東京エスムジカはニティン・ソーニーの影響がすごくあります
——ちょうど、クラブ・ミュージックでエスニックな要素が取り入れられまくっていた90年代を経過されたんですね。
そうですね、1995年とか。あと、ニティン・ソーニーの曲がクラブヒットしていたりとか。で、僕はニティン・ソーニーは今でも好きで、出たアルバムは全部買ってます。クラブ・ミュージックなんですけど、もっとピアノとか女性ボーカルが強いものもあるんです。フィーチャリングでいろんな人が参加していたり。ある意味、東京エスムジカはこのニティン・ソーニーの影響がすごくありますね。
——そんなこんなで民族音楽にハマって、東京エスムジカっていうのはどんなふうにして結成されたんですか?
そこで、ちょっと前に戻るんですけど、このニティン・ソーニーや小泉文夫にハマった僕の大学時代って、イラン映画が流行った時期でもあったんです。よく観に行ってました。その頃って、今までなかなか観られなかった国の映画がバーッと出てきた時期だったんです。中国とかアイスランドとかの作品がユーロスペースとかBunkamuraで上映されるようになったんですよね。そのタイミングもあって、なんか多様な文化に興味を持つチャンスが多かった時期なんです。
——民族音楽への興味のベースは、徐々に蓄積されてきたんですね。そういえば東京エスムジカの結成は大学時代からはまたちょっと後になるんですよね?
そうですね。意外と遅いんですよ。大学院時代だったから25歳くらいかな。
——じゃあそこから東京エスムジカっていうのはどういうふうにして誕生したユニットなんですか?
まず東京エスムジカに関しては、強いコンセプトが最初からありました。それがいろんな人に聴いてもらえる機会が増えてきて、ちゃんと形にしたいなって想いが強くなったんですね。それでレコード会社とか、いろんな人にデモを送ったときに今の事務所の人に聴いてもらえて、「良いんじゃないの!」って形になって。じゃあ3人組でやってみようって話が進んでいったんです。
——ユニット名がコンセプトを表してると思うんですが、そもそもどんなコンセプトにしようと思ってたんですか?
エスニック・ミュージックの要素を取り入れたポップ・ミュージックってキーワードが最初からありました。ポップスのメロディやコード進行って普遍的なものだと思っていて、それに何を入れていくかによって変わっていくって思ってたんです。それが僕にとってはエスニック音楽だったっていう。
——それこそYMOはポップスにテクノを取り入れたんですもんね。
そう、そしてそこには民族音楽も感じられたのが面白かったんです。
聴きやすいものではないと自分が嫌だったりするんです
——そして、そんな東京エスムジカとSweet Vacationのアルバムが2作品とも、8月20日にリリースされます。それぞれ踊れる雰囲気のあるアイテムに仕上がっていますが、なぜ今ここで同時リリースを?
なんか、今はプライベートやパブリック的にも良いタイミングというか、環境的にも本当に恵まれていると思うんですね。ここで出さないでいつ出すって気持ちはありますね。1つのターニングポイントっていうか。そもそも、これまで東京エスムジカに関してはすごく自分の中で制約を大きく作ってたんです。エスニックな要素を必ず入れなくてはいけないとか、ポップスとはこういうものだとか。いわば大リーグ養成ギブスを付けてた感じがあったんです。今回、スイバケと2作品出すことによって、一気にそういうものを開放したって感覚はありますね。
——スイバケに関してはヴォーカルのMayさんのキュートなキャラクターも強いと思うんですけど、ポップ・ミュージックの方向に向いてますよね。復活した東京エスムジカはポップでもあるんですけど、ちょっとアンダーグラウンドな臭いもしつつ、方向としては近いところもあるんですけど、全く違う感覚もあって。早川さんの中では、それぞれどんなふうに区別しているんですか?
スイバケは、言っても2人組だし、Mayのキャラとか声を活かすのが前提にあるんですよね。あとポップフィールドの表舞台で勝負したいって気持ちも強いんです。たとえば、東京エスムジカのフォームで、もっとポップにっていうのは自分の中ですごいネガティヴに捉えていたんですけど、スイバケがあることによって今はすごいポジティヴに感じられるんです。むしろ、ポップを主導的にできるくらい精神的に成長しましたね。で、その分東京エスムジカは思いついたことを何でも実験できるし、難しいこともやれると。とはいえ、聴きやすいものではないと自分が嫌だったりはするんですけどね。
——早川さんの考える聴きやすさっていうのはどういうところなんですか?
単純に踊れるものであったり、美しい旋律であったり、音色がすごく映像が浮かぶものであったり。それを要求するために何かをするってことじゃない、音楽を楽しむためにその知識を吸収したりするものだと思うんですけどね。