自分の感性で作った音楽であれば、ジャマイカ人と同じステージに立てる

──HAN-KUNさんがこれまで活動してきた中で、最も葛藤したことはなんですか？

自分が聴いている音楽と、吐き出す音楽の差ですね。日本には世界に誇れるレゲエミュージシャンがいるし、なんなら世界で1番になった人たちもいる。俺は自分の好きな音楽が当たり前のように街で流れるように日本を変えたい。日本でいろんな葛藤を経たからこそ生まれる新しい音楽があると言うか。

──そう思うようになったきっかけはありますか？

毎年のようにジャマイカに行っていて。そこで感じたのは、俺が純度100パーセントの彼らのレゲエを真似してやってもジャマイカ人には敵わないということでした。彼らの体に染み付いたリズムを、そのまま表現することなんて俺にはできない。なぜならレゲエは彼らの生活や文化そのものだし、その歴史から生まれた音楽だから。それを思ったときに俺は自分の感性とアイデンティティと向き合って作った音楽であれば、それを武器に彼らと同じステージに立てると思ってたんです。以前、ジャマイカのスタジオで俺の作ったリディムを流しながらエンジニアと作業していたことがあったんです。そしたらジャマイカのDEEJAYがたまたまそこにやって来て「お、いいね。この音、俺にくれよ。これで歌いたい」ってエンジニアに言ったんですよ。きっとその人も日本人が作ったなんて思ってなかったんでしょうね。でも俺は、それを聞いて「あっ、やれるかも」って思った。俺の音楽性は間違ってないんだって。実はそれまでジャマイカで作業してても、遠慮しちゃってあまり自分の意見を言えなかったこともあるんです。でもそれ以降は自信がついて、どんどん言うようになりました。言いすぎると、たまにちょっとウザそうな顔されるんですけど（笑）。

俺が日本人であることは変わらない

──今回のDVDの付属CDには「One Song」と「New Era」という新曲2曲が収録されます。まず「One Song」はどんな思いで書いたんですか？

今回のツアーを本当に純粋に振り返って書いた曲ですね。歌詞についてはあえて難しい比喩を使わず、1回聴けばわかるストレートなものにしました。こういう曲って一歩間違うとすごく安っぽくなってしまうし、実際にそう感じる人もいるかもしれない。けど、そう思われてもいいやっていう覚悟でやりました。

──この「One Song」にしろ、「VOICE MAGICIAN V ～DEEP IMPACT～」の「MADE IN JAPAN」というテーマにしろ、誤解を恐れない姿勢はすごいなと思いました。

「MADE IN JAPAN」という部分に関して言うと、半年間ニューヨークに滞在した経験が大きかったです。ニューヨークって世界中からいろんな人が集まってるじゃないですか？ そこで出会った人たちはみんな自分が国をレペゼンしてる感じをバンバン出すんです。そこにすごく刺激を受けて。これは日本にいるときはよくわからなかった。それ以前にジャマイカで作業しているときも、よく現地の人たちに「なんでお前たちはもっと自分の国の歌を歌わないんだ」って言われたんです。そのときは全然ピンとこなかったんだけど、ニューヨークでの生活を経て、ジャマイカで言われたことの意味がだんだんわかってきたんです。別に右翼思想とかそういうことではなくて、ありのままを受け入れるっていう。俺が日本人であることは変わらないわけで、そこを否定してもしょうがないかなって。

──ありのままでいることって、すごく難しいですよね。

実際、俺も言葉や態度で着飾っちゃうほうかもしれなくて。だからその難しさは本当によくわかる。けど、ありのままというのは、実は自分の内側だけの問題なんですよね。相手がどう思ってるかなんて、人間は絶対にわからない。でもそこをこっちが勝手に推測しちゃって着飾っちゃう。ぶっきらぼうとか身勝手という意味ではなくて、相手を気にしないでものを伝えることができるようになれたらいいなっていつも思ってます。

──そこで大事になってくるのが自信だと思います。

いやー、俺、自分に自信ないっすよ（笑）。すぐネガティブになっちゃう。考える時間があるとすぐそっち側に行っちゃうから、いつも動き続けてるんです。