HYDE|6つのテーマでたどる、筋書きのない道を歩いてきた20年

THEME 5憧れの存在とフォロワー

──ところで、HYDEさんがアーティストとして一番憧れている方はどなたですか?

MORRIEさんですね。僕にとってGASTUNKは産みの親で、DEAD ENDは育ての親みたいな感じなんです。MORRIEさんはずっと自分にとって基本になる人ですね。時代もあると思いますが、ひと言でカリスマと言っても今の時代とは違うレベルのカリスマ性がある。MORRIEさんの真似をする人もたくさんいたし。いかに売れてようが売れてまいが、そのボーカリストがどれだけすごいかはフォロワーで決まる気がするんですよね。MORRIEさんのフォロワーだったら、僕とか清春くん、RYUICHI(LUNA SEA)さんとかいっぱいいるんですよ。そして、フォロワーたちがまた次の世代を作っていく。ありがたいことに僕にもフォロワーがいて、そういう子たちの姿を見ると「自分は間違ったことはしてなかったのかな」と思えるんです。もちろん僕自身は全然MORRIEさんのレベルには達していないけど、少しは近付けているのかな。

HYDE

──MORRIEさんは独特の佇まい、ビジュアル、活動の方針などいろんな魅力がありますが、影響受けたのはどんなところですか?

もう歌ですよ。結成当時、L'Arc-en-Cielの曲を歌うときは必ずMORRIEさんをイメージしていましたね。メンバーからいろんな曲を提案されたんだけど、それをどう表現すればいいかわからなくて。もともとはGASTUNKのようなハードコア寄りの人間が、ポップな曲を歌わなければいけなくなってすごく悩んだんです。でも、MORRIEさんはどんなタイプの曲を歌っていても、どこか神々しくて……そういう表現力はすごく影響を受けました。

──逆に先ほど言及されたフォロワー、つまり後輩の方々から受け取っているもの、影響を受けているところはどんなところですか?

当然のことながら今の感性で活動しているから、それを見ると「俺は違う世界にいたんだな」と思わされますね。例えばいろんなフェスに出てる子もいっぱいいて、話をする中で「そういえばフェスに出てなかったな」と気付かされて、この歳になってフェスの戦略を考えたり。どういうバンドが出ていて、自分はそこでどういう表現をすればいいのかとか、改めて勉強するきっかけになってますね。

──交流を通してご自身の活動をアップデートにしていると。いろんなメディアを拝見していると、HYDEさんは後輩からもすごく慕われていますよね。

本当にありがたいです。

HYDE

THEME 6黑ミサ

──10月と11月に「黑ミサ」の開催を控えていますが、今や「黑ミサ」はHYDEさんのライブ活動における重要なトピックの1つになっている印象があります。

もともとは富良野でひっそりやっていたディナーショーだから、「黑ミサ」という名前にしていたんですよね。人気がある公演ではあったけど、真冬の北海道で開催していたので参加するには移動費や宿泊費などけっこうかかって、参加するにはなかなかハードルが高いと思うんです。試しに関東でコンサートとして大きくやってみたのが2017年だったんです(参照:HYDE Christmas Concert 2017 -黑ミサ TOKYO-特集)。一度やってみたことで、新しい表現もできたし、お客さんにも喜んでもらえたけど、自分の中ではそんなにしょっちゅうやるものではないなと。2019年を最後にこのあとは10年に1回くらいでいいんじゃないかと思っていたところ、またやることになったんですけど(笑)。

──ファンはうれしいと思います。

「HYDEサザン」(HYDEがデザインプロデュースを手がけた南海電鉄の特急。参照:和歌山市ふるさと観光大使HYDE、南海電鉄の特急サザンとコラボ)の運行が11月に終わるという話だったので、走っている間に何か企画をやりたいなと思ったんです。だって特急に「黑ミサ」と書かれているのにコンサートをやってなかったんですよ? ファンの子に電車に乗って和歌山に来てもらいたいなと思って。まあ、運行期間は延長されたんだけどね(笑)。

HYDE

──好評だったからでしょうね。

「ROENTGEN」ツアーもだけど「黑ミサ」も、コロナだからこそやるにはタイミングが合うと思ったし、今年やっておくかと。今回以降は「黑ミサ」はまた富良野限定のものにしたいなと思ってます。

──「黑ミサ」は当面封印?

名前が変わるだけかもしれないですけど(笑)、フィナーレをやっておこうかなと。

──となると、今回の公演はかなり貴重なものになりますね。

そうですね。幕張と和歌山で異なる内容にする予定で、和歌山のほうは前回に近い内容になります。オーケストラは入るけど、「ROENTGEN」の曲にこだわらず、自分のキャリアにおけるヒット曲を歌う予定です。幕張はたまたまハロウィンにぶつかったんですよ。これは何もしないわけにいかないという話になって……内容についてはめちゃくちゃ考え中です。誰も何もしてくれないので(笑)、全部自分で考えないといけないんですけど。コロナ禍ではあるので、席ありで歓声なしのコンサートにはなりますが、ハロウィンだしきっとみんな仮装したいと思うんですよ。コロナ禍においても対策を徹底すれば、感染は防ぐことができると思うんです。いつまでも自粛しているわけにはいかないし、経済を回していかなくちゃ生きていくことはできないからね。

──ハロウィンシーズンにライブをされるのは2018年以来だから、3年ぶりですね。

最後に「アリス・イン・ワンダーランド」の仮装をやりきって、もういいかなという気持ちになったんです。もう仮装したいものもなくなってたし(笑)。

──恒例行事として楽しみにされていたファンの方も多かったと思うのですが。

そうですね。ファンのみんなはもちろん、出演者の皆さんも楽しみにしてくれてるのは知ってるんですけど、どんどん規模が大きくなり過ぎてけっこう大変なことも増えてきて、一旦終わりにしたんです。

──そうでしたか。

これまでとは形は違いますが、ひさしぶりのハロウィンなので曲にもこだわりますし、ゲストを呼ぶことも考えています。

──幕張と和歌山で内容が異なるとなると大変ですね。

そうなんですよ! ラルクのツアーも並行してあるし、1人でできるのかなって思いながら。鬼のようなスケジュールですよ(笑)。

──そう言いながら、すべてこなせてしまうのがHYDEさんですよね。当初のコンセプトとは違う形に発展した「黑ミサ」ですが、現時点でどういう意味を持つコンサートなんでしょうか。

節目にやる公演ですね。今回もソロ20周年のタイミングですし。節目にオーケストラを率いて自分の代表曲をやる。歌をじっくり聴いてもらうというのが今のコンセプトかな。

──「黑ミサ」で締めくくられるような印象を受けてしまうところですが、20周年にちなんだ企画がまだ控えていらっしゃるそうで。

もういろいろやったし、僕の中ではもう20周年は終わりなんだけどね(笑)。

──いやいや! まだまだ祝わせてください。ちなみにアーティストとしての目標は時期によって変わっていると思いますが、現時点で思い描いているものはなんですか?

今作っている「ROENTGEN 2」のような、歌に特化した楽曲制作が今後の主軸になっていくでしょうね。その中で自分なりに楽しめる音楽を作ることかな。さっきまだ歌うことがつらいと言いましたけど、スキルを得て、楽しみながら歌っていくスタイルに変えていきたいんです。今は楽しいことよりつらいことばかりだけど、ある程度まで達したら、楽しんで歌う僕を見てもらえるようになるんじゃないかな。

HYDE

ライブ情報

20th Orchestra Concert HYDE 黑ミサ 2021 Halloween
  • 2021年10月30日(土) 千葉県 幕張メッセ国際展示場9~11ホール
  • 2021年10月31日(日) 千葉県 幕張メッセ国際展示場9~11ホール
20th Orchestra Concert HYDE 黑ミサ 2021 Wakayama
  • 2021年11月23日(火・祝) 和歌山県 和歌山ビッグホエール
  • 2021年11月24日(水) 和歌山県 和歌山ビッグホエール
HYDE(ハイド)
HYDE
L'Arc-en-Ciel、VAMPSのボーカリスト。2001年からソロ活動をスタートし、日本のみならずワールドワイドに活動している。ツアーの一環でアメリカ・Madison Square Gardenや東京・国立競技場などで単独ライブを行い成功を収めている。2021年5月に、コロナ禍の中で行われたアコースティックツアー「HYDE LIVE 2020-2021 ANTI WIRE」の模様を収録した映像作品を発表した。6月よりソロ1stアルバム「ROENTGEN」を再現するツアー「20th Orchestra Tour HYDE ROENTGEN 2021」を開催中。ツアーに合わせて先行配信した「NOSTALGIC」を10月6日にシングルCDとしてリリースする。また、2021年のオーケストラ・コンサートの集大成としてオーケストラ公演「20th Orchestra Concert HYDE 黑ミサ 2021」を、10月に千葉・幕張メッセ国際展示場、11月に和歌山・和歌山ビッグホエールにて行う。