浩督はなんでも自分で作るSSW、新作「残り香」の魅力を紐解くインタビュー (2/2)

ごはんと一緒で「できたてがおいしい」

──6カ月連続リリースは第6クールまでやるということですが、「大変だな」という感覚なのか、ワクワクするのか、どういう感じなんでしょう?

こうやって取材の機会もいただけましたし、ワクワクしてますね。

──ちなみに、今持ち曲はどれくらいあるんですか?

かなりストックしてた時期もあるんですが、今は30~40曲ですね。“アーティストあるある”かもしれないんですが、「今日より明日、明日より明後日」なんですよね。ごはんと一緒で曲もできたてがおいしいと考えると、ストックはあまりいらないのかなって。例えばストックしていた曲を1年ぶりに聴いたら「あ、これは使えるかもしれない」と思う可能性があるので保存はしていますけど、「こういう曲を作りたい」と思ったら一気に全編作ってしまうことが多いですね。

──このスピード感でリリースしているということは、あまり滞ることなく1曲ができあがるのでしょうか?

歌詞の面では苦労することがありますね。社会的なテーマだとスムーズに書けるんですが、恋愛についての歌詞が最近書きづらくなっているんです。それが自分にとっての1つの山で、フィクション作家にならなきゃいけないなと思っているところです。第3クールからはフィクションで書いた歌詞が通用するかどうかの勝負だと思っています。

──多くのことをDIYでやられていますが、音楽活動において一番楽しさを感じるのは何をしているときなんでしょう?

ライブを頻繁にやっていた頃は、ライブでお客さんからいいレスポンスをいただけたときがうれしかったんですが、今はやっぱり自分がイメージしていたトラックができたときですね。「天才だな!」って思ったりします(笑)。

──自分の作品に自信がないと制作活動は難しいですよね。

そうですね。続かないと思います。

浩督
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プラモデルやレゴと通じるもの

──インディペンデントな活動をする中で、現在TikTokのフォロワー数が1万人超いますが、SNSを活用するうえで意識していることはありますか?

MVも自分でディレクションしているんですが、「楽曲をどう映像で見せるか」という部分を強化しないといけないなと思ったんですよね。そう考えると、TikTokというプラットフォームがとても有効だなと思ったので、リリースのたびに映像を上げたり、トラックだけを上げていったら、少しずつフォロワー数が増えていきました。大きな反応があったのは、自分が出演しているMVを公開したときですね。今は顔を出さないアーティストも増えていて、それがミステリアスな魅力につながっているところもあるので、最初は僕も顔を出してなかったんです。でも、あるタイミングで「自分が歌唱している映像を出してみたらどういう反応があるのかな」と思ってやってみたら、「こういう人が歌ってるんだ!」という反応があって、フォロワーが増えました。ただ、TikTokでフォローしてくれている人の多くはライトリスナーだと思うので、いずれはたくさんライブをやるなりして、その人たちをどうヘビーリスナーにしていくかということを考えていかなきゃいけないと思っています。

──MVの企画から映像編集も自ら行うのはどういう理由があるんでしょうか?

もともとなんでも自分でやりたがりの性格ではあって、それで映像も自分で手がけ始めたらやっぱり楽しかったんですよね。あと、トラックメイクもそうですが、身近にやっている人がいないというのもあります。それで「自分でやるしかない」と思ってやり始めたら、自然とできるようになった。もちろんこれから誰かにお願いすれば、新しい要素を取り入れられると思うのですが、今のところ「自分の作品なので、自分で映像もディレクションしたい」という気持ちが強いですね。

──物作りが好きなんでしょうね。

そうなんですよね。それについて最近考えてみたんですけど、振り返ると小中高生の頃は器械体操、野球、陸上といったスポーツをやるのと並行して、家に帰るとプラモデルやレゴを作ることが好きだったんです。だから、やっぱりものを作るのが好きなんだろうなって。その感覚が消えない限りは、年齢を重ねてもずっと音楽をやっているのかなと思います。

──確かに、プラモデルやレゴも土台から全部を作り上げるわけですもんね。

それが楽しいですね。過程も楽しいんですよ。例えば富士登山も一番下から頂上を見ると「うわ、遠いな」と思うかもしれませんが、3合目、4合目まで登ったときに下を見ると、かなり登ったことがわかるし、頂上が近くに見えて「いけるんじゃないか」と思ったりする。僕にとっての作品作りはその感覚に似てますね。マラソンでも「まだ5km地点か」と途方に暮れたりもすると思うんですが、ランナーズハイみたいな感じでそれも楽しめるようになってきています。僕の場合、頂を見すぎないことが重要かもしれないです。完成形のことを考えると、「まだまだだな」と思って逆に気が緩んでしまったりするので、その都度「次はこれをやろう」と思って集中して楽しんでますね。自然とそれができるようになってきました。

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ライブは本当にやりたい

──作ったらすぐに配信して、リスナーに届けることができるという今の時代の面白さってどう捉えていますか?

すごくいい時代だと思っています。一方で、情報が多すぎて届かなくなってしまうこともありますよね。だから発信の仕方も都度考えないといけない。届けるために有効なのはSNSなのかもしれないし、MVの作り方なのかもしれないし、考えることがたくさんありますよね。

──トラックから曲を作って、どういうMVを作るかを企画して、公開の仕方も考える。やることが本当にたくさんありますね。

そうなんです。1カ月が大体4週間あるとしたら、1週目はトラックを作って、翌週はメロディ、翌週はリリック、レコーディング、配信曲提出、というふうにしっかりスケジューリングしないと回らないんですよね(笑)。今はまだ詰まったことはないんですが、6クール終えるまでにどこかで詰まると思うんですよ。そうなったときにどうするかということを想像するのも楽しいんです(笑)。誰かに頼るのかもしれないですし。今の時点でのシーズン3や4の構想としては、フィーチャリングをやっていこうと思っています。ただまずは土台を作って「浩督ってこうなんだ」ということを定義しないとダメで。土台がある程度できあがって、自分がコラボレーションしたいアーティストと同じ目線を持てるようになってから「お願いします」と言いたいんですよね。先にフィーチャリングをしてしまうとあまりいいことにならないと思うんです。

──注目はされるかもしれませんが、それが一時的なもので終わる可能性が大きいですよね。

そうなんです。

──無事6カ月連続新曲リリースの第6クールが終わったときは、どんな景色が見えると思いますか?

また自分で“山”を作るでしょうね。その山がライブなのかどうなのか。ライブは本当にやりたいんです。でも、今は曲を作って毎月配信をする時期で。富士登山で言うとまだ2合目ですからね(笑)。

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プロフィール

浩督(ヒロマサ)

作詞作曲、トラックメイク、ミキシングをこなすシンガーソングライター。現在は6カ月連続リリース企画の第2クール「SEASON II」を展開中で、2023年10月に新曲「残り香」を配信リリースした。楽曲制作のみならずミュージックビデオの企画、編集も自ら行っている。