ナタリー PowerPush - HELクライム

HELなおじさん(BIKKE)×Dr.奴隷(TAICHI MASTER)対談

HELクライムが1stアルバム「地獄」をリリースした。

HELクライムは“HELなおじさん”ことBIKKE(TOKYO No.1 SOUL SET)と、“Dr.奴隷”ことTAICHI MASTERがプロデューサーを務めるヒップホップユニット。2人のほか映画「SR サイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者」に出演の俳優・奥野瑛太、板橋駿谷、「SR」シリーズでラップ監修を務めた上鈴木伯周と上鈴木崇浩(ともにP.O.P)が名を連ね、それぞれ黙示☆ROCK、HELベロス、HEL HEL COOL J、HELニアというステージネームで活動を繰り広げている。

今作「地獄」はその名の通り“地獄”をコンセプトに制作された1枚。「地獄病棟24時」「墓場ディスコ」「三途の川渡り隊」などいかにもなタイトルで、いかにも地獄をイメージさせるフレーズばかりをラップするパーティチューンが居並んでいるだけでなく、CD盤のトラック間にはなぜかメンバーによるコントまでもインサートされている。しかも、これら楽曲群にはBELLRING少女ハート、サオリリス、ナマコプリら客演陣と、TOMOTH(アルファ)と高野政所というリミキサー陣までもが参加している。

メンバー構成から楽曲のコンセプト、ゲストの顔ぶれに至るまで、謎が謎を呼ぶHELクライム。ナタリーではその正体と、怪作「地獄」の魅力についてHELなおじさんとDr.奴隷に大いに語ってもらった。

また今回は特集後半で黙示☆ROCK、HELベロス、HEL HEL COOL J、HELニアのメールインタビューも展開。それぞれのHELクライム観、“地獄”観について聞いている。

取材・文 / 成松哲 インタビュー撮影 / 佐藤類

板橋が「いいっスね!」って言うから……。

──今回HELクライム名義のアルバム「地獄」を出すと聞いて、まず気になったのが、なぜお2人がこのユニットを始めたのかってことなんです。もともと映画「SR サイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者」(SR3)の入江悠監督公認ユニットとして2012年に活動を開始したんですよね。

左からDr.奴隷(TAICHI MASTER)、HELなおじさん(BIKKE)。

HELなおじさん ただ公認っていうのも、ねえ。「『SR3』の出演者もいることだし、そういうことにしておいたら面白いかなあ」ってことで監督に「公認って公言してもいいですか」って電話したら「どうぞ」って言われただけのことですし。

──じゃあ結成の経緯は?

HELなおじさん 「SR3」の中に極悪鳥っていうヒップホップグループが出てくるんですけど、そのメンバー役だった板橋(駿谷。HELベロス)とオレが知り合いで。「SR3」を観たあと、酒を飲みながらなんとなく「オレもああいうグループやりたいなあ」と思って板橋に電話したのがきっかけだから、オレとしてはそんなに大きな話にするつもりはなくて……。なのに板橋が「いいっスね!」「じゃあ奧野(瑛太。黙示☆ROCK)と『SR』のラップ監修をやった2人(上鈴木伯周(HEL HEL COOL J)、上鈴木崇浩(HELニア))も誘いますよ!」って言うから(笑)。それで「しょうがない」ってことで後輩にロゴのデザインを頼んだら、今度はその後輩が「お金の話をせずに曲を作ってくれる気のいいトラックメーカーがいますよ」って言い出して……。

左からHELなおじさん(BIKKE)、Dr.奴隷(TAICHI MASTER)。

──それがDr.奴隷さんだった、と(笑)。

Dr.奴隷 まさに“奴隷”として売られてきました(笑)。でもオレのところに電話をくれたとき、BIKKEさん、かなり熱く語ってましたよね。未来の展望というか、今やってるようなことについて。

HELなおじさん 確かに結果はまったく伴ってないけど、形はけっこう具現化できてる気がする。

審査委員長、自らコンテストに応募する

──当初からユニット名はダジャレで、「地獄」をモチーフに楽曲を作るというコンセプトはあった、と。

HELなおじさん いや、名前ありきで、ほかは全部後付けですね。最初に「HELクライム」っていう名前が決まって「“ヘル”だから地獄をテーマにしよう」ってことになって、1、2曲作ってみて。で、いろんなレーベルに「興味ありますか?」って声をかけてみたんだけど「それ売れんの?」って言われ(笑)。そんなもん「知らねえっスよ!」としか言いようがないじゃないですか。だからその場では「いやあ、そう言われると……」って答えて「じゃあ一旦HELクライムはいいか」っていうことになり……。

Dr.奴隷 だから何もやってない時期がけっこうありましたよね。

──でも散発的ながら活動は止めなかったわけですよね。2013年秋には今作にも入っている、BELLRING少女ハート「ライスとチューニング」のリミックスバージョンを作っている。しかもこのトラックでベルハーのリミックスコンテストに応募しています。

左からHELなおじさん(BIKKE)、Dr.奴隷(TAICHI MASTER)。

HELなおじさん しかもあのコンテストってオレが……。

──BIKKEさん名義で審査委員長をなさってましたよね(笑)。そもそもなんで応募を?

HELなおじさん いや、単純にオモロいかなあって(笑)。深い意図みたいなものはなんにもないっスね。もともとベルハーのことを知っていて、「こういうことやるんだ」っていう話があったからといえば、それだけ。あと元曲が好きだったっていうのはあるんですけど。

Dr.奴隷 だから「BIKKEさんのいるHELクライムのリミックスです」っていう言い方はせずに、あくまで僕名義。BIKKEさんが参加していることは伏せて「TAICHI MASTER featuring HELクライム」名義で応募してますし。

ニューアルバム「地獄」 / 2014年7月2日発売 / 2160円 / アーロンフィールド / AFCA-047
ニューアルバム「地獄」
収録曲
  1. HELクライムのテーマ
  2. 地獄病棟24時 feat. ナマコプリ
  3. HELParty
  4. ライスとチューニング feat. BELLRING少女ハート(懺悔MIX)
  5. 墓場ディスコ
  6. マリア
  7. 三途の川渡り隊 feat. サオリリス
  8. 666
  9. 地獄病棟24時 feat. ナマコプリ(DJ JET BARON aka 高野政所 FUNKOT REMIX)
  10. HELクライムのテーマ(TOMOTH DELI HEL REMIX)
HELクライム(ヘルクライム)

HELクライム

HELなおじさん(BIKKE / TOKYO No.1 SOUL SET)、Dr.奴隷(TAICHI MASTER)、黙示☆ROCK(奥野瑛太)、HELベロス(板橋駿谷)、HEL HEL COOL J(上鈴木伯周 / P.O.P)、HELニア(上鈴木崇浩 / P.O.P)からなるヒップホップユニット。2012年、HELなおじさんを中心にメンバーが集結。黙示☆ROCKとHELベロスが出演し、HEL HEL COOL J、HELニアが音楽監修を務めた映画「SR サイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者」の監督公認ユニットとしてそのキャリアをスタートさせる。以来散発的ながら“地獄”をコンセプトにライブ活動やトラック制作、Ustream番組制作などを展開し、2013年にはアイドルグループ、BELLRING少女ハートの楽曲「ライスとチューニング」のリミックスコンテストに応募。最優秀賞を獲得する。そして2014年7月、1stアルバム「地獄」をリリースした。