星屑スキャット「化粧室」 PR

星屑スキャット+中塚武|異端の星屑が放つ光のハーモニー

女装家のミッツ・マングローブ、ギャランティーク和恵、メイリー・ムーからなる音楽ユニット・星屑スキャットが、結成から13年の時を経て念願の1stアルバム「化粧室」を完成させた。高度なコーラスワーク、洗練されたハーモニー、カバー楽曲の絶妙な選曲センス、中塚武とタッグを組んだオリジナル楽曲の完成度。その存在感は、NHK BSの音楽番組「The Covers」へのレギュラー出演などをきっかけに幅広い音楽ファン層へと着実に浸透しつつある。音楽ナタリーでは星屑スキャットの3人とサウンドプロデューサー中塚にインタビューを行い、ディープな13年の道のりを紐解いた。

取材・文 / 臼杵成晃 撮影 / 映美

新宿二丁目の異端児が始めたイベント「星屑スキャット」

──星屑スキャットは楽曲アレンジやハーモニーの重ね方、カバー選曲の妙など、音楽マニアとも少し異なる……音楽に対する根の深いこだわりを持っているんだろうなと感じているのですが。

ミッツ・マングローブ よく言うとね。でも最近はそれがネックなんじゃないかって私は思ってる。めんどくさいでしょ? リスナーからすればそんなこだわりなんて。もうちょっとまな板の上に乗っかったほうが、きっと食べやすいじゃない? 和恵さんなんてフグの毒食べさせてるようなものだから。

ギャランティーク和恵 肝をね(笑)。珍味を。

左から中塚武、ミッツ・マングローブ、ギャランティーク和恵、メイリー・ムー。

──歌謡曲の血を受け継いでいるグループだとは思うんですけど、いわゆる「懐かしの歌謡曲」みたいな感じではなく、1990年代の“和モノ”的解釈のアプローチですよね。

ミッツ どういうこと? 和モノって。

中塚武 昭和歌謡のレアグルーヴ的な解釈があったんですよ。

ミッツ 私が一番苦手なやつ。マニア的な、「売れてない曲のほうがいい」みたいなやつでしょ? 和恵さんはそっちよね。

和恵 歌謡曲の話をしても、2人と同じ感じにはならなくて。私はDJが歌謡曲で踊らせることが新鮮だった“和モノ”の影響を受けてます。

──そんなお三方がどのようにして星屑スキャットを結成するに至ったんですか?

ミッツ・マングローブ

ミッツ 3人とも同じ時期にドラァグクイーンとしてデビューして、ソロで活動はしていたんですね。ドラァグクイーンは、ショーでは基本歌わずにリップシンクでやるのが鉄則なんです。和恵さんは当時から女装して歌1本でやっていたので、新宿の文化の中では異端児でしたね。

和恵 私は青い部屋(シャンソン歌手 / 推理作家の戸川昌子が1967年にオープンさせた東京・渋谷のサロン。多くの文化人が足を運ぶ社交場として愛され、2000年から2010年まではライブハウスとして機能していた)で歌手活動を始めたんです。そのあと、2002年頃だと思いますけど、当時お世話になっていたシャンソン歌手のソワレさんが青い部屋を離れて……。

中塚 僕も青い部屋でソワレくんとイベントやってましたよ。

和恵 えっ、そうなんですか?

中塚 和恵ちゃんがゴールデン街に移動した頃、僕は渋谷のOrgan Barに行きました。

ミッツ そのあとぐらいですね。和恵さんは、あえて二丁目で、生歌でショーがやりたいという構想を持っていて、それで私に声をかけてくれたんですよ。最初はただ2人で順番に歌を歌うだけのイベントだったんですけど、そのイベント名が「星屑スキャット」だったの。

3人分の知識を合体させたら……

──最初は2人のイベントとしてスタートしたんですね。メイリーさんも同じ頃近くにいたんですか?

ミッツ ドラァグクイーンは全国でつながりがあるので、年齢やデビューが近い人の存在はだいたい知ってるんです。私がショーでたまにふざけて生歌で歌ってたのを和恵さんは知っていて。

ギャランティーク和恵

和恵 ショーではみんな洋楽や歌謡曲でリップシンクをしてるんですけど、その選曲にもセンスがあって。メイリーさんも選曲的に和モノが好きそうだなあって気になっていたんです。

メイリー・ムー そうね。でも私は2人に比べたら全然、音楽はただ好きで聴いていただけで。

ミッツ もともとは日本語の曲でリップシンクするのもご法度だったんです。英語の曲、もしくはフランス語のシャンソンなんかで、お客さんに言葉の意味が伝わらないものを自分の体で表現するのが、日本のドラァグクイーンの文化だったの。それがうちらの世代あたりから「ちょっと美空ひばりやっちゃう?」みたいな流れができてきて、先輩方にはいかがなものかと思われていたかもしれませんけど。

メイリー オーストラリアやアメリカで生まれたドラァグクイーンの文化が、その頃から日本に根付き始めたということかもしれないよね。自分たちのやり方を見つけて。

ミッツ クラブシーンも二丁目界隈ではハウスやテクノが主流だったけど、その頃からJ-POPや歌謡曲のDJが出てき始めて。私も知らずに和モノの流行に乗ってたのかもしれないわね。

和恵 直感的にそう感じていたんじゃない?

──当時の二丁目の方々の中でも、特に音楽にこだわりを持っていたのが星屑スキャットのお三方?

ミッツ 二丁目には、いろんなジャンルの偏ったところにめちゃめちゃ特化した人がいるのね。でね、例えば美空ひばりが好きだとするじゃない? でも同じ業界の中にもっと詳しい人がいたら、もう「美空ひばりが好き」と言っちゃいけない風潮があるの。

中塚 えー! すごいねえ(笑)。

ミッツ 極めた人しか語ったりショーで使ったりしちゃいけない風潮があって。めちゃくちゃ映画に詳しい人、歌謡曲に詳しい人、ファッションに詳しい人……どのジャンルにも詳しい人がいっぱいいたから、自分が突き詰めるべきものをことごとく失っちゃったんです。「もう追い付けないな」って。「これから一生かけてもこの人が観た映画の本数には追い付けない」と思ってから、もう一切映画観なくなっちゃって。わかんなかったらその人に聞けばいい。「ソフィア・ローレンってどんな人?」とかさ。

中塚 すでに字引がいるからね(笑)。

メイリー・ムー

ミッツ メイリーさんもそうだよね。周りに包囲されちゃった感じでしょ?

メイリー そうそうそう。私たちがデビューしたときには、ある程度ドラァグクイーンのシーンが広がっていて、あるようでないようなヒエラルキーができあがっていたんです。隙間産業としてしか入れるところがなくて(笑)。輪の中にはいるんだけど、枠の外で遊んでいるような感覚がありましたね。

ミッツ 2人にはこんな話してないと思うけど、3人分の知識を合体させたら、二丁目でも立ち位置を確立できるという考えが明確にあったんですよ。

3声のハーモニーが生まれるまで

──星屑スキャットは高度な3声のハーモニーが特長的ですが、もともと皆さんには楽典的な素養があったんですか?

ミッツ まったくないです。そもそも3人一緒に歌うつもりもなくて、1人ひとり別々に歌ってたんですよ。なぜなら、定期的にイベントをやっていた二丁目のクラブには、マイクが2本しかなかったから。

中塚 あはははは(笑)。

ミッツ 物理的に3人いっぺんに歌えなかったの。たまに2つのマイクを3人で分け合って歌うことはあったけど。あるとき営業で出たお店にマイクが3本あったから「一緒に歌える」って言って、キャンディーズか何かを歌ったんです。そのときに、ただ3人で歌だけじゃつまらないから「ちょっと下ハモってみるね」みたいな。カラオケでもよくあるじゃない、勝手にハモったりするの。そんな感じで和恵さんがやり始めました。

和恵 サラッとやったらできちゃった、みたいなところからなんですよ。お遊び。

ミッツ 和恵さんには音感とか和声が自然と身に付いてるんです。それで、3人で歌う仕事が増えた頃に、徐々に徐々に複雑にしていったんですよ、この人が(笑)。

和恵 小さい頃にエレクトーンをやっていて、それでコード感覚は身につけたんですけど、そのレベルが音楽的に高いか低いかは実際わからないんですよ。自分の中で鳴っている音をみんなに歌ってもらっているだけで。

メイリー 「マグネット・ジョーに気をつけろ」(2012年2月に配信で、同年6月にCDでリリースされた星屑スキャットの1stシングル。オリジナルは1970年代後半の3人組アイドルグループ・ギャル)のレコーディングのとき、レコード会社の方に「君たちは実力以上のことをやろうとしすぎ」って言われて(笑)、そんな難しいことやってたの?みたいな。

中塚武

中塚 僕が星屑スキャットのお手伝いを始めたときはまだ試行錯誤の段階で。会議室に集まって、ハモやキーレンジをどうするか考えているとき、僕は少し間口の広い、簡単な和音を選んだんですよ。そしたら「ちょっと違うな……」って和恵さんが言い始めるんです。で、「もしや、こっち?」って難しいほうの音を当てると「そう、それそれ」って(笑)。頭の中で難しいほうのハーモニーが鳴ってるんですよね。別にナメてかかってたわけじゃないですよ? 3人の実力は知っていたので。だからその最初の打ち合わせで「あ、もう2段論法みたいなのはいらないんだな」と安心しました。

ミッツ 女装も一緒ですよ。履きづらい靴のほうを選びます。

中塚 あはははは(笑)。

ミッツ 「これは着こなせないだろう」というドレスを選ぶんです。逆に王道は怖いというのもありますし。それはもう癖として染み付いちゃってるのかも。

メイリー あまのじゃくってのが一番あると思いますけどね(笑)。

中塚 いやでもホント、この3人の音感はすごいですよ。

星屑スキャット「化粧室」
2018年4月25日発売 / 日本コロムビア
星屑スキャット「化粧室」

[CD2枚組]
3500円 / COCP-40302

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DISC 1
  1. Knock Me In The Middle Of The Night
  2. 愛のミスタッチ
  3. ANIMALIZER(2018 new mix)
  4. 半蔵門シェリ
  5. 波の数だけターコイズ
  6. 降水確率
  7. 星屑スキャットのテーマ(2018 new mix)
  8. マグネット・ジョーに気をつけろ(シングル・バージョン)
  9. Interlude - Cosmetic
  10. コスメティック・サイレン
  11. REMEMBER THE NIGHT(2018 new mix)
  12. HANA-MICHI

<Bonus Track>

  1. ご乱心(2018 extended mix)
DISC 2
  1. 新宿シャンソン

公演情報

星屑スキャットLIVE2018
「惑星たちのダンステリア」

2018年9月29日(土)東京都 クラブeX
OPEN 17:30 / START 18:15

2018年9月30日(日)東京都 クラブeX
[1回目]OPEN 13:30 / START 14:15
[2回目]OPEN 17:15 / START 18:00

星屑スキャット(ホシクズスキャット)
星屑スキャット
女装家のミッツ・マングローブ、ギャランティーク和恵、メイリー・ムーの3人からなる音楽ユニット。2005年にミッツとギャランティークが始めたイベント「星屑スキャット」に端を発し、メイリーを加えた3人組ユニットとして活動を始め、2012年6月にシングル「マグネット・ジョーに気をつけろ」で日本コロムビアよりメジャーデビューを果たす。洗練されたハーモニーと個性豊かな歌声、歌謡曲のエッセンスを継承した音楽性で徐々に注目を集め、NHK BS「The Covers」へのレギュラー出演など活躍の場を広げている。2018年4月に初のフルアルバム「化粧室」をリリース。同年6月には東京・COTTON CLUBで2DAYSワンマンライブ「星屑スキャット LIVE2018 化粧室で逢いましょう」を開催し大成功のうちに収めた。9月には東京・クラブeXで再び2DAYSワンマンライブ「星屑スキャットLIVE2018『惑星たちのダンステリア』」を行う。