HYDE(L'Arc-en-Ciel、VAMPS)が12月23、24日の2日間にわたり、千葉・幕張メッセ国際展示場4~6ホールにて単独公演「HYDE Christmas Concert 2017 -黑ミサ TOKYO-」を開催する。
毎年、北海道・新富良野プリンスホテルで開催しているファンクラブ限定イベント「黑ミサ」の特別編となるこのコンサート。当日はダブルカルテット、コーラス、ギター、ベース、ドラム、パーカッション、ピアノ、フルート、クラリネットからなるオーケストラの演奏をバックに、HYDEが自身のキャリアを飾ってきた楽曲をたっぷり歌い上げる。スペシャルゲストにはKen(L'Arc-en-Ciel)の参加も決定しており、L'Arc-en-Cielの楽曲も多数披露される予定だ。
これまで富良野でひそやかに行っていた「黑ミサ」を、大規模な会場で開催することになった理由とは? HYDE本人にコンサートに向けての思いや構想を語ってもらった。
取材・文 / 中野明子
じっくり歌を聴いてもらおうかな
──今回「黑ミサ」を幕張で開催することになった理由はなんだったんですか?
HYDERoom(オフィシャルモバイルサイト)の企画で毎年ディナーショーをやってて、最近は「黑ミサ」と題して開催してるんです。それは1日200人程度で、富良野っていう遠い場所でやってるんですね。東京から距離もあるし、いろいろ制限あるしでなかなか観られないコアなライブなんです。いつかその「黑ミサ」を気軽に来やすいところでやりたいなと以前から思ってたんですけど、今回チャンスが巡ってきたのでやることにしました。
──その「黑ミサ」のコンセプトと言うのは?
富良野でやってきたのはアコースティックの小編成で、歌がメインの内容ですね。あと1曲1曲歌う曲の解説をしながらやってます。トークも織り交ぜて1年を振り返ったりとか……そんな感じ。
──そもそもなぜ富良野でやることに?
僕、雪国が好きなんですよ。雪国に行きたくて、ファンクラブのディナーショーを始めたくらいで(笑)。富良野もそうですけど、雪国って部屋の中にいても妙に密室感があるんですよね。そんな雰囲気の中、ロウソクの明かりだけでライブをするのがちょっと秘密を共有してるドキドキする感じでいいんですよ。富良野に行き出してから今年で8年目なんですけど、すっかりクセになっちゃって。行かないと1年が終わらないんです。
──毎年の恒例行事なんですね。今年は富良野と幕張の2カ所で「黑ミサ」を開催されますが、幕張のほうはかなり大規模な形で、従来の「黑ミサ」とは違う感じになりそうです。
そうですね。なので、そっちは密室感はほぼないですね(笑)。ただ富良野での「黑ミサ」よりももっとたくさん歌を聴ける形になります。あとはクリスマスらしいスペシャルな雰囲気のものにしたいなと思ってます。
──HYDEさんと言えばVAMPSの「HALLOWEEN PARTY」のイメージが強いので、クリスマスシーズンにライブをされるのは珍しい気がします。
確かにこれまであまりなかったかも。記憶にあるのは「ミュージックステーション スーパーライブ」くらいかな?
──(笑)。
あれ、だいたいクリスマスシーズンなので。クリスマスにあまり思い入れなくても、冬にライブをやるとなると自然とクリスマスはリンクしちゃいますね。
──今回は日程がクリスマスイブ前日とイブですから、ますますクリスマス色は強くなりそうですね。
困ったことにね(笑)。だから寂しい人たちに来てほしいです。もしくはカップル。VAMPSとかだと、お客さんが頭の上を転がってくるようなライブが多いんですけど、今回は完全に着席スタイルなのでじっくり歌を聴いてもらおうかなと思ってます。落ち着いた雰囲気になると思うので、年配の方にも来てほしいですね。
──HYDEさんがソロライブを開催されるのは、VAMPS結成前の2006年以来になりますでしょうか?
ディナーショー以外だとそうなりますかね。ソロだと、歌う曲はラルクでもいいし、カバーでもいいし、VAMPSでもいいし、自由ですよね。
──セットリストに幅を持たせることができると。
うん。今年が「ROENTGEN」(2002年リリースの1stソロアルバム)を出してから15周年なので、「ROENTGEN」の曲もたくさんやりたいなと思ってます。「ROENTGEN」の曲をちゃんとライブで聴いたことがない人ってけっこういると思うんですよ。
──確かに。「ROENTGEN」はストリングスが入っていたり、ピアノが入っていたり、VAMPSともL'Arc-en-Cielとも違うテイストの楽曲が収録されていましたね。
そうですね。ただライブではほとんどやってないんです。そもそもライブのために作ってなかったんで。
──あくまでもレコーディングを目的とした作品だった?
そうそう。自分がずっと聴けるアルバムを作ることが目的だったから。だからこそ、今回のライブは貴重だと思います。
──ちなみにHYDEさんとして「ROENTGEN」の楽曲を、今ならライブで表現できるようになったという部分もあるんでしょうか?
それはありますね。
歌にだけ集中するのも楽しい
──「黑ミサ TOKYO」をアコースティックスタイルのライブにする理由は?
VAMPSでやった2016年1月の「MTV Unplugged」の流れですね(参照:VAMPS「MTV Unplugged」でHYDE & Charaデュエット)。それまで僕は20何年間、歌よりもパフォーマンスを重視してきたんです。でもあのライブをやってから、歌にだけ集中するのも楽しいんだなって感じて。そこから考え方が変わってきましたね。歌を含めたパフォーマンスをする自分と、歌だけに集中する自分の両方を表現していく形になりました。で、今回は歌を聴かせるライブをやりたいなって思ったんです。
──「MTV Unplugged」と言えばアコースティックスタイルですが、アレンジが変わることで歌ううえでの気持ちは変わりますか?
変わると思います。アレンジの仕方や楽器の音が新鮮だと、歌うときの気持ちもリフレッシュするんですよ。だから今回は特別なアレンジにするために、いろんなアレンジャーさんにお願いしてます。自分でも新鮮な驚きがあるんじゃないかなと思ってます。
──ではアレンジを変えたことで、歌い方に変化が生まれた曲はありますか?
うーん……僕、ずっと歌い方に試行錯誤してて、いつも「こっちやな」「いや、こうやな」って繰り返してるんですよ。アコースティックライブに限らず、時期によって歌い方が変わってますね。
──確かにHYDEさんの歌い方は、年々変化している印象があります。
最近だとウイスパーボイスでの歌い方を自分なりにつかんできて。「ROENTGEN」の頃とかウイスパーボイスで歌うのがつらかったんですよ。息が続かないし、声も全然出なくて。しかも、昔は歌の練習とか研究も大っ嫌いだったから何もしなかったんです。でも歌い方を研究するようになってから変わってきて。歌ってて楽しいし、表現力も当時とは全然違うと思う。たぶんそれは聴いてる人にも伝わると思います。
──昔の曲を歌うときは、当時よりも自信を持って歌えている?
そうですね。昔とは全然違うと思います。25年プロやってる人間が言うのもあれですけど、うまいですよ、最近の僕(笑)。
──ここ数年「歌うのが楽しくなってきた」とおっしゃってますし。
もう5年くらい言い続けてるけどね(笑)。楽しみながらも試行錯誤してるんで、年々やり方が変わって面白いです。
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Kenが入ることで増す曲の説得力
- HYDE(ハイド)
- L’Arc-en-Ciel、VAMPSのボーカリスト。1994年7月にL’Arc-en-Cielのメンバーとしてビデオシングル「眠りによせて」でメジャーデビューを果たし、1996年発売のアルバム「True」でのブレイク以降、「虹」「HONEY」「READY STEADY GO」など数々のヒット曲を生み出す。2001年10月に初のソロ作品となるシングル「evergreen」を、翌2002年3月にソロアルバム「ROENTGEN」を発表しL’Arc-en-Cielとは異なる静謐で独特の世界観を提示した。2008年にはL’Arc-en-Cielの活動と並行して、K.A.Z(G)とのロックユニットVAMPSを始動。日本のみならず、ワールドワイドにライブ活動を展開している。近年はDEAD END、globe、中島美嘉、D'ERLANGERのトリビュートアルバムに参加するなど多角的に活躍している。