“EDでドMな患者”で“EDM”

──今回のトラックは打ち込み主体。EDMから純正ヒップホップっぽいものまでバラエティには富みつつも、どれもエレクトリックなサウンドになっています。なぜ“地獄”と“電子音楽”をマッチングさせてみようと？

Dr.奴隷　「地獄病棟24時 feat.ナマコプリ」以外については、正直何も考えてないですね（笑）。僕がその都度その都度面白いなと思う音を作って渡してるだけで。

──じゃあ逆に「地獄病棟24時」のサウンドデザインについては、何か特別な打ち合わせがあった？

Dr.奴隷　ナマコプリパートのリリックは、しぶや花魁っていうDJバーのカワムラユキさんが書いてるんですけど、カワムラさんと話し合ってるとき、まず「ナマコプリはナースのコスプレをしたユニットだから『地獄病棟』をテーマにした曲にしよう」っていうアイデアが出てきて。その流れで歌詞のイメージも話し合ったんですけど「患者さんがEDでドM」っていう設定が生まれ……。だから“EDM”と（笑）。

──そのナマコプリとサオリリスさんってどういう経緯で客演することに？

Dr.奴隷　どっちも僕がもともと知り合いだったからですね。全曲、男の声だけで「地獄、地獄」言ってたらホントに救いようのないアルバムになるというか（笑）。ちょっと華がないとキツいかなっていう話になり……。

HELなおじさん　あとオレらだけで「地獄」とか言ってると、ガチでそういうことを考えているチームだと思われかねないから。女の子を入れることで「そういうチームとは違いますよ」っていうことを明らかにしておきたかったんです。

──で、ナマコプリのお2人といい、サオリリスさんといい、ラップうまいですよね。

HELなおじさん　特にサオリリスはビックリしました。

──基本的には歌わない、DJとして活動している方だけに。

Dr.奴隷　歌ってるCDを1枚出してるんだけど、ラップは初めてらしいですからね。なのにサオリリスといいナマコプリといい、こっちの意図通り、曲に華を添えてくれて。ホントに助かりました。

リリックを忘れてもリズムを見失ってもやりきる

──ところがもう1つの客演曲、「ライスとチューニング」では、ベルハーのラップ担当、朝倉みずほさんが度肝を抜くようなフロウを見せています（笑）。渋谷CLUB QUATTROでのベルハーのライブでこの曲を披露したとき、HELなおじさんは朝倉さんに「25年ラップやってるけど、完敗だ」と言ってましたよね（参照：ベルハー、2度目のワンマンでHELクライムと地獄ラップ対決）。

HELなおじさん　基本はまったくできてないんですけど（笑）、みずほちゃんの場合、そういう技術的な問題じゃないんですよね。QUATTROのときもリリックは忘れるし、リズムも見失ってたんだけど、でも大丈夫。最後までやりきれる。あの肝の据わり方。

──確かに完全に沈黙したり、ハミングでごまかしたりせずに、フリースタイルとも違う“何か”を歌いきってましたよね（笑）。

HELなおじさん　最後「もう誰か助けてー！」って歌っちゃってましたからね。あれはスゲーなって思いました。

Dr.奴隷　しかも今回のアルバムに入ってる「ライスとチューニング feat.BELLRING少女ハート」は去年のリミックスコンテストに応募したバージョンが基にはなってるんですけど、ラップはレコーディングし直していて……。

──「HELちゃん さっきより盛り上がってくれたら みずほもうれしいな」ってフロウしてますもんね。

Dr.奴隷　そのレコーディングのときに初めて会ったんですけど、すごかったですよ。メインのラップもそうだし、それ以外にガヤ、「Yeah!」とか「Yo!」とかを入れてもらったんですけど、そっちもまた別の意味ですごかった。これまでそういうコーラスってやったことないから、どうやっていいかわからないって感じで、何回やってもうまくいかなくて。そうしたらベルハーのプロデューサーの田中さんがブースに入って、なんかケータイの画面を見せてたんですよ。

HELなおじさん　そしたら、なぜかできるようになって（笑）。

Dr.奴隷　ホントに「なぜか」でしたよね（笑）。いろんなバリエーションのガヤがバンバン出てくるようになったんですよ。「パンパカパーン！」とか。あのとき田中さん、何を見せてたんでしょうね？

HELなおじさん　わっかんない（笑）。

──先ほど「意外と意図的に活動してる」って言ってたのに、なぜベルハーの謎を放置しました？（笑）

HELなおじさん　だってわっかんねえんスもん（笑）。田中さんのOKを出すタイミングってホントにわかんないんですよ。だから先方がOKっていうのであれば、もうOK。そこはアーティストさん尊重ということで（笑）。