ハク。インタビュー|メジャーデビューから半年、変わり続ける“世界”に何を思うのか

昨年9月に「それしか言えない」でTOY'S FACTORYからメジャーデビューしたハク。が、最新作となる配信EP「世界」をリリースした。

ハク。は2019年に大阪で結成された、あい(G, Vo)、なずな(G)、カノ(B, Cho)、まゆ(Dr)からなる4ピースバンド。メジャー進出前に投稿したMONO NO AWARE「かむかもしかもにどもかも!」のカバー動画はアメリカを中心とした海外リスナーの間で人気を集め、ソウルや台北でのライブも成功に収めている。

音楽ナタリーでは台北で行われたフェス「浮現祭EMERGE FEST 2026」への出演を終えた直後のハク。にインタビュー。“世界”を見据えて活動する彼女たちがEPを通じて届けたいメッセージとは? メジャーデビューから半年が経ち、目まぐるしく変化する環境に身を置く4人に話を聞いた。

取材・文 / 天野史彬撮影 / はぎひさこ

日本語でも、上手に歌ってくれるんや!

──昨日、台北のフェス「浮現祭EMERGE FEST 2026」に出演されたんですよね(取材は3月上旬に実施)。海外でのライブの機会も増えていると思いますが、手応えはいかがですか?

あい(G, Vo) 海外でライブをやることに、最初はびっくりして気持ちが追いつかなかったんですけど、現地のお客さんが日本語の歌詞なのに一緒に歌ってくれたことで、徐々に感動に変わっていきました。言葉の意味はわからなくても、伝わるものがあるってすごいなって。意味がわかることだけがすべてじゃないんだなと思いました。

カノ(B, Cho) 海外でライブをすると、「待ち望んでたよ!」という雰囲気も感じるし、ライブの楽しみ方も情熱的で積極的な人たちが多いから、こっちも「一体感を大事にしたい」という気持ちが増していきますね。

ハク。が出演した「浮現祭EMERGE FEST 2026」の様子。

ハク。が出演した「浮現祭EMERGE FEST 2026」の様子。

なずな(G) 最初は「かむかもしかもにどもかも!」(MONO NO AWARE)のカバー動画がSNSで広がったから、主にDMやコメントを通して「海外にもお客さんがいるんだ」と感じていたんですけど、日本のライブに海外からのお客さんが来てくれたり、実際に私たちが現地に行ったりすることで実感がより強くなりました。自分の目で見ると一層、「こんなに私たちの音楽を聴いている人がいるんだ!」と感じますね。

まゆ(Dr) 私も、SNSを通して感じていたものを実際に目の当たりできたのがうれしかったです。あと、海外のお客さんはみんな歌がうまい(笑)。「日本語の歌詞でも、こんなに上手に一緒に歌ってくれるんや!」とびっくりします。

──国内外問わず、ハク。のライブは結成当初と現在とで、どのように変化していると感じていますか?

あい ライブ定番の曲もだんだんできているんです。例えば「回転してから考える」のサビでタオルを回すとか。そういうお客さんの盛り上がりたいポイントが、ちょっとずつ自分たちでもわかってきたような気はしますね。

──曲作りに、ライブの反応やお客さんからのリアクションは影響を与えますか?

あい 今まではそんなことなかったんですけど、最近は曲を作っていると、「ここ、一緒に歌えたらいいな」と思ったりします。考えてそう作ることはまだ少ないんですけど、たまたまできたものを見て「ここ一緒に歌えそうやな」とか、「ここで歌えるから、あとでもう1回持ってきたほうがいいな」とか、自然な流れでそうなることはありますね。

──「それしか言えない」のミュージックビデオで、あいさんがグワーッと紙に向かって言葉を書き殴っているじゃないですか。実際、あいさんが歌詞を書くときはあんな感じなんですか?

あい そこまで「ガリレオ」の湯川先生って感じではないですけど(笑)、床で書くことはありますね。「書くぞ!」となったらノートが真っ黒になるくらい書きます。

私は変わりたい

──このたびリリースされたEP「世界」には、昨年9月のメジャーデビュー以降にハク。が発表してきた楽曲が収められていますね(参照:ハク。メジャーデビュー記念インタビュー、大阪発4人組のルーツや楽曲制作のこだわり、今後のビジョンは)。個々の楽曲がどんな時期やタイミングで作られたのかは僕にはわからないけど、この4曲を聴いていると、激動の中にいるハク。の心象が確かに伝わってきます。メジャーデビューしてからの約半年は、皆さんにとってどんな期間でしたか?

まゆ 楽曲作りに対してのギアが上がったのは実感しています。制作するとき、まずはあいからドラムのアイデアをもらうんですけど、「もっとこういう叩き方をしたほうがいいんじゃない?」とか「こうしたほうが曲に合うんじゃない?」とか、前よりも熱を入れて考えるようになりましたね。スケジュールもだいぶ先まで決めてもらっている中で、出たいフェスに出れることが決まったり、曲のリリースも控えていたりするし、「やらな!」って。動きがスピーディやからこそ、その速度から落っこちないように、食らい付かなきゃいけない気持ちが強いです。

ハク。

ハク。

──そんな中で、まゆさんはどんなドラマーでありたいと今は思いますか?

まゆ 目指している人はいないけど、ハク。のドラマーとして必要な存在になりたい。「ハク。のドラマーはまゆしかいないです!」と思ってもらえるドラマーになりたいです。

なずな 私はこの半年間で、4人で話し合うことが増えたなと思っていて。例えばセットリストを決めるにしても、「この曲のつなぎ、変えてみない?」みたいな話し合いをすることが増えたし、「なんでもやってみようよ」という精神も強くなった気がする。意見交換が増えたのは、「よりいいものを作りたい」という気持ちが4人それぞれにあるからだと思うんですよね。

カノ 私は、メジャーデビューするときに「今後も変わらないハク。をお届けします」とお客さんたちに向けて言っていたし、TOY'S FACTORYのスタッフの方にも「このまま変わらずに続けていきたいです」という話をしていたんです。そのときは、変わらないハク。を届けることがいいことだと思っていたんですね。今もその気持ちは持ちつつですけど、どんどん変わりたい欲も出てきました。1つのことを続けることや、同じ思いを持ち続けるのもいいことだけど、意見が変わるのだって面白いことだし、変わることから先につながるアイデアが生まれる場合もあるんだなって、最近は思うんです。だからこそ、「変わった部分をどう届けるか?」というところで、考える時間も増えました。「変わらないほうがすんなりと受け取ってもらえるんだろうな」とは思いつつ、私は変わりたい。その気持ちを、どこで、どうやって表現していけばいいかと考えるようになりましたね。

あい 今みんなが言ってくれたことは、私も思っていました。私個人の話をすると、ハク。の曲にいろんな曲調があるように、私にもいろんな面の自分がいるんです。メンバーの中にいると一番しゃべるし、一番ボケる。だけど、ほかの人の前に行くと、それができなくなったりする。そういう自分にすごく悩んでいて。ライブのMCも考えていることをカッコよく言う、みたいなことがめちゃくちゃ苦手だけど、それもできるようになっていきたいと思う。「バンドの中にいる私ってどうあるべきなんだろう?」と、この半年間すごく考えました。

ハク。

ハク。

──あいさんが「いろんな自分がいる」と言ったとき、まゆさんが大きくうなずいているのが見えていたんですけど、そう思いますか?

まゆ 思いますね。「それしか言えない」を歌っているときのあいは、めっちゃカッコいいし。

あい (笑)。

まゆ でも、2人で一緒にいるときはふざけるのがメインだから(笑)。遠征のときは私とあいが同じ部屋なんですけど、いつも隣の部屋のカノとなずなに「うるさい!」って怒られるんです(笑)。

なずな 壁越しに声が聞こえるくらい、ホントすごいんですよ(笑)。

──(笑)。バンドのフロントマンとして、あいさんはどんな人が理想だと思いますか?

あい 理想は……自然体に見える人。ステージ上で自然に見える人はもしかしたらがんばって作っているものなのかもしれないし、作り続けていくうちに本当にそれが自然になったのかもしれないし。どちらにせよ、ステージに立つ自分が自然体に見えればハク。にとって究極のフロントマンだなと思うので。そこに至るまではがんばらなきゃいけないですね。

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ハクの歌の1人称は