。翌月にはちゃんと季節感のある「New Spring」を出したし。

H ZETT M タイトルは曲が完成してから付けるので、強引にリリース月に合わせたこともありましたね。

──配信用の曲はある程度ストックしているんでしょうか? それとも完成したものから順次リリースしていく?

H ZETT NIRE 完成したものからリリースしていくことがほとんどですね。リリース順を変えたり、思い切って楽曲タイトルを変更することもたまにあります。

──アルバムタイトル「Kazemachizuki」は2021年6月リリースの配信シングル「風待月」をローマ字表記にしたものです。この曲名をアルバムタイトルに引用したのはなぜだったんでしょう?

H ZETT M 字面がなんとなくいいかな……と思って。これが「Blueberry Jam」だとちょっとかわいすぎるし。

H ZETT NIRE 「Blueberry Jam」も意外とよさそうだけどね。

H ZETT KOU 「Kazemachizuki」というタイトルは蒸し暑いところに、さわやかな風が吹いてくる様子をイメージできていいですよね。そこから「コロナ禍から抜け出す」みたいな印象につなげることもできそうだし。

H ZETT M 「聴いた人が新しい風を感じてほしい」みたいなメッセージも込められているよね。

ジャズの敷居の高さを変えて、とにかく楽しいライブにしたい

──2022年のライブは、直近では5月に「こどもの日」ライブの開催が決定しています。有観客での開催は3年ぶりになります。

H ZETT NIRE 「こどもの日」ライブは毎回年齢制限なしにしていて、小さいお子さんもいっぱい来てくださるライブなんですよ。みんな自由な感じで演奏を聴いてくれて、声も好きなタイミングで上げてくれるから、僕らも楽しいんです。やるたびに元気をもらえますね。年齢層も普段より幅広くて、お子さん、親御さん、祖父母の方々と3世代で観に来てくださるお客さんもいます。ジャズは静かに聴かないといけないというイメージが強いせいか、正直お子さんが来場しづらいところはあると思います。でも僕らのほうから「騒いでもいいよ」「子供を連れて来てもいいよ」と言えば、遠慮なく同伴できますよね。

H ZETT KOU 今NIREが言ったように、お客さんとの間に変な壁を作りたくなかったんです。「この日はみんなで楽しもうよ」というコンセプトを立てて、それが「こどもの日」ライブを始めるきっかけになりました。

H ZETTRIO

H ZETT M H ZETTRIOはライブ活動を始めたときからお客さんの年齢層が幅広くて、それこそお子さんも来ていたし、最前列におじいさんおばあさんがいることも当たり前だった。なので「こどもの日」ライブはよりお子さんに向けたイベント、という側面が強いです。

H ZETT KOU 先日会場となる立川ステージガーデンを下見したんですけど、緑の多い施設でとても素敵でしたね。これまで以上にどなたでも来場しやすい環境になっていると思います。

H ZETT M あとは三味線奏者の吉田兄弟の企画に出演したり、SixTONESや香取慎吾さんの楽曲に参加したり、最近ではほかのアーティストとの交流も多くなりました。ボーイズラブを題材にした映画「囀る鳥は羽ばたかない The clouds gather」のサントラを手がけたこともあったし。よりいろんな人を巻き込んで、面白いことをしていきたいです。

──「こどもの日」ライブ開催後、7月からはツアー「H ZETTRIO Kazemachizuki Tour 2022 -レソラピック-」も始まります。

H ZETT NIRE 今のところ発表されているのはまだ一部で、期間は年末まで、さらに最近行けなかった地域も回る予定です。

H ZETT M 各公演で味わえる空気もそれぞれ違うものになりそうなので、僕らも楽しみたいですし、来てくれた皆さんもとにかく楽しんでもらえるライブにしたいので、元気になりたい人はぜひ足を運んでほしいです。

──ツアータイトルからもわかる通り、オリジナルアルバム「RE-SO-LA」「トリオピック ~激闘の記録~」「Kazemachizuki」の3本を携えてのツアーになるわけですが、新たにやってみたいことはありますか?

H ZETT M 「Spacewalk」という曲があるくらいだから……ムーンウォークとかできたらいいんですかね。

H ZETT KOU もしかしたらムーンウォークがたくさん見れるかもしれない。

H ZETT NIRE 3人一緒にムーンウォークで入場したり(笑)。

──(笑)。まだ3月ですが(※取材は3月上旬に実施)、1年間の動きがある程度見えてきましたね。

H ZETT KOU ツアーができない期間がこんなに長かったのは初めてで、やっとライブ活動も本格的に動き出しますね。ワクワクしています。これまでの活動も僕たちが楽しめることを追求してきたからこそ、コロナ禍も動き続けることができたと思うんです。ツアーが始まることで新しいアイデアも生まれそうですね。

H ZETT NIRE 個人的な話になってしまうんですけど、2020年2月以来、趣味のマラソンがずっとできなかったんですよね。最近ようやく復帰して、これからツアーで地方を回るので、空気のきれいなところをいろいろ走ってみたいです。

H ZETT M  H ZETTRIOの音楽を聴いたり、ライブを観てくれた人がパワーをもらえるよう心がけてきましたが、やっぱり僕ら自身が健康じゃないとそれはできないので。柔軟運動とかして整えていきたいです。

H ZETT NIRE 健康、大事ですよ。

H ZETT KOU 最近YouTubeで体操やヨガの動画を見るんですけど、トレーナーの人が「ポジティブを吸ってネガティブを吐きましょう」とかよく言っているんですよ。まさにそれだなと思いますね。

──今後も連続配信シングルや「SPEED MUSIC」でのカバーも引き続き発表されていくと思いますが、こちらで何か挑戦したいことは?

H ZETT M そうですね……配信曲はより面白い曲を作っていきたいし、「SPEED MUSIC」は思いっきり楽しみたい。まだまだいい曲はたくさんありますから、それらに触れることで、僕らのパワーにつなげたいです。

H ZETTRIO

イベント情報

H ZETTRIO LIVE 2022 こどもの日SP -虹に吠えろ!-
  • 2022年5月5日(木・祝)東京都 立川ステージガーデン
H ZETTRIO Kazemachizuki Tour 2022 -レソラピック-
  • 2022年7月3日(日)大阪府 新歌舞伎座
  • 2022年7月9日(土)石川県 石川県文教会館
  • 2022年7月10日(日)富山県 南砺市井波総合文化センター
  • 2022年7月23日(土)長野県 ホテルメルパルク長野 メルパルクホール
  • 2022年7月24日(日)新潟県 新潟市民プラザ
  • 2022年7月29日(金)東京都 葛飾区文化会館(かつしかシンフォニーヒルズ)
  • 2022年8月21日(日)北海道 札幌市教育文化会館
  • 2022年8月27日(土)岡山県 勝央文化ホール
  • 2022年8月28日(日)兵庫県 高砂市文化会館
  • 2022年9月2日(金) 愛知県 日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
  • 2022年9月4日(日)福岡県 キャナルシティ劇場
  • 2022年9月17日(土)岩手県 一関文化センター
  • 2022年9月19日(月・祝)宮城県 電力ホール
  • 2022年9月23日(金・祝)東京都 江戸川区総合文化センター 大ホール
  • 2022年10月1日(土)京都府 KBSホール
  • 2022年10月2日(日)静岡県 三島市民文化会館ゆぅゆぅホール
  • 2022年10月23日(日)埼玉県 熊谷文化創造館 さくらめいと

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H ZETTRIO(エイチゼットリオ)
H ZETTRIO
青い鼻のH ZETT M(Piano)、赤い鼻のH ZETT NIRE(B)、銀色の鼻のH ZETT KOU(Dr)によるジャズトリオグループ。2012年にH ZETT Mを中心に結成し、2013年の1stアルバム「★★★」発表を皮切りに活動を本格化させた。2019年1月から毎月新曲を配信リリース中。2018年4月には数々の名曲をカバーする音楽番組「SPEED MUSIC ソクドノオンガク」の放送がスタートした。同番組のサウンドトラックは現在6枚発売されている。2022年1月に6枚目のフルアルバム「トリオピック ~激闘の記録~」を発表。同年5月には7枚目のフルアルバム「Kazemachizuki」のリリースも控えている。