平野莉玖のすべてを注ぎ込んだ曲

──それぞれの楽曲が持つテーマとしては、恋愛をモチーフにしたものから、ご自身のアティチュードを強く感じさせるもの、聴き手の背中を押してくれるメッセージを有するものまでさまざま。そこに関しても幅広いですよね。

そうですね。その時々で自分が感じたことを、世の中の状況を見定めつつメッセージにしていけたらいいなと思っています。それはサウンドも一緒で。例えば「細胞レベルで恋してる」なんかはちょっと昔のR&Bっぽい曲ですけど、今の時代にあえてそこを打ち出していく面白さがあると思うんです。自分の好きなものという大前提を守りつつ、今はどんな曲を皆さんが求めているか、どんな曲なら聴いてもらいやすいかをしっかり感じ取って自分のクリエイティブに反映させていきたい。そのために、常にいろんなアンテナは張っておくように意識しています。

──アルバムで言うと、ご自身でリリックを書かれたのはどの曲になりますか？

ガッツリ書かせてもらったのは「Just The Way We Are」ですね。僕は英語が苦手なので、ちょっと手助けしていただいた部分はありますが、主なリリックはすべて自分で書きました。なので、けっこう自分の今の感情がゴロッと出てると思う。トラックに関しても僕が選んで決めた曲ですし。

──これまでのキャリアを感じさせるラップメインな曲でもありますよね。

ラップメインでありつつも、メロディを歌う部分もしっかり盛り込んでますし、ミュージックビデオを観てもらえばわかりますけど、サビではダンスもきっちり見せているんですよね。そういう意味では今まで培ってきた平野莉玖のすべてを注ぎ込んだ曲でもあって。

──MVでのダンスは圧巻ですね。そこもまた平野さんの大きな武器になっていることは間違いないなと。

ありがとうございます。MVでのダンスシーンはぜひ注目してほしいですね。同時に、“ありのまま”の自分を表現するために、生まれ育った名古屋の街を歩くシーンもあって。そこでの僕の表情には地元への思いが浮かんでいるはずなので、そういう部分もぜひ観てもらいたいですね。

名古屋のシーンを引っ張っていきたい

──初回限定盤の1曲目「Intro」では、平野さんが再始動するきっかけとなったBANTY FOOTのJUNさんがフィーチャーされていますね。

めちゃくちゃカッコいいですよね。JUNさんはライブでのマイクパフォーマンスがものすごくカッコいいので、アルバムのイントロにガッツリメッセージを込めてもらいたかったんです。その場で即興で言葉を考えてくれて、「よし。じゃあ録ろうか」と言って颯爽とブースに入られて。録音されたものを聴いた瞬間、鳥肌が立ちました。もともと大好きで聴いていたアーティストの方が自分のアルバムのために協力してくださっている姿を見て、めちゃくちゃ感動しちゃいましたね。JUNさんはライブで競演する中でどんどん距離が縮まって、今では厳しい意見もくださる最高の先輩です。

──また、アルバムにはnobodyknows+のCrystal Boyさんが参加された「逢いたい」や、SEAMOさんをフィーチャリングゲストに招いたカバー「Cry Baby」も収録されています。BANTY FOOTのJUNさんも含め、名古屋発のアーティストで客演を固めているところに平野さんの地元愛が感じられました。

地元、大好きなんですよ。JUNさんはもちろん、SEAMOさんもCrystalさんも地元を大事にされているアーティストなので、僕もそういうところを見習いたいなと思っていて。同時に、ここ最近は名古屋からドカンと売れるアーティストがあまり出てきていない印象もあったので、地元の音楽シーンを僕が引っ張っていきたいという思いもあるんです。今後も名古屋を大事にしていきたい気持ちはものすごく強いです。

──Crystalさんとの制作はいかがでしたか？

めちゃくちゃ楽しかったです。Crystalさんとやった「逢いたい」はこのコラボのために作ったのではなく、もともとあった曲なんですよ。

──初回盤にはオリジナルの「逢いたい」も収録されていますもんね。

そうなんです。この曲の自分のラップパートをCrystalさんバージョンにしてもらったら絶対カッコいいものになる確信がありました。Crystalさんが書いてくれたリリックには名古屋にまつわるワードが出てくるので、そのあたりも注目してほしいですね。僕のソロバージョンの「逢いたい」とはまた違った雰囲気になっているから、聴き比べてもらうと面白いんじゃないかな。

夢のようなアルバムに

──SEAMOさんとの制作はいかがでしたか？

僕はSEAMOさんの「Cry Baby」（「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ 歌うケツだけ爆弾！」主題歌）が大好きだったんですよ。幼い頃、「クレヨンしんちゃん」の映画でこの曲が流れたとき、「音楽で人を感動させることができるんだ！」と初めて体感したというか。で、時が経ってSEAMOさんとイベントでご一緒させていただく機会があったので、そこで「カバーさせてください！」とお願いしました。初対面でそんなお願いをするなんてね、まあまあ失礼だったと思うんですけど（笑）、SEAMOさんは快くOKしてくださって。SEAMOさんは「カバーだったら莉玖くんだけでいいんじゃない？」とおっしゃったんですが、「いや、そこはぜひ一緒に歌いたいです！」と無理なお願いまでさせていただきました。レコーディングでは緊張もしましたけど、自分の思いのすべてをぶつけていくことで、また1つ新しい「Cry Baby」を生み出すことができたんじゃないかなと思っています。1stにして、本当に夢のようなアルバムになっちゃいました（笑）。

──先ほど、ご自身の名古屋愛を語っていましたけど、アルバムには「名古屋Delight」という楽曲も収録されていて。かなり面白い仕上がりですね（笑）。

「ずっと名古屋を大事にしていきたい」という思いを込めて、名古屋弁でラップしてみました。これ、名古屋以外の人が聴いたら半分くらい何言ってるかわからないかもしれない（笑）。名古屋のいいところが伝わるように歌ってますし、ライブでは絶対に盛り上がる1曲になったと思います。早く生で歌いたいですね。

──けっこう攻めた歌詞もあって。「ペラペラ 東京弁歌って Sell out / 耳がこそばいって Get out」って歌っちゃってますけど大丈夫ですか（笑）。

あははは。攻めちゃいましたね。僕もほかの曲では東京弁で歌ってるのに（笑）。まあでも、完全に名古屋愛にフォーカスした曲にしたかったので、これくらい振り切ったほうがいいかなという判断ですね。

兄はずっと尊敬しているアーティスト

──キャリアに裏打ちされたラップスキルとともに、平野さんのボーカル力も堪能できるアルバムだと思います。今回、歌に関して新たな挑戦ができた曲はありますか？

Nu CANdYと一緒にやり始めたことで、歌い方や表現の仕方に関していろいろなアドバイスをもらえるようになって。そこで得た自分なりの気付きを注ぎ込めた「Doubt it」はけっこう大事な曲ですね。それまでは自分の声の魅力がどこにあるのかが見えていなかったりして、アーティストとして自信を持てない部分もあったんですよ。でも、「Doubt it」で初めて使ったファルセットが自分の武器の1つだということに気付けたことで、殻が破れたというか。

──なるほど。

あともう1曲。アルバムのラストに入っている「PlayBall」も、Nu CANdYのメンバーにアドバイスをもらいながら、自分なりに挑戦できた曲です。曲自体すごく難しかったし、表現に関してもかなり苦戦はしたんですけど、最終的にできあがったものを聴いたときに、自分でもすごくカッコいい仕上がりになったと実感できて。平野莉玖をまた成長させてくれた曲だと思います。

──曲の内容も含め、平野さんの未来につながっていく感じもありますしね。

そうなんですよ。改めてスタートラインに立ったんだという意思表示とともに、次の一歩をしっかりと感じてもらえるんじゃないかな。そんな思いを込めて、アルバムの最後に入れることを決めたりもしましたし。自分自身を奮い立たせてくれる曲ですが、これを聴いた人にとっても闘志を燃やすきっかけになってくれたらうれしいですね。

──アーティストとしての未来に向けた目標もありますか？

自分で言うのもアレですけど、僕はステージに立って歌っているときが一番輝いていると思うんですよ。なので1秒でも長くステージに立っていられるように、今後もたくさんのライブをしていきたいと思っています。そして、まず1つの大きな目標である日本武道館でのライブを叶え、たくさんの方に感動を届けられたらいいなと思っています。

──今後の活躍が楽しみです。ちなみに、お兄さんである平野紫耀（Number_i）さんはアーティスト活動に関して何かおっしゃっていますか？

特にないかなあ。お互いに忙しくやっているのでなかなか会う機会もないんですよ。会ったら会ったであんまり仕事の話はしないですし。たまーに「最近、どんな音楽やってるの？」みたいな話をすることはありますけどね。今回アルバムをリリースすることも直接は話してはないです。でも親を通して、たぶん知ってくれてはいると思います。

──お兄さんの活躍は刺激になりそうですよね。

そうですね。僕の中での兄はずっと尊敬しているアーティストだし、幼い頃から何をやっても届かない人でもあるんです。そんな兄がいてくれるからこそがんばれるところは間違いなくありますね。