同期・渡邉美穂の卒業と節目のシングル「僕なんか」
──グループの仲間であり二期生の仲間でもあり、さらにはごりごりドーナッツの仲間でもある渡邉美穂さんの卒業は、2人にとって大きな出来事ですよね(参照:日向坂46渡邉美穂が7thシングルの活動をもって卒業へ「自分の足で踏み出してみようと思えた」)。
松田 最初に聞いたときは驚きましたけど、美穂がいっぱい考えて決断したことだから、それを尊重したいという気持ちがメンバーみんなにあると思いますし、卒業するまでの日々で美穂がやりたいことを全部やって「満足!」と言って卒業してくれたらいいなと今は思っています。近しい存在で常に支え合ってきたメンバーでもあったので、そういう時間が少なくなっちゃうのは寂しいけど、先のことを考えて、自分のやりたいことを決めて卒業する美穂のことをカッコいいなと思うし……いろんな感情がありますね。
富田 今は新メンバーのオーディションをしているんですけど、これから入ってくる子にも美穂に出会ってほしかったなーという悔しさがありますね。美穂は人とのつながりを大切にする人なので、これからもいろんなところで愛される人になるんだろうなって。美穂のこれからが楽しみという気持ちです。
──ともに切磋琢磨してきたメンバーがグループを去り、さらには新メンバーのオーディションが行われているというタイミングで。次に作品が出るときは新メンバーが加わった形になるかもしれないし、ニューシングル「僕なんか」は図らずも現体制での節目の作品となりましたね。
富田 そうですね。今回のシングルは全部の曲で、どこか美穂のことを思いながら歌っていて。私たちが勝手に関連付けてるだけかもしれないですけど、心のどこかに美穂のことを考えながらこのシングルを作り上げました。
──「僕なんか」は3月末のドーム公演で初披露されたあと、4月上旬にはMVも公開されて、おひさま(日向坂46ファンの呼称)の皆さんはすでにたっぷり聴き込んでいると思います。お二人はこの曲にどういう印象を持っていますか?
富田 ピアノとアコースティックギターで始まって「しっとりめな曲なのかな」と思ったら、サビでは意外とビートを強く刻んでいて。イントロの印象とサビの印象がけっこう違う、二面性のある曲だなと思います。「ときめき草」(2019年3月発売の1stシングル「キュン」カップリング曲)に近しいものを感じました。
松田 メロディ自体が大好きで、歌詞が入ってない時点から「この曲好きだな」と思っていたんですけど、歌詞が届いたらまた一段と好きになりました。でも、日向坂46の表題曲でこんなにネガティブなことを歌って大丈夫かなという不安もあって。この曲を表現するには、感情をすごく大事にしなくちゃいけない。すごく難しいけど、メンバーみんなの中で正解を見つけていって、歌い続けていくうちに私たちなりの「僕なんか」ができあがっていくと思います。それを楽しみながら、あまり「僕なんか、僕なんか……」ってメンバー自身がなりすぎないように(笑)。そういうつらさを抱えている人に寄り添えるような歌にしていけたらいいなって。
実感と経験を積み重ねて曲が育っていく日向坂46のスタイル
──確かに、今までの日向坂46のシングル表題曲にはなかった重たさがありますよね。「ネガティブなことを歌って大丈夫かな」という不安は、“ハッピーオーラ”という言葉で表される、日向坂46のポジティブで明るい性質と相反する表現だから?
松田 そうですね。「ハッピー」とか「太陽のような力がある」とか、日向坂46はそういうふうに言っていただくことが多くて。自分たちでもそう意識していたところがあったから、「僕なんか」をどう歌うのかは、私たちにとって大きな課題ですし、まだ自分たちの中で正解は見えていないと思います。
──なるほど。自分たちが表現したいものを自分たちで作るソングライターではない皆さんにとっては、与えられた楽曲をどう理解して自分たちの中に取り入れてパフォーマンスするのか、そこが重要であるし、活動の根幹になっているわけですね。
富田 はい。前作の「ってか」もそうだったんですけど、音楽番組に出始めた最初の頃は「クールな曲だから、クールな表情で歌おう」と決めて、いつもよりもクールなパフォーマンスで、最後のサビだけは笑顔で歌っていたんです。でも番組出演を重ねていくにつれ「こういうクールな曲を余裕の笑みでやるのが日向坂46らしいんじゃないか」という考え方に変わってきて。結局全編笑顔で歌う、みたいな進化をしました。
──やっていくうちにブラッシュアップされていく。
富田 そうなんです。テレビ番組やライブで歌っていくうちに、どんどん自分たちなりの正解が見えてきて。
──それは面白いですね。リリースされたあとから、曲が育っていくわけですね。「僕なんか」も東京ドームでの初披露があり、そこからシングルリリース後の歌番組出演やライブを経て、どんどん育っていく?
松田 はい。実感と経験を積み重ねて、これから育っていくと思います。
ずっと忘れない「陽だまり寮」の1日
──先ほど富田さんが、今回のシングルは全部の曲で渡邉さんのことを意識して歌ったとおっしゃっていましたが、今作には表題曲のほかに、各期ごとに歌う楽曲や、小坂さん、金村美玖さん、濱岸ひよりさんのユニット曲、さらに「飛行機雲ができる理由」「知らないうちに愛されていた」とグループ全員で歌う楽曲が2曲用意されています。
富田 「知らないうちに愛されていた」は特に美穂のことを考えてしまって、レコーディングをしながら泣きそうになりましたね。
──「知らないうちに愛されていた」は「Woh oh oh」の合唱に、おひさまとのシンガロングをどうしても想像してしまいますけど……。
富田 そうですよねー! 本当に。この曲をおひさまの皆さんの声で聴ける日が来たら、絶対に感動して泣いちゃうと思います。
松田 うん、間違いないね。
富田 応援歌のような、みんなの気持ちがひとつになる曲だと思います。
──「飛行機雲ができる理由」は表題曲でもおかしくないキャッチーさと切なさがありますね。
松田 この曲はミュージックビデオを撮ってより好きになりました。
──MVはCGで世界観を作り込んだ「僕なんか」とは対照的に、皆さんの普段の姿が垣間見えるナチュラルな雰囲気で。
松田 「僕なんか」は美穂の卒業に直接的に触れるようなシーンはないんですけど、「飛行機雲ができる理由」は私たちが住んでいる設定の寮の名前が美穂の写真集から取った「陽だまり寮」になっていたり、美穂が踊り出したのにつられてみんなが踊るシーンがあったり。撮影が本当に楽しくて、聴くたびにあの日のことを思い出すし、きっとこの先披露するたびに美穂のことを思い出すんだろうなって思います。
富田 作曲の小網準さんは三期生の「Right?」(2021年5月発売の5thシングル「君しか勝たん」カップリング曲)を作ってくださった方なんですけど、わざとそうしているのか、イントロの出だしがほぼ同じなんですよ。イントロクイズやったらめちゃくちゃ楽しそうだなって。
松田 確かに! 気付いてなかった。
富田 二期生は待ち時間によく日向坂46の曲でイントロクイズをよくやるんですけど、みんなめっちゃ得意ですぐわかるんですよ。でもこの2曲は相当ハイレベルだと思います(笑)。
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常に挑戦を求められる“次女”二期生