今年ソロデビューから10周年を迎えるHAN-KUNが、4月11日にライブDVD「HAN-KUN TOUR 2017 LEGEND ~DEEP IMPACT~」をリリースした。この作品には彼が昨年開催した同タイトルの全国ツアーから、東京・チームスマイル・豊洲PITで行われたツアーファイナル公演の模様が収録されている。
音楽ナタリーでは本作のリリースを記念して、HAN-KUNへのインタビューを行った。ライブDVDや、この付属CDに収録される新曲「One Song」「New Era」についての話はもちろん、節目の年を迎えるHAN-KUNにこれまでの活動を振り返ってもらった。彼の誠実な人柄や音楽に対する姿勢を感じ取ってほしい。
取材・文 / 宮崎敬太 ライブ撮影 / Yusuke Oura(UNITEGRAPHICA)
限りなく裸に近い状態の自分がどこまでお客さんとつながれるのか
──ライブDVD「HAN-KUN TOUR 2017 LEGEND ~DEEP IMPACT~」を観た感想を教えてください。
汗がターバンに染み込んでいく過程が克明に記録されていましたね(笑)。いつもライブの終盤はターバンの先っちょのほうまでビチョビチョになっちゃうんですよ。
──このライブDVDに収録された昨年のツアー「HAN-KUN TOUR 2017『LEGEND ~DEEP IMPACT~』」はどんなツアーでしたか?
これ以上ないほど、シンプルな内容だったと思います。歌、音、お客さん。それだけでいいって言うか。と言うのも、このツアーの前にリリースしたアルバム「VOICE MAGICIAN V ~DEEP IMPACT~」では、俺が初めてレゲエを聴いたときの衝撃を表現したかったんです。当時の感覚を紐解いていって、それをいろんな形で感じてもらえるような内容に仕上げました。だからあえてギミックを排除したシンプルな内容になっている。あと、このアルバムはライブで歌うことを前提に制作してて。だからこのツアーでは、セットリストはもちろん、照明や演出もシンプルにして、歌と音をお客さんがダイレクトに楽しめるものにしたかったんです。お客さんとの距離を近くしたかったと言うか。
──なぜ、アルバムと遜色ない歌をライブで聴かせようと思ったんですか?
メッセージを携えて人の心にお邪魔する人間として、嘘をつきたくなかったんです。最近は次々と新しい機材が出てきてるので、すごくクオリティ高くレコーディングできるんです。例えば、パートごとにボーカル録りをしたりとか。でもそういうことをしていると、ライブで1曲通して歌えない曲ができあがったりするんです。実際に通して歌ってみると、息継ぎの位置が見つけられなかったりとか。それって僕の中では嘘になっちゃうんです。その手法を否定しているわけじゃなくて、今回はライブでそのまま歌える曲ということを前提にしたかった。だから曲ができたら、クオリティ云々は別としてまず通して歌えるかを確かめました。レコーディングで1曲通して歌えれば、それをライブでそのまま再現する自信はあるので。
──いろんなものを削ぎ落とした作品やツアーをやろうと思ったのはなぜですか?
今年10周年を迎えるにあたって、限りなく裸に近い状態の自分がどこまでお客さんと繋がれるのかということを確認したかったんです。自分にはどれだけのポテンシャルがあるのか、という。
日本だからこそ生まれ得る音楽がある
──セットリストはどのように組んだのですか?
実はツアーの最初のほうは、このDVDに収録されている内容とは違うセットリストだったんです。ライブの定番曲はあえて外して、「VOICE MAGICIAN V ~DEEP IMPACT~」の曲を多くしてました。だけどライブの定番曲には自分やバンドの体に染み付いたグルーヴがあって、それをやらないと自分たちがいまいち乗り切れない部分があって。俺たちが楽しめないと、お客さんにも楽しさは伝わらないんじゃないかと思って、ツアーを回りながら徐々にアップデートしていきました。あとアンコールのメドレーに関しては、その日その日で変えたりしてましたね。
──ツアーに何回か行くお客さんにとって、それはうれしいでしょうね。
俺自身がライブに行くのが好きなんです。ジャマイカに滞在していたときも、好きなアーティストのライブをできるだけたくさん観たくて、1カ月に4回くらい通ったんですね。そしたら4回ともまったく同じセットリストで、ちょっとだけ「あれっ……?」みたいな(笑)。やっぱりその日だけのサプライズがあるとうれしいかなと思って。あとツアーでまったく同じことを続けてると、バンドメンバーも徐々に飽きてきちゃうんですよ。それは絶対にお客さんに伝わっちゃう。だから本番で、リハとまったく違うことをいきなりバンドメンバーに振ったりしてましたね。でもメンバーも楽しんでくれてて、それがいいバイブスになったりする。本番で作っていくのがレゲエ文化の醍醐味だったりもするので。
──HAN-KUNさんはアーティストとしてのエゴよりも、ファンに楽しんでもらいたいという気持ちが強いように感じます。
昔はエゴの塊でした。散々調子に乗ったんで、今は「ごめんなさい」と言って回ってる時期なんです(笑)。もちろん、お客さんありきの俺らっていうのは昔からわかっていたけど、心の中に「なんで俺の音楽をわかってくれないんだ!?」という葛藤があったのも事実ですし。
──変わったのはなぜですか?
いろんな人と出会って、いろんなことを学んだからですね。自分のやりたいことだけをやって、「ファンなんていらねえよ」ってスタンスの人もいるかもしれない。けど、そういう人もライブで入場料を取るし、CDを売るわけです。それって矛盾してるなって思ったんです。本当に音楽だけを追求するなら、音源は無料配布して、ライブもフリーでやればいい。俺らにとって音楽はビジネスという側面もある。それにやっぱり聴いてくれる人がいるってことはありがたい。もしも自分の作った音楽がわかってもらえないなら、わかってもらうために努力しなくちゃいけない。そこを聴いている人のせいにしてはいけないと思うようになりましたね。
- HAN-KUN
「HAN-KUN TOUR 2017 LEGEND ~DEEP IMPACT~」 - 2018年4月11日発売 / TOY'S FACTORY
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[DVD+CD]
6912円 / TFBQ-18202
- DISC 1(DVD)
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- INTRO~TEPPEN!!
- HOTTER THAN HOT
- FIRE BURNING
- KEEP IT BLAZING
- REGGAE MAN
- PULL UP
- NEXT TO YOU
- WANNA BE FREE
- RUN THE WORLD
- ETERNAL FIRE
- ハンパねぇ!!
- 無問題
- I&I
- MELODY OF LOVE
- With me
- #IROIRO
- RESPECT
- [MedleyI]
Revolution~TONIGHT~RIDE ON NOW~SUN DANCER~Island Vibes~FOREVER...~JOYFUL DAYS~JAMAICA~One Big Tree~Roots&Future~TOUCH THE SKY - [MedleyII]
Under The Moonlight~Love It...~サンクチュアリ~友達 - I Say...
- 希望の空
- DEEP IMPACT
- DISC 2(CD)
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- One Song
- New Era
- DEEP IMPACT LIVE MIX mixed by DELTA FORCE
- HAN-KUN(ハンクン)
- 2003年に湘南乃風のメンバーとしてアルバム「湘南乃風 ~Real Riders~」でデビュー。2008年7月に初のソロアルバム「VOICE MAGICIAN」をリリース。以降、「VOICE MAGICIAN」シリーズとして5枚のソロアルバムを発表した。最新アルバムは2017年8月リリースの「VOICE MAGICIAN V ~DEEP IMPACT~」。グループとしての活動、およびソロ活動のほかSPICY CHOCOLATE、INFINITY16、山嵐などの作品にもフィーチャリングゲストとして多数参加している。2018年4月、前年に開催した全国ツアーからファイナル公演の模様を収録したライブDVD「HAN-KUN TOUR 2017 LEGEND ~DEEP IMPACT~」をリリースした。