ナタリー PowerPush - HELクライム
HELなおじさん(BIKKE)×Dr.奴隷(TAICHI MASTER)対談
コントでまで「地獄、地獄」って言う必要はねえ
──そしてCD盤の「地獄」には配信にはない限定トラックが入っています。なんでコントを入れようと?
Dr.奴隷 せっかくメンバーに役者がいるんで「スネークマンショー」じゃないですけど、コントが入ってたら面白いかなって。あとは配信との差別化。CDではコントも聴けますよって。
HELなおじさん “コントも”というか、“コントは”もっと入れたかったんですけどね。
Dr.奴隷 なんなら1曲終わるたびに入れたかったですよね。
HELなおじさん ただなんせ集まりの悪いグループなんで。みんなが集まれる日を待ってコントを録ってたらアルバム出なくなる(笑)。
──そのコントなんですけど、「ライスとチューニング」のあとに入っているものは山手線の駅名を英会話教室のようにコール&レスポンスするというもの。シークレットトラックは、HELなおじさんと黙示☆ROCKさんとHELベロスさんがただただボヤくというもの。どちらも地獄となんにも関係がない気がするんですけど……
Dr.奴隷 最初はもっと地獄っぽいコントも考えてたんですけど、途中で「地獄っぽいことは曲でさんざん語っちゃったな」っていうことに気付いちゃって(笑)。コントでまで「地獄、地獄」って言う必要はねえな、って。
HELなおじさん まあ「意外と意図的に作ってる」とか言いながら、そんなに厳しい縛りでやってるグループじゃないってことなんですよね。
SOUL SETとは別なんですよ……たぶん
──実はそのHELクライムの縛りのなさの象徴にHELなおじさんのリリックがあると思ってるんです。1曲目の「HELクライムのテーマ」のラップをキックしてるのってHELなおじさんですよね?
HELなおじさん そうですね。
──で、そのフレーズは「あの小説を捨てて Go to Hell!」。TOKYO No.1 SOUL SETのパンチラインである「あの小説」(「MORE BIG PARTY」)をネタにしています。
HELなおじさん あっ、あのフレーズを考えたのは伯周くん(HEL HEL COOL J)ですね。きっと伯周くん的には「HELクライムはSOUL SETとは別なんですよ」っていうつもりなんでしょうね、たぶん。
──「たぶん」(笑)。
HELなおじさん でもホントに「たぶん」って感じなんですよ。確かに自分でもうっすら感じてますよ。「BIKKEってこう見られてるんだろうな」っていうのは。「こうあってほしいんだろうな」とか。SOUL SETのレコーディング中も、HELクライムほどじゃないまでも、これまでのSOUL SET的ではないリリックを書いて録音したことはあるんですけど、やっぱりあとからボツになるんですよ。「SOUL SETっぽくないよね」って直接話をするわけではないんだけど、SOUL SETらしさみたいなものはメンバー内にあるわけだから。でも僕個人はどんどん変わっていきたいから、常にそれに乗っかる気もあんまりないので。あれはあれ、これはこれ。だからSOUL SETがありつつ、HELクライムみたいなこともできている今の状態は楽しいんですよね。
Dr.奴隷 でも僕も以前はBIKKEさんとは飲み屋で会うくらい。そこまで踏み込んだ付き合いがなかったから、HELクライムを始めたときはけっこうビックリしました。やっぱり“SOUL SETのBIKKEさん”っていうイメージがあったから「この人、こんなに自由なんだ!」って(笑)。
“DEBIKKE”であり、“HELなおじさん”でもある
──Dr.奴隷さんがTAICHI MASTERのパブリックイメージに縛られることは? KICK THE CAN CREWを世に送り出し、嵐の楽曲を制作した人だと見られがちだとも思うんですけど。
Dr.奴隷 でもTAICHI MASTERはほかのアーティストのプロデューサーで、Dr.奴隷はHELクライムのメンバーですから。そもそものスタンスが違うから、TAICHI MASTERの自分の姿とHELクライムでの自分の姿のギャップに悩むことはないですね。普段は相手ありき。プロデュースするアーティストさんの意向を汲みつつ曲を作ることになるんだけど、HELクライムには“地獄”っていう縛りしかない。あとは自由なんで。
──「地獄」をコンセプトにバッチリメイクまでするグループが、2人を自由にしている状況っていい意味でネジれていて面白いですよね。
Dr.奴隷 よく「ハロウィンでコスプレすると解放される」とかって言うじゃないですか。あれですよ、まさに(笑)。
HELなおじさん うん、まさにそのくらいの感覚。だってオレ、HELクライムでのステージネーム、途中で変えてますからね。最初、デビルとBIKKEで「DEBIKKE」って名乗ってたし「666」でもそのまんま「オレはDEBIKKE from Hell」ってラップしてるのに、今は当たり前のように“HELなおじさん”を名乗っちゃってますから。それで全然OKのグループなんです。
収録曲
- HELクライムのテーマ
- 地獄病棟24時 feat. ナマコプリ
- HELParty
- ライスとチューニング feat. BELLRING少女ハート(懺悔MIX)
- 墓場ディスコ
- マリア
- 三途の川渡り隊 feat. サオリリス
- 666
- 地獄病棟24時 feat. ナマコプリ(DJ JET BARON aka 高野政所 FUNKOT REMIX)
- HELクライムのテーマ(TOMOTH DELI HEL REMIX)
HELクライム(ヘルクライム)
HELなおじさん(BIKKE / TOKYO No.1 SOUL SET)、Dr.奴隷(TAICHI MASTER)、黙示☆ROCK(奥野瑛太)、HELベロス(板橋駿谷)、HEL HEL COOL J(上鈴木伯周 / P.O.P)、HELニア(上鈴木崇浩 / P.O.P)からなるヒップホップユニット。2012年、HELなおじさんを中心にメンバーが集結。黙示☆ROCKとHELベロスが出演し、HEL HEL COOL J、HELニアが音楽監修を務めた映画「SR サイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者」の監督公認ユニットとしてそのキャリアをスタートさせる。以来散発的ながら“地獄”をコンセプトにライブ活動やトラック制作、Ustream番組制作などを展開し、2013年にはアイドルグループ、BELLRING少女ハートの楽曲「ライスとチューニング」のリミックスコンテストに応募。最優秀賞を獲得する。そして2014年7月、1stアルバム「地獄」をリリースした。