坂本さんの声は天使みたいだなぁって思ってるんです
——そんな東京エスムジカの5枚目の新作アルバムは、盟友でもあった2人のボーカリストが卒業しての作品ということで、ゲスト・ボーカリストを世界各国から集められていましたね。この選択基準ってどういうものだったんですか?
ちょうどこのエスムジカの前後って、仕事でもプライベートでも海外に行く機会が多くて。そこで出会った人の中からコンセプトに合う人をケースバイケースでお願いしたって形ですね。
——そこで坂本美雨さんが登場するのが面白いなぁと思いました。
坂本さんの声は天使みたいだなぁって思ってるんです。それが東京エスムジカのコンセプトに合うなぁと前々から思っていたんですよ。それでこのタイミングでお願いしようかなと。
——レコーディングはいかがでした?
わりと少人数でやったんですけどもう自由な感じでじっくり和気あいあいと行ないました。
——そうなんですね。ちなみに東京エスムジカ新作「World's end wonderland」では、どの曲がイチオシなんですか?
1曲目の「World's end wonderland」です(即答)。
——印象深いイントロが強く耳に入ってくる名曲ですよね。この曲はどのようにして生まれたのですか? 一筋縄ではいかない、でも超ポップな楽曲ですよね。
どうやって作ったかって聞かれるといつも困るんですよね。いつも何曲も平行して作っていて、10曲くらいデータで持ってて、聴いては作って聴いては作ってってやってるんですね。なんでかっていうと、それは行き詰まりをなくすため。この曲は、1年くらいかけて作ってるんでどうやって作ったかもう覚えてないんです(笑)。でも、今聴くと奇跡だなって自分で思うんですよ(笑)。
——どうやったらこんなふうになるんですか? ポップでありエスニックであり、不思議なバランスを持った曲ですよね。
ねぇ(笑)。そういう意味では2曲目の「Life is Art」もそうかな。これもちょっと聴いただけじゃわからないくらい、サンプリングされた声の要素とか入っているんです。だから本当の東京エスムジカには方程式が存在しないですね。自分でも面白いです。
——そうですね、スイバケは展開としてポップスのフォーマットにわかりやすく仕上がってますもんね。さらに面白いのが3曲目で、民謡とクラブ・サウンドを融合した「A Marriage Song inspired by 秋田長持唄」という疾走感あるダンス・チューンが入ってますが、これは僕ら日本人が聴いたらほんとに共感できる。民族・民謡音楽をスムーズに今の音として取り入れてい凄いなと思ったんですが。
これまでも民謡をポップスにするって流行ってたじゃないですか? でもそれって沖縄や奄美が多くてなんで本州がないんだろうって思ってて。でも、本州でやると演歌になりがちなんですよね。っていう話を民謡歌手として有名な、安曇野めぐ留さんとしたことがあって、じゃあ実験的にやってみようと。
——これもすごく完成度が高いですよね。
これはもう出たとこ勝負ですよね。民謡を……何を使うかっていうのは全然決めていなくて、とりあえず安曇野さんに歌ってくれって話して(笑)。その中から、組み合わせで作っていったんです。
——東京エスムジカとSweet Vacationでは、作り方が全く違うんですね。
違いますね。
現地の人とレディオヘッドの新譜の話をしたんです
——そもそも2人のボーカリストが卒業したタイミングで、早川さんとしては早川大地のソロ名義での活動でも良かったはずですよね?でも、東京エスムジカを名乗るってことは、早川さんの中で東京エスムジカはとても大事なコンセプトだってことですか?
そうですね。明確に言いますけど「World's end wonderland」は、ソロではなくて東京エスムジカだって思っていますね。
——そういう中でスイバケっていうのも、ストレートなJ-POPをやろうとしつつも、コンセプト的にはやっぱり早川さんらしさというか、ただのポップスとは違う、海外に目を向けてらっしゃるんですよね?
スイバケは音楽的には結構オーソドックスなものだと思うんですよ。その中で勝負をしてみたかったっていうか。ただ形態として新しいっていうのはあると思うんです。MySpaceの立ち上げからスタートしたっていうこととか。メンバーのMayが外国人っていうこともあって、最初からシームレスにアジアに出て行けるっていうのがあるんですね。ちなみに、東京エスムジカの時にも海外進出はしてるんです。ドイツやヨーロッパ、韓国、台湾でリリースして、結構面白がられたんですね。でもどの国でもオーバーグラウンドには出られないんですよ。そして、海外を廻ってみて面白いのが、ガムランやホーミーのレコーディングを終えて、現地の人とどんなことを話すかって言ったらレディオヘッドの新譜の話をしたんです。だからどこの国でもオーバーグラウンドってそんなに変わらないじゃんって思ったんですね。
——その経験がスイバケに活きているわけですね。
そうですね。そのキーワードの1つに「クラブシーン」っていうのが頭に浮かんだんです。
——それはある意味全世界共通のフォーマットでもあると。
そうですね。
——では、スイバケの世界進出っていうのはどのようにお考えなんですか?
世界進出っていうよりアジア圏への進出は、普通なことだと始めから考えてるんです。すでにバンコクでリリースしてたり、この夏には台湾と韓国でもインディーズ時代のベスト選曲なアイテムをリリースします。アジア展開でいうと、たとえば東京とバンコクで年間半分ずつ活動しても良いわけですし。そう考えると、台湾でのライヴとかも気楽に考えられますよね(笑)。あと台湾ってJ-POPカルチャーが異常に発達してるんですよね。日本国内でチャート上位にさえ入れば黙ってても浸透していくというか。
——そうですね、最近特に、海外の方とJ-POPの話やマンガの話で意気投合できる時代になっちゃいましたもんね。
だとしたら日本人としてそれを利用しない手はないなって思うんです。