2022年3月、日向坂46は長年目標として掲げていた“約束の彼の地”、東京・東京ドームでの単独公演を実現させた。デビュー3周年記念ライブ「3周年記念 MEMORIAL LIVE~3回目のひな誕祭~」として2日間にわたって行われたその公演では、療養のためしばらく活動を休止していた小坂菜緒が復帰。その小坂をセンターに据えた新曲「僕なんか」が初披露された。
通算7枚目のシングルとして6月1日にリリースされる「僕なんか」は、グループ卒業を発表した二期生・渡邉美穂が在籍する現体制最後の作品。現在新メンバーオーディションを開催中の日向坂46にとっては大きな節目の1枚となった。この特集では、渡邉の同期であり、バラエティ番組など個人の活動でも大活躍を見せている富田鈴花と松田好花の2人にインタビュー。フォークユニット・花ちゃんズとしても活動するなど何かとコンビになる機会の多い2人に話を聞いた。
取材・文 / 臼杵成晃撮影 / YURIE PEPE
“約束の彼の地”の景色
──ニューシングルの話題の前に、3月の東京ドーム公演の話を。長年グループの目標として掲げていた東京ドーム公演がついに実現したわけですが、実際に立ってみた“約束の彼の地”の風景はいかがでしたか?(参照:日向坂46、ついに“約束の彼の地”に立つ!東京ドーム「ひな誕祭」は新たな出発の場所に)
富田鈴花 私はお客さんの立場でドームの景色を見たことが何度かあったんですけど……まったく違う景色に見えましたね。お客さんとして行ったときはファン目線でアーティストだけを見ているけど、ステージに立つ立場になると会場全体を見渡して楽しめるので。
──ぐるりと何万人もの人に囲まれるという体験はそうそうできないですからね。
富田 そうなんですよ! すごく大きな別の生き物、みたいな。
松田好花 私は「ひな誕祭」が初めての東京ドームだったので、客席の後ろのほうがどういう景色なのかはパフォーマンスする前に確かめたくて、リハーサルのときに客席に行かせてもらったんです。「こんな遠くからも観てもらうんだ」と思うと……パフォーマンスも普段以上に大きくするように意識しなきゃとか、遠くからでも気付いてもらうにはどうしたらいいんだろう?とかすごく考えて、より真剣にドーム公演に取り組めました。いろんなことを考えて本番に挑んだんですけど、いざステージに立ってみたら、ただただうれしくて、楽しくて。記憶にないくらいずっとはしゃいでましたね(笑)。
──緊張よりも喜びが勝っていた?
松田 勝ってましたね。ステージに立つまではドキドキしていたけど、1曲目が始まって、お客さんの前に立った瞬間から、2日間最後までずっと楽しめました。
──2日間の中で特に記憶に残っていること、印象深かった場面は?
松田 「誰よりも高く跳べ!2020」ではメンバー全員が花道とか後ろのステージとか、いろんなところにバラけてパフォーマンスしたんですけど、私は花道の先の下手のステージに1人で立つ時間があったんです。その時間は、私がこの目の前のスタンドの人たち全員を1人で盛り上げるぞ!という熱量が自分の中から湧いてきて。「みんながそれぞれ自分の担当位置を盛り上げたら会場全体がドカンといくぞ」とメンバーみんなで話をしていたので、私はもう過去イチ、体がちぎれるくらい、どじょうすくいかってくらいに……。
富田 ふふふ。下からすくって。
松田 もう、こうやって(ジェスチャーを交えながら)。そしたらライブのあとにファンの方からたくさん反響をいただきました。「あのときはすごかった」って。ちゃんと熱量が伝えられたんだなとわかってうれしかったし……あの瞬間は、自分がこうバッとやるだけで大勢の方々がワアーッとアガる感じがあって。
──空間すべてを支配するかのような。
松田 はい。ドームならではの高くせり上がった客席だからこそ味わえた興奮なんだろうなって。あの光景はずっと忘れないと思います。
──富田さんはどうですか?
富田 1日目に歌った「最前列へ」という二期生の曲は、すごく思い入れの強い曲で。今回は同じ二期生のひよたん(濱岸ひより)が直前で急遽出られないことになって悔しい部分もあったんですけど、この曲では、小坂菜緒がひさびさにセンターに立ってくれたんです。
──東京ドーム公演は、約8カ月休養していた小坂さんの復帰の場にもなりましたね。
富田 菜緒を先頭にして、後方のステージからメインステージまで1列で歩いていく演出があったんですけど、堂々とした菜緒の背中をひさしぶりに真後ろで見て、胸が熱くなりました。
二期生の絆、花ちゃんズの絆
──日向坂46はグループ全体のチームワークのよさが魅力だと感じているのですが、その中でさらに、期ごとの団結力、絆の深さがありますよね。お二人は二期生ですけど、二期生ならではの特徴は何かあると思いますか?
富田 ありますね。二期生は一期生や三期生と比べて、1人ひとりが個人でがんばらなくてはという意識が強いような気がします。二期生という境遇もあると思うんですけど。
──先輩の一期生という前例があって、さらに三期生という後輩が入ってきたことで先輩として示しをつけなければいけない部分もあるという、次女の立場ですね。
富田 3人姉妹でいうと真ん中って難しい立場というか……私も3人兄妹なので、真ん中のお兄ちゃんのことを見ていて大変だなあと思う部分がたくさんあって。
松田 私は末っ子なのでその感覚はないんですけど、間に挟まれるのは大変だなと思うことはあるし、その中でも二期生はお互い切磋琢磨して高め合える関係だなと思います。負けず嫌いな子もけっこう多くて、それが刺激になっているところもあります。
──そんな二期生の中でも、お二人はフォークユニット・花ちゃんズとしての活動もあるし、今日の取材もそうですが、コンビで扱われる機会も多いですよね。何か共通項があるのでしょうか。
富田 私たちは本当にアイドルという以前に、社会に出ていく中でいろいろと考えてしまう面が多い2人と言いますか……いろんな物事について深く考えすぎてしまう2人。
松田 うーん、確かに(笑)。
富田 そういう部分で分かち合える話がけっこうありますね。細かいことをすごく気にしてしまうけど、それがグループにいい影響を与えているんじゃないかなと思うところもたくさんあります。
松田 あと渡邉美穂も合わせて3人で“ごりごりドーナッツ”として一緒になる機会が多いんですけど、3人は普段思っていることとか、お仕事に対する熱量とかが合致することが多くて。3人で話すことは多いですね。花ちゃんズではアコースティックで弾き語りの配信ライブをしたり(参照:日向坂46のユニットとBE:FIRSTが「MTV LIVE MATCH」に登場)、こうやって取材を受けたり、ラジオの代打を引き受けたり、2人だからこそやり遂げられたこともたくさんあります。仕事をするうえで大切な存在にだんだんなっていきましたね。
富田 何かあったときに好花に相談すると「そうだよね」と共感してくれることも多いけど、違うと思ったときは「そうかな?」とちゃんと言ってくれるんですよ。それが私はうれしくて。しっかり正直に受け止めてくれるから、「ここはこうじゃないかな」と思ったときは好花だから言いやすいし、ほかのメンバーに言ったら落ち込んじゃうかな、言えないかな……と思うことも好花にだったら相談できる。私が言ってばっかりで、好花がどう思ってるかわからないけど(笑)。グループで活動するうえでありがたい存在ですね。
──いい関係ですね。そんな話を聞くと悪い部分も聞きたくなりますけど、お互いに「ここは解せないな」「こういうところは直してほしいな」と思う部分はありますか?
松田 なんだろう……あっ、とにかくすぐ話題を変えるところ(笑)。
富田 それは本当に申し訳ない(笑)。
松田 本人も自覚はあるみたいなんですけど、私は富田鈴花の中に何人かが常にいると思っていて。話すタイミングでどの富田鈴花が出てくるかわからないんですよ。
──ザッピングで出てくる(笑)。
松田 そうなんです。3秒前と違う話を急にし始めたりとか。私はそれが面白くて、全然直してほしいとも嫌だとも思ってないんですけど、そこは本当に理解できない(笑)。
富田 私はなんだろうな。やっぱ細かいことを気にしすぎるところかな。いい意味で頑固といいますか。記憶力がめちゃくちゃいいので「ここ、こうだったよね?」って、こっちが忘れてることも怖いくらい覚えてるんですよ。
松田 そうだね(笑)。めっちゃ覚えてる。自分でも直したいと思ってるんですけどね……。
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同期・渡邉美穂の卒業と節目のシングル「僕なんか」