HYDE|自分だけの武器を手に 価値観を更新していく

ファンと弾けたい気持ちを曲に

──今回のシングルの表題曲は「Jekyll & Hyde」の「Rock Day」で披露されたナンバーですね。クレジットにHYDEさんの作品には初参加となるKubotyさんのお名前があって、個人的に「おっ!」と思いました。新しい才能をご自身の作品に取り入れられているというか。

HYDE

Kubotyはスタッフからの紹介で、最初に曲のアイデアを持ってきて原型を作ったのが彼。原型を聴いたときに「ああ、これはよくなりそうだな」と感じて。最初はもっと曲自体がゴシックな感じで、ギターのアルペジオで始まるような印象だったけど、構成を変えて自分なりに今一番カッコいいと思える形にしていく中で「あ、これいけるかも」と。

──6月にお話をお伺いしたときに、「ANTI」の曲よりもハードでメタル寄りの曲ができているとお話されていましたが、まさにそういった曲ですよね。メタルとスタジアムロックを融合させたような。

そうですね。リフがメインになってる。僕自身は普段からずっとギターを弾いてるわけではないし、流行りのギターリフとか細かく追ってないので、リフはギタリストに考えてもらったほうがいいと思ってます。

──サウンド面や歌詞に今の状況が影響している部分があるように感じたのですがいかがですか?

影響はありますね。今の状況が過ぎたあとにライブでファンと一緒に弾けたい気持ちがあって、歌詞にはこの曲でみんな叫ぼうぜという思いを込めました。まずは叫んで、今抱えている思いを全部吐き出せと。これからが始まりという思いもあったので、「目覚めろ」「新しくスタートしよう」というメッセージも入れたし。何よりも自分の代表曲にしようと思いながら歌詞を書いていきました。

──前作の「BELIEVING IN MYSELF」にも「Cuz we always will start again」というフレーズがありましたが、それとはまったく「スタート」の意味合いが違いますよね。

HYDE

あのときはもっと輝いた未来が見えていましたからね……今は苦しいけど、叫べ!というか、ちょっとした切なさが入ってるんです。音もライブで披露することを想定したテンポ感にしました。ライブでファンの子が目の前で暴れ回ってるのが想像できるし、そんな日が来たとき、一緒につらかったことを全部忘れて叫びたいです。

──「HYDE LIVE 2020 Jekyll & Hyde」で初披露したときは手応えを感じましたか?

全然わかりませんでした。当日まで十分に練習ができなかったし、喉も荒れてしまって。手一杯でうまく歌えなくて悔しかったです。できる限り丁寧に歌おうと思ってましたが、ライブで手応えを感じるのはこれからですね。音源をちゃんと聴いてもらってから、ライブで改めて披露したいです。

──「Rock Day」でパフォーマンスしたあとにファンの皆さんの声などをSNSでご覧になったりは?

少ししか見てないです。悪いことを書かれてたら怖いじゃないですか(笑)。

「GLAMOROUS SKY」は起爆剤

──ところで今回のシングルのカップリングには、映画「NANA」に提供した大ヒット曲「GLAMOROUS SKY」のセルフカバーが収録されています。この曲をセルフカバーされるのは2回目ですが、アレンジが前回とだいぶ違いますよね。パンキッシュで攻撃的な色合いが強くなって。今回、改めてセルフカバーの音源をリリースすることにした理由は?

日本のフェスで「GLAMOROUS SKY」を披露するとすごく盛り上がるし、パワーがあるんですよ。

──確かに以前フェスで拝見したとき、HYDEさんが歌い出した瞬間にオーディエンスが沸き立っていました。

だからこれを放っておくわけにはいかないなと思って。本当は今年の夏に音源をリリースして、フェスで披露しようと思ったんだけど、コロナでフェスはできない状況になっちゃったからね。でも、今リリースすることでこのバージョンが広がって、今後フェスに出たときの起爆剤になったらと思って収録することにしました。

──未来を見据えて今のモードでセルフカバーしたと。ちなみに過去のご自身の曲をアレンジすることで発見することはありますか?

常に成長しているつもりではいるし、最新がいいと思っているけど、昔は昔でいい発想とかがあったんだなと改めて思いますね。普段、僕はそんなに昔を振り返らないけど、ライブで披露したときにみんなが合唱してくれると、いいメロディだなと感じるし、当時もそれなりにがんばって曲を作ってたんだなと。

HYDE
HYDE
HYDE

もっと悪く書いてください

──「LET IT OUT」のミュージックビデオを拝見したのですが、HYDEさんもバンドメンバーも破壊の限りを尽くしていて、楽曲同様に強烈でした。

あれはインパクトがあればいいと思って、「破壊してくれ」ってリクエストしました。余計なことを盛り込むと軸がブレちゃうからね。

──VAMPS時代からHYDEさんのライブにおいて、車やパトカーは欠かせないアイテムだと思うんです。それをステージでバットなどで叩くシーンは何度か観ていたのですが、今回のMVでは完膚なきまでに破壊していたのが印象的で。その行為に、コロナの感染拡大によって今までは当たり前だったこと、常識だと考えていたことがまったく通用しない状態になってしまって、自分の価値観を壊さないと前に進めない状態になっているように感じたんです。今は苦しいけれど、自分をアップデートしながら生き続けていくしかないと。車の破壊シーンにしても、単に壊しているだけじゃない。HYDEさんなりの新しいスタンダードを作っていこうということを映像で表現しているのかなと。

あ、その解釈いただきます(笑)。僕としてはこの中で伝えたかった価値観は、HYDEのバンドメンバーはすごい悪い奴なんだぞということで。

──と言いますと?

なんか今のバンドマンって、いい子なイメージの奴らばっかりじゃないですか? そのイメージを破壊したかったんです。音楽作るのってマトモな人じゃないとできないじゃない?

──確かにアーティストの方は根が真面目な方が多い気がします。

HYDE

ある程度ちゃんと生活ができて、人との協調性を保てないと音楽活動って続けられないから、そうなるといい人がどんどん周りに集まってくるんだよね。それは気楽でいいんだけど、俺の求めてるロックバンドじゃないなって。いい人のオーラはいらない。「もっと悪くなろう!」「お前らもっと偉そうにしろよ」って普段からバンドメンバーに言ってます(笑)。

──こうやってお話している限りHYDEさんは本当に穏やかなイメージなので、そんなことをおっしゃるのが意外というか……。

もっと悪く書いてくださいよ(笑)。「HYDEは酒飲んでタバコを吸いながらしゃべってた」とか。

──HYDEさん、タバコは10年くらい前に辞めたとおっしゃっていませんでしたか?

……(笑)。

──MVを観る限りバンドメンバーはもちろん、HYDEさんもスイッチが入った状態で、その“悪い”一面が打ち出されているというのは確かだと実感しました。そういったスイッチを入れられることというのは、表現者としてすごいことだなと。

僕はさておき、あいつらは本当に悪いですよー(笑)。