沖縄から届いたHYの“いい知らせ” 、生活に寄り添って作られたニューアルバム「Kafuu」インタビュー (2/2)

力を合わせてやっていかないと勝てない

──もう1つのリード曲「キラリ」は「歩き始めなきゃ出会う事はない 今年の夏をスタートの合図にして」というフレーズが印象的なアッパーチューンで、HYらしい前向きさにあふれた楽曲ですね。

新里 ありがとうございます。この曲を作ったきっかけは、東京のホテルの窓から外を見ていて、「すごい数の人がいるけど、みんなどこに向かってるのかな?」と思ったことなんです。その日は自分が休みだったから「こんなに暇してていいのかな」とか、いろんなことを考えて……。歌詞にも書いているんですけど、どんなに悔やんでも過去には戻れないし、未来がどうなるかもわからない。やっぱり“今”が大事なんだよなって。そのあと沖縄に戻って、スタジオの周りを散歩しているときに、太陽の日差しが海の水面を照らしているところを見たんですよ。その景色も実際に歩いて行かないと見られなかったし、何か行動を起こすきっかけになるような曲を作りたいなと。考えてるだけでは何も起こらない。でも、ちょっとでいいから動いてみると、見える景色も変わってくるし、いつもは見過ごしがちなことにも気付けると思うんですよ。行く場所を変えてみたり、普段のルートを変えるだけでも違うだろうし。

新里英之(Vo, G)

新里英之(Vo, G)

──音楽活動もそうですよね。今までとは違うやり方を試すことで、新しい表現に出会えるので。「キラリ」の歌詞は新里さんと名嘉さんの共作ですが、どうして2人で書くことになったんですか?

新里 今までは自分の曲は1人で作り上げることが多かったんです。だけど「キラリ」は一度形にしたあとで、ローソンさんからタイアップのお話をいただいて。一旦作り上げたものを崩すのがすごく難しくて、メンバーに意見を聞いたんですよ。そのときにシュンがくれた「サビの歌詞をこうしてみたら?」というアイデアがめちゃくちゃよかったんです。

名嘉 いえいえ(笑)。

新里 もちろんそこまでに自分もいろいろ努力してきたし、シュンの言葉と自分の言葉をどう合わせようか考えて。何回もやり直して、何回も歌いながら、ハマるところを探した感じですね。歌詞を共作するのはひさしぶりだったんですけど、こういうやり方もいいなと。

名嘉 そうだよね。昔はメンバーに対して、「それぞれがいいライバル」という感覚だったんですけど、あるときから「手を取り合ってやらないとダメだな」と思うようになって。下の世代からいいバンドがどんどん出てくるし、HYは力を合わせてやっていかないと勝てないというか、生き残っていけないかもしれないなと。

HY

HY

バックボーンがにじみ出ているのかも

──仲宗根さんが手がけた「HAISAI」は題名通り、沖縄の風景や人々の姿を描いた楽曲ですね。

仲宗根 実は「HAISAI」は、ほかのアーティストに提供するはずだった曲なんです。結局採用されなかったんですけど、私自身がこの曲のメロディをすごく気に入っていて。いつかHYの楽曲として形にしたいなと思って取っておいたので、アルバムに収録できたのはうれしいですね。今回のアルバムは沖縄っぽい曲がけっこう多いんですよ。普段はもうちょっとバランスを考えながら作るんですけど、気付いたら沖縄っぽい曲がいくつかあって、だったら「HAISAI」も入れたいなと。

新里 三線を弾いてる曲もいくつかあるからね。「Heart」も沖縄のことを思って書いた曲だし。

名嘉 最初に言ったように、自分たちの生活に寄り添いながら作ったアルバムですからね。バックボーンがにじみ出ているのかも。

許田 そうだね。

名嘉 「沖縄の人たちに響くかな?」という心配がちょっとあるんですけどね。10代の学生の方は、沖縄から出たことがない人が多いじゃないですか。そのせいか沖縄のすごさを実感できていない気がするんですよ。むしろ県外の人のほうが旅行なんかで沖縄に来て、「こんなにすごいんだ」と発信してくれたりするので。県内、県外の人にかかわらず、自分たちの曲を通して沖縄の素晴らしさを感じてもらえたらうれしいですね。

──アルバムの最後に収められている「優しい世界」も沖縄テイストたっぷりの楽曲です。愛にあふれた歌詞にも心を打たれました。

名嘉 ありがとうございます。最初は「こんなに沖縄っぽくていいのかな?」と思ったんですけど、プロデューサーの方が「がっちり沖縄でいきましょう」と言ってくれて。プロデューサーは県外の方なんですけどね。

仲宗根 最初にこの曲を聴いたときは、みんな笑ってましたね(笑)。

名嘉 しかもヒデが冒頭に指笛を入れて(笑)。

──ここまで沖縄テイストに振り切った曲は、確かに今までのHYにはなかったかも。

仲宗根 そうなんですよ。BEGINさんならOKですけど、「HYはそこまでやらないな」みたいなバランスがあるんですよね。「優しい世界」も以前だったら「ここまで沖縄っぽさを出すと恥ずかしい」と思ったかも。

名嘉 今だからやれたというか、ここまで振り切れたのはよかったかもしれないですね。沖縄らしさをしっかり出した曲って、海外の方も受け入れてくれるんですよ。特に「帰る場所」という曲はペルーやブラジルでも人気があって。HYを南米に連れて行ってくれた曲だし、これからも沖縄を前面に押し出した曲を作っていきたいです。

名嘉俊(Dr)

名嘉俊(Dr)

拍手ってこんなに温かいんだな

──アルバムタイトルの「Kafuu」はどのような思いで付けられたのでしょうか?

名嘉 これはイーズがホワイトボードにいろんな候補を書き出してくれて、その中から選びました。

仲宗根 沖縄への愛だったり、いろんな思いを歌った曲が収録されているので、タイトルも方言がいいのかなと思って。「かふう」は“いい知らせを届ける”という意味の「果報」の方言なんですよ。普段はあまり使わないんですけど、お店やホテルの名前にもなっているし、沖縄では馴染みのある言葉ですね。

名嘉 いい言葉だよね。自分たちが日頃感じている幸せを表現したアルバムだし、それを聴いてくれる人たちとも共有したくて。早くライブで演奏したいですね。

──現在は来年1月まで続く全国ホールツアー「HY HANAEMI TOUR 2022-2023」の真っ最中ですが。

仲宗根 前のアルバムのツアー中に新しいアルバムが出るっていう。ちょっとずつズレてますね(笑)。

名嘉 振替公演もいくつかあるんですけど、なんとか中止しないで最後までやり切りたくて。「Kafuu」が出たら、セットリストに新曲も混ぜていきたいですね。

──HYはコロナ禍以降も積極的にライブを続けていて。やはり生のステージは大事ですよね。

仲宗根 そうですね。オンラインのライブもやったし、画面越しで音楽を届けるのもいいんですけど、みんながどんな顔をしていて、どんな思いで受け止めてくれているのかわからないので。生のライブは「この人たちが聴いてくれているんだな」と実感できるし、声が出せなくても、みんなの気持ちを感じられるのがうれしい。「拍手ってこんなに温かいんだな」ってじんわりきちゃいますね。

許田 この状況でも会場に来てくれて、マナーやルールをしっかり守ってくれるお客さんからはすごくパワーをもらっています。「ライブをやってくれてありがとう」という声もいただくんですけど、こちらこそ「ありがとう」ですね。

新里 自分たちも「こういう状況でツアーをやってもいいのか」という不安があったんですけど、皆さんに「ありがとう」と言ってもらえると、やってよかったと思いますね。音楽は人をハッピーさせるし、元気になれるじゃないですか。リハーサルするだけで元気になるし、それを全国の皆さんに届けていきたいと思ってます。

HY

HY

ツアー情報

HY HANAEMI TOUR 2022-2023

  • 2022年3月6日(日)大分県 別府国際コンベンションセンター ビーコンプラザ フィルハーモニアホール
  • 2022年3月26日(土)大阪府 グランキューブ大阪(大阪府立国際会議場)メインホール
  • 2022年4月2日(土)群馬県 高崎芸術劇場 大劇場
  • 2022年4月3日(日)埼玉県 久喜総合文化会館 大ホール
  • 2022年4月16日(土)長野県 長野市芸術館 メインホール
  • 2022年4月17日(日)石川県 本多の森ホール
  • 2022年4月29日(金・祝)宮崎県 日向市文化交流センター
  • 2022年4月30日(土)熊本県 市民会館シアーズホーム夢ホール(熊本市民会館)大ホール
  • 2022年5月14日(土)岩手県 田園ホール(矢巾町文化会館)
  • 2022年5月15日(日)宮城県 電力ホール
  • 2022年5月21日(土)千葉県 八千代市市民会館
  • 2022年5月22日(日)茨城県 常陸太田市民交流センター(パルティホール)
  • 2022年6月4日(土)東京都 TOKYO DOME CITY HALL
  • 2022年6月5日(日)神奈川県 クアーズテック秦野カルチャーホール(秦野市文化会館)大ホール
  • 2022年6月18日(土)秋田県 仙北市民会館
  • 2022年6月19日(日)福島県 白河文化交流館コミネス 大ホール
  • 2022年7月2日(土)山口県 周南市文化会館
  • 2022年7月3日(日)岡山県 岡山市民会館
  • 2022年7月23日(土)栃木県 佐野市文化会館 大ホール
  • 2022年7月24日(日)山梨県 東京エレクトロン韮崎文化ホール
  • 2022年8月13日(土)福岡県 福岡市民会館
  • 2022年8月14日(日)長崎県 長崎ブリックホール
  • 2022年8月20日(土)愛知県 名古屋市公会堂
  • 2022年8月21日(日)静岡県 三島市民文化会館ゆぅゆぅホール
  • 2022年9月3日(土)三重県シンフォニアテクノロジー響ホール伊勢 大ホール
  • 2022年9月4日(日)奈良県 なら100年会館 大ホール
  • 2022年10月22日(土)鹿児島県 川商ホール(鹿児島市民文化ホール)第1ホール
  • 2022年10月23日(日)佐賀県 佐賀市文化会館
  • 2022年11月6日(日)広島県 上野学園ホール
  • 2022年11月19日(土)北海道 まなみーる(岩見沢市民会館・文化センター)大ホール
  • 2022年12月17日(土)京都府 ロームシアター京都 メインホール
  • 2022年12月18日(日)滋賀県 守山市民ホール
  • 2023年1月14日(土)新潟県 長岡市立劇場 大ホール
  • 2023年1月21日(土)沖縄県 沖縄市民会館 大ホール
  • 2023年1月22日(日)沖縄県 沖縄市民会館 大ホール

ライブ情報

HY SKY Fes 2023

前夜祭
2023年3月17日(金)沖縄県 沖縄県総合運動公園 多目的広場
<出演者>
HY


2023年3月18日(土)沖縄県 沖縄県総合運動公園 多目的広場
<出演者>
HY / 青山テルマ / ORANGE RANGE / スキマスイッチ / 當山みれい / ナオト・インティライミ / FUNKY MONKEY BΛBY’S / MASA MAGIC


2023年3月19日(日)沖縄県 沖縄県総合運動公園 多目的広場
<出演者>
HY / あいみょん / OAU / 肝高の阿麻和利 / Def Tech / Hilcrhyme / MASA MAGIC / 緑黄色社会

プロフィール

HY(エイチワイ)

2000年に沖縄で結成された、男性3人女性1人からなるミクスチャーロックバンド。2001年に1stアルバム「Departure」を沖縄限定で発表し、厚い支持を得る。2003年にリリースしたアルバム「Street Story」は口コミで人気を集め、インディーズながらも100万枚以上もの大ヒットを記録。続く2004年の3rdアルバム「TRUNK」もメガヒットを記録し、2010年と2012年には「NHK紅白歌合戦」にも出場する躍進を果たす。2013年には沖縄で自主レーベル・ASSE!! Recordsを設立し、本格的に地元に拠点を移した。2019年6月には20周年プロジェクト第1弾としてニューアルバム「RAINBOW」をリリース。同年9月にギタリストの宮里悠平がバンドを脱退した。現在の4人体制となったバンドは、コロナ禍の2020年6月より5カ月連続で有料配信ライブ「HY HOME LIVE」を実施し、9月から5カ月連続で配信シングルをリリース。2021年1月に地元である沖縄県うるま市の観光大使に就任した。2月に14thアルバム「HANAEMI」を発売。2022年9月に15枚目のオリジナルアルバム「Kafuu」をリリースした。