日向坂46 潮紗理菜×山口陽世インタビュー|2ndアルバムに詰め込まれた3年間の軌跡と卒業への思い (2/3)

シングルとは違うワクワク感、潮&山口の思い出のアルバム

──それではここから2ndアルバム「脈打つ感情」の話を。“ひらがなけやき”けやき坂46としての唯一のアルバム「走り出す瞬間」が2018年6月、そして日向坂46としての1stアルバム「ひなたざか」がリリースされたのが2020年9月なので……すでに前作から3年以上経ってるんですね。

 わあ、ホントだ。

──曲単体の配信がスタンダードになった今、アルバムという形態の存在感も昔とは変わりつつありますが、お二人はアルバムというものに対してどういう印象を持っていますか?

 シングルとは違うワクワク感、特別感はありますね。どう?

山口 私も自分が購入するときはアルバムのほうがワクワク感があります。集大成と言いますか、それまでの活動のすべてを詰め込んだもの、という印象です。

山口陽世

山口陽世

──リスナーとして思い入れのあるアルバムを挙げるとしたら?

山口 私はガチめに……「走り出す瞬間」です。

 おおー!

──けやき坂46のファンとして。

山口 実家を出るときに持ってきたくらい好きなんです。

 鳥取から? すご!

山口 買ったときのワクワク感は忘れないですし……ちょうどその頃が合同オーディションの募集期間だったんですよ(※山口は2018年の「坂道合同オーディション」をきっかけに日向坂46に加入した。参照:乃木坂46、欅坂46、日向坂46「坂道研修生」配属先グループ発表)。そんな思い出もあって、特別感のあるアルバムですね。

──なぜそこまで、ひらがなけやきに思い入れが?

山口 いやー、とにかく好きで。特別キラキラして見えました。

──そんな山口さんが日向坂46の魅力を端的に言葉にすると、どうなりますか?

山口 ひらがなけやきの頃からですけど……一体感と言いますか、みんなで1つの場所に全力で向かっている姿勢に私はすごく惹かれて。それは今でも変わっていなくて、どこでも経験できない場所が、この日向坂46にはあると思うんです。

 確かに、それはあるね。

山口 温かいですね。ひと言で言えば、温かい場所。

──なるほど。では潮さんの思い入れのあるアルバムは?

 私も1枚を挙げるとなると、自分たちの関わった作品になってしまうんですけど……「真っ白なものは汚したくなる」ですかね。

──欅坂46(現・櫻坂46)唯一のアルバムとして2017年にリリースされた作品ですね。日向坂46が今も歌い続けている「誰よりも高く跳べ!」や「永遠の白線」、合同曲「W-KEYAKIZAKAの詩」などが収録されています。

 もう全部の曲が大好きで。りまちゃんちっく(潮、加藤史帆、齊藤京子、佐々木久美、高本彩花によるユニット)の「沈黙した恋人よ」は初めてのユニットだったし、初めてがいっぱい詰まったアルバムだから……もうアルバムタイトルを聞いただけでジーンとくるくらい好きです。

潮紗理菜

潮紗理菜

日向坂46の3年間が詰まった「脈打つ感情」

──タイトルと言えば、2ndアルバムの「脈打つ感情」というのもシンプルながらインパクトの強いタイトルですよね。

 最初に聞いたときはパッとイメージできなかったんですけど……脈打つようないろんな感情、喜怒哀楽をともにしているというのは日向坂46らしいなと思いました。脈は速くなるときもあれば、ゆっくりなときもある。感情によってそれは変わるので、そこも日向坂46らしいなって。

山口 アルバムが発売されると決まったとき、最初に「2ndアルバムでは日向坂46のライブ感を表現したい」という説明があったんです。脈が速くなったり、感情が揺れ動いたり……そんな日向坂46のライブがバン!と表された感じがして、私はすごく好きです。

 アルバムにはライブを通して育ってきた楽曲もたくさん入っておりますし、リード曲の「君は0から1になれ」の振付は、おひさまの皆さんにもペンライトを持って踊っていただけるように、TAKAHIRO先生がライブでの光景をイメージして考えてくださっています。

──そう考えると1stアルバムは真逆ですよね。コロナ禍真っ只中の2020年には「ライブを想定したアルバムを」という発想はなかったでしょうし。

 そうですね……。急にライブができなくなったタイミングだったので。

──そこからの時間経過をアルバムに収録されるシングル曲を軸に見ると、2020年5月発売の「君しか勝たん」から「ってか」「僕なんか」「月と星が踊るMidnight」「One choice」、そして今年7月発売の「Am I ready?」までの6枚分の期間になります。

山口 ひなのちゃん以外の三期生3人が初めて参加したシングルが「君しか勝たん」なんですよ。

 そっか!

山口 最初に参加した曲が1stアルバムの表題曲だった「アザトカワイイ」で。1stアルバムはあの1曲だけだったから、自分がこのアルバムの中に全部いるのが、なんだか新鮮です。1周した感じがして。

 確かに。三期生の成長のすべてが詰まっているアルバムと言えるかもしれない。そう思うとすごいね。

山口 「君しか勝たん」もコロナ禍だったので、ライブで声を出さなくていいように、クラップとか入ってましたもんね。

 そうだねー。時代の変化も感じられますね、このアルバムは。2ndアルバムの注目ポイントとして、ボーナストラックがありまして。今回のツアーの音源が各仕様ごとに1曲ずつ、全部で3曲収録されるんですよ。ライブの温度感そのままの音が音源化されるということで……それこそ時代だよね。クラップしかできなかった曲から、日向坂46のライブが戻ってきたぞ!と感じられる最新のライブ音源まで、時代の変化を感じてもらえると思います。

左から山口陽世、潮紗理菜。

左から山口陽世、潮紗理菜。

──丸3年、と考えるとなかなかの時間ですね。

山口 人が変わるには十分な時間ですね(笑)。「君しか勝たん」の頃の自分を思い出すと、ずいぶん変わったなと思う。どのシングルにも思い出が詰まってますね。

 でも曲で見るとあっという間じゃない? 最近かなと思うけど、年数で見ると3年経ってるんだねー。濃いんだなあ、日々が。

雨に感謝

──録り下ろしの新曲について詳しく聞かせてください。リード曲の「君は0から1になれ」は今までの日向坂46にはあまりなかったタイプの大人びたムードのある曲調で、そこに最年長のリーダー佐々木久美さんがセンターとして立っているのがすごくしっくりくるというか。お二人はこの曲にどういう印象を持ちましたか?

 歌詞に注目してみると、背中を押してくれるんですよね。明るく「がんばれ!」と言われてがんばれる人もいれば、明るく言われることでちょっとつらくなっちゃう、重く受け止めてしまう人もいると思うんですね。それを、グループ結成からすべてのことを経験してきたキャプテンがセンターに立って引っ張ってくれることで、この曲の持つ意味が何倍にも強く引き立っていると思います。すごく繊細な歌詞なんですよね。

山口 全部言ってくれた……。

 いやいや(笑)。

山口 さらに加えるならば……私はこの歌詞を自分なりにいろいろなものに重ねて聴いてみて、ひらがなけやきから日向坂46になった、0から1になったグループの姿に重ねたときに一番しっくりきました。何かに夢中になって、何もなくても自分たちでつかみ取りに行くカッコよさ。今の日向坂46だからこそ歌える曲と言いますか、これからの日向坂46もこの曲とともに成長していきたいなと思いました。

──先ほど少し潮さんのお話に出てきましたが、MVの撮影はいかがでしたか?

 雨がすごかったことしか記憶になかったくらい、雨でした!(笑) すごかったよね?

山口 撮影は2日間で、1日目は真っ晴れで「夏!」って感じだったんですけど、2日目がもう……これ再開できるの?ってくらい雨が降ってきて。でも、その雨の中で撮った2サビがめっちゃカッコよくなりました(笑)。みんな髪もびちゃびちゃで、それでも何も気にせず一心不乱に踊っている姿が曲にぴったり合っていて。

 あのときの空気感がめちゃめちゃ日向坂46だなと思った。最初は「うわ、なんでこのタイミングで雨なんだよー」って感じだったのに、その数分後には「もっと降れ!」みたいな(笑)。逆に「行っちゃえ行っちゃえ!」みたいなムードになって、スタッフさんが「もうちょっと待ちましょうか」とおっしゃってるのに「いやいや、もう行けます。行っちゃったほうがいいと思います!」とか言って、みんな自ら外に出たりして。それが私たちが思う「日向坂46らしさ」に通じているというか。

──対応力、即興力が磨かれて、どんな場面も好転させる勢いとチームワークがある。

 うんうん。みんなが一緒なら怖くない!みたいな。みんなとならどこへでも行ける、なんでもできる……という日向坂46らしさが垣間見れた瞬間でした。最後のMV撮影でそれを感じられたのは、本当にうれしかった。普段どんなに前髪を気にしている子も「行こう!」みたいなムードになるんですよ。

山口 ふふふふ。

 メイクさんが鏡を持って「大丈夫?」と来てくれても「いや大丈夫です」って。それは決して強制的ではなくって、自然とそうなるんですね。みんなの心が通い合う瞬間。日向坂46の大好きなところですね。

山口 虹も見れましたしね。

 そう! しかもダブルレインボーが。雨が降らないと虹は見れませんから。

山口 ……こういうところですよ!(笑)

──ポジティブですね。

 みんなで一緒に虹を見るなんてそうそう経験できないし、誰かと一緒に見ることでうれしい気持ちは何倍にもなるから。

山口 あの瞬間すごかったですよね。みんな「虹だー!!」って喜んでた。

 虹でここまで喜べる子たち、今どきそんなにいないと思いますよ(笑)。みんな幼稚園の子みたいだったよね。

山口 そこはホント、雨に感謝ですね。