HY|20周年イヤー 続けることで見えたカラフルな虹

雨が降り、そこに光が差すから虹はできる

──今回のアルバム「RAINBOW」には、新里さん、名嘉さん、仲宗根さんがそれぞれ手がけた楽曲が収録されています。各自の個性を感じさせるカラフルな楽曲がそろいましたね。

仲宗根 うん。すごくキャッチーな曲や、ライブで映える楽しい曲が多いですよね。今回はけっこう前に作っていた曲がいくつかあったから、スムーズに完成するかなと思っていたんですけど……。

名嘉 「曲がまだ足りない!」ってことになって結局ギリギリの進行になっちゃって(笑)。

仲宗根 でも、そんな中で2人(新里と名嘉)がすごくがんばってくれたんですよ。メロディも歌詞もホントに素晴らしいものを作ってくれたので、私はそれを聴きながらずっとニヤニヤしてましたね。「私はホントにすごい人たちと一緒にバンドをやれているんだな」って改めて思いながら。

許田信介(B)

許田 うん。ベストアルバムのツアーの最中にも曲作りをがんばってくれてましたからね。ホントに尊敬です。

名嘉 今回はいい曲であることを徹底的に突き詰めたところもあるんですよね。今までは「せっかく書いたからアルバムに入れようか」みたいなこともあったけど、もはやそういうレベルじゃなくなってる。気に入らなければどんどん削ぎ落としてもいったし。そういうハングリーな気持ちで作れたのがすごく楽しかったんですよね。

新里 それぞれがアルバムのリード曲になり得るものを作ろうと必死になっているからね。自信を持って作ったものに対して、「これはまだリードではないよね」っていう意見もはっきり言ってくれるし。そこにはアルバムを最高のものにしようという強い愛があると思う。そうやってメンバーが一丸となって切磋琢磨したからこそ今回のアルバムは本当に素晴らしいものになったんじゃないかなって思いますね。

名嘉 ギリギリのタイミングで「あと1、2曲必要だ」ってことになった瞬間、みんなが「家で作る!」って言ってスタジオを飛び出したのもいい思い出だよね(笑)。最高だったな!

──1曲目の「no rain no rainbow」は、“虹”というテーマを掲げたアルバムを象徴するナンバーですね。書いたのは名嘉さん。

名嘉俊(Dr)

名嘉 これは制作のラスト、ギリギリのタイミングにできました。ハワイへ行ったときに出会った“no rain no rainbow”という素敵な言葉と、今回のアルバムのテーマを絡めて書いていった感じです。雨が降り、そこに光が差すから虹はできる。それって人間も同じだと思うんですよね。悲しみや苦しみがあっても、そこに光を差してくれる誰かがいれば雲は晴れて虹がかかるはずっていう。そんな思いを込めました。

──名嘉さんはほかにも4曲を手がけていますが、僕は10曲目「MAX」と11曲目「まあいいか」の2曲に強く惹かれました。「MAX」では「200パーセントMAXで掴め」と檄を飛ばしながらも、「まあいいか」では「肩の力を抜いて / できない自分を責めないで」と柔らかい言葉をかけてくれてもいる。一見、矛盾にも思えるけど、人間にはどっちの感情も必要だなってすごく思えて。

仲宗根 確かに逆のことを歌ってますもんね。それを同じ人が書いてる面白さはあるなあ。

名嘉 曲にする感情はちゃんと人間らしくありたいなと思っているので。まあでも「どっちやねん!」って感じもしますけどね(笑)。だったら「MAX」「まあいいか」の後に「どっちやねん」って曲も入れればよかったな。そこまでは考えが回らんかった(笑)。

新しい音楽を作りたいと思った「突然」

──新里さんも今回は5曲を手がけられています。アルバムラストの「SESSION」は、1曲目の「no rain no rainbow」と同じく、“虹”をテーマに書かれている印象です。

新里 そうですね。その2曲はどちらも“虹”をテーマにして、どっちも制作の最後のタイミングでできたものなんです。なので、最初と最後に収録することで、アルバム全体にも虹がかかるような曲順にしてみました。「SESSION」ではいーず(仲宗根)とひさしぶりにかけ合いながら歌っていくこともできたし、歌詞に関しても初心に戻りながら書けた気がします。「運命の人っているのかな?」という疑問を軸にしながら、それを虹とつなぎ合わせていった感じですね。

──歌詞にある「僕と貴方のセッション」というフレーズは、HYとファンとの関係も想起させますね。

新里 そうですね。HYのライブに来てくれる人たちはきっと僕たちと似た者同士だと思うんですよ。同じ輪の中にいるというか。だから自分の見つめる方向を信じて歩いていけば、きっと運命の人に出会うことができるよってことを歌いたかったんですよね。

──また、新里さんの曲で言うと3曲目の「突然」がすごく新鮮で。

新里 これは僕にとってもチャレンジでしたね。新しい音楽を作りたいって気持ちからシンセサイザーを入れてみました。僕、サカナクションも大好きなので、ちょっとそんなイメージも描いてみた感じです。攻めてみました。

許田 演奏しててもリズム的にすごく新鮮な曲でしたね。全部の曲がそうですけど、この曲は特にライブでどう成長していくかが楽しみな1曲でもあります。

──そして仲宗根さんは3曲書かれていますが、中でも6曲目に収録されているバラード「いつか」の仕上がりには震えました。感動的です。

仲宗根泉(Key, Vo)

仲宗根 アルバムの中で唯一のバラードなので、大きなイメージを持って歌いたいなとは思っていましたね。ただ、実際レコーディングしてみると、意外と軽やか……曲の内容的に軽やかっていうとちょっと変な感じもするけど(笑)。でもわりとリラックスして歌うことができた気がするんですよね。情熱的な激しいボーカルではなく、大草原で歌っているようなイメージで。

──とは言えとんでもなくソウルフルな歌声だと思いますけどね。

仲宗根 まあまあ、後半はそうなるんですけどね(笑)。でも私としてはすごく気持ちを楽にして、心地よく歌えました。

──「いつか」は切ない大人の恋愛を描いたものですが、その前の「Oh! AIWO」はすごくキュートな絵本のような世界観で。これもまた同じ人が書いたとは思えない振り幅だなと。

仲宗根 確かにそうですよね。自分でもこの並びは笑っちゃいました(笑)。うちの娘は「Oh! AIWO」が好きだから車の中でもよく聴くんですけど、次に流れてくるのが「いつか」じゃないですか。でもね、それも一緒に歌うんですよ。ちょっと大人びた感じで、まるで恋を知っているかのように。そんな彼女がすごくかわいくてね(笑)。

許田 19年活動を続けてきた中で、僕らのファン層もかなり広がってきたんですよ。若い方から年配の方まで、中には親子で来てくれる方もすごく多いし。だから今回のアルバムは年齢関係なく、幅広い世代の方々に楽しんで聴いていただけるような曲がそろったんじゃないかなっていう印象もあるんですよね。

すべての人に楽しんでもらいたい

──各曲のテーマは普遍的なものでもあるし、キャッチーなメロディは小さな子供であってもすぐに口ずさめますからね。そこもHYならではの強みである気がします。

名嘉 「音楽って楽しいんだよ」ということを子供たちにも知ってもらいたいという気持ちはここ最近、どんどん大きくなってはいますね。実際、子供に喜んでもらうことって、大人を喜ばせるよりも全然難しいんですよ。つまらなければすぐ寝ますから(笑)。

仲宗根 あははは(笑)。遠慮せず寝るよね。

名嘉 だからこそ楽曲はもちろん、ライブに関しても子供から大人まで、すべての人に楽しんでもらえるものにしようっていうことは常に真剣に考えてます。

新里英之(Vo, G)

新里 そうだね。今回のアルバムにしても、家族で楽しめるようなものにしようという気持ちが常に頭の中にはあったから。そこで感じる温かさみたいなものはこのアルバムにもしっかり表れていると思いますね。

──本作リリース後、6月30日からは新里さんのソロツアーがあり、10月からは来年まで続くアニバーサリーツアーも控えています。楽しみですね。

新里 ソロツアーは、HYの楽曲がどんなストーリーを持って生まれたのかをしっかり語ったうえで、その曲を弾き語りで歌っていく内容なんです。このソロライブを観ていただいてからHYのツアーに来ていただくと、楽曲へより深く入り込みながら、またこの5人の関係性もより感じながら楽しむことができるんじゃないかなと思いますね。

名嘉 で、HYのツアーに関しては、とにかく笑顔で帰ってもらえるライブにしたいと思っています。日頃、学校や仕事、家事や育児でがんばってる皆さんをハッピーにしますので。

許田 1本1本をカラフルな内容にして、そこで生まれるポジティブな感情を持ちながら全国に橋渡ししていけたらいいですよね。そして、ここからは20周年に向けて楽しいことをたくさんお届けしていきたいと思います。

仲宗根 皆さんへの感謝の気持ちを忘れず、皆さんの笑顔をもっと増やしていくために、進化し続けるバンドでありたいよね。

名嘉 うん。自分たちもね、二十歳になるHYにワクワクしてますから!

ツアー情報

HY TOUR 2019-2020
  • 2019年10月17日(木)東京都 かつしかシンフォニーヒルズ モーツァルトホール
  • 2019年10月19日(土)千葉県 君津市民文化ホール
  • 2019年10月27日(日)茨城県 取手市立市民会館
  • 2019年11月4日(月・振休)宮城県 トークネットホール仙台 大ホール
  • 2019年11月16日(土)福島県 けんしん郡山文化センター 中ホール
  • 2019年11月17日(日)岩手県 田園ホール(矢巾町文化会館)
  • 2019年11月24日(日)徳島県 鳴門市文化会館
  • 2019年11月28日(木)静岡県 静岡市民文化会館 中ホール
  • 2019年11月30日(土)群馬県 高崎芸術劇場 大劇場
  • 2019年12月1日(日)埼玉県 狭山市市民会館
  • 2019年12月6日(金)岡山県 岡山市民会館
  • 2019年12月8日(日)広島県 上野学園ホール
  • 2019年12月18日(水)福岡県 福岡市民会館
  • 2019年12月20日(金)愛知県 日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
  • 2019年12月21日(土)石川県 本多の森ホール
  • 2020年1月5日(日)北海道 カナモトホール(札幌市民ホール)
  • 2020年1月10日(金)大阪府 オリックス劇場
  • 2020年1月11日(土)兵庫県 神戸国際会館こくさいホール
  • 2020年1月13日(月・祝)和歌山県 和歌山県民文化会館 大ホール
  • 2020年1月18日(土)新潟県 新潟県民会館
  • 2020年1月25日(土)福岡県 アルモニーサンク北九州ソレイユホール
  • 2020年1月26日(日)佐賀県 鳥栖市民文化会館
  • 2020年1月28日(火)鹿児島県 鹿児島市民文化ホール 第1ホール
  • 2020年1月31日(金)千葉県 野田市文化会館
  • 2020年2月2日(日)東京都 TOKYO DOME CITY HALL
  • 2020年2月9日(日)沖縄県 沖縄コンベンションセンター展示棟